当面は社会保障・税・災害対策の分野で適用が始まったマイナンバー。ではこれから、私たちはマイナンバーを具体的にどんな時に使うのでしょうか?想定される事例を挙げて説明します。
まずは社会保障・税・災害対策で利用
当面は社会保障・税・災害対策の分野でのみ利用されますが、将来的には私たちの生活に具体的に関わってきます。
社会保障分野での適用例
・雇用保険の資格取得や確認、給付
・ハローワークの事務
・医療保険の給付の請求
・福祉分野の給付、生活保護
税分野での適用例
・税務当局の内部事務
災害対策分野での適用例
・被災者台帳の作成事務
具体的な適用例
法令上認められている適用例を以下に挙げます。
育児分野での適用例
・妊婦への保健指導
・児童手当の支給
・児童扶養手当の支給
・特別児童手当の支給
・障害児入所給付費・高額障害児入所給付費・特定入所障害児書樹皮等給付費・障害時入所医療費の支給
児童手当には所得制限があり、対象世帯が所得制限の範囲に収まっているか否か、市区町村は確認する必要があります。前年から引き続いて同じ市区町村に住んでいる人については、市区町村はその世帯の所得情報を持っていますが、他の市区町村から移り住んだ人については、市区町村は所得情報を持っていません。
(中略)
児童手当にマイナンバー「の仕組み」が導入されれば、対象世帯は児童手当の現況届にマイ
ナンバーを記入するだけでよく、所得証明書を取り寄せる必要はなくなるものと考えられます。現況届を受け取った市区町村は、情報提供ネットワークシステムを通じて引っ越し前の市区町
村からその人の所得情報を取り寄せ、所得制限の対象となるか否かを判定することができるか
らです。
教育分野での適用例
・日本学生支援機構奨学金の申請
奨学金返済にマイナンバー活用 返済額が所得連動で変わり無理なく返せる「新型」 文科省が検討月々の返済額を年収に応じて減らしたり、増やしたりできる。文部科学省が、そんな新たな仕組みの奨学金の導入を検討している。
「所得連動返還型」と呼ばれ、来年1月に運用が始まるマイナンバー制度によって個人の収入が把握しやすくなるため実現の見通しが立った。
無理のない返済ペースが可能となるため、借り手の負担感が軽減され、低迷している回収率の向上にも寄与しそうだ。
マイナンバーで所得に応じた奨学金返還、現在の高2生から実施も国民一人ひとりに番号を割り振る「マイナンバー制度」がスタートした。
文部科学省はマイナンバーを利用して、日本学生支援機構の奨学金を返しやすくする「所得連動返還型」の導入を目指しており、有識者会議で本格的な検討を始めている。
(中略)
現行制度では通常、卒業してすぐ毎月の返還が始まります。
たとえば、自宅から私立大学に通う際に無利子奨学金を借りると、4年間貸与総額は259万2,000円。通常はこれを毎月1万4,400円、15年間で返還することになります。しかし、卒業後すぐに正社員になれない人もいる現状を踏まえ、年収300万円になるまでは返還を猶予する「所得連動返還型無利子奨学金制度」が導入されています。
ただ、年収が300万円を1円でも超えると返還が始まるため、低所得者の負担は依然大きいといえます。
税務分野での適用例
・所得税・固定資産税・相続税の徴収
・法人税の徴収
・自動車重量税や消費税の還付や徴収
・たばこ税に関する事務
災害対策分野での適用例
・被災者に対する租税減免の手続き
医療・福祉分野での適用例
・小児慢性特定疾病医療費の給付
・介護保険の認定・給付
・身体障害者手帳に関する事務
・障害福祉サービスの提供や、障害者支援施設への入所手続き
・生活保護の申請
・公営住宅の入居審査
・医薬品による副作用の救済
・職業訓練給付金の給付
・戦傷病者とその遺族に対する給付金の支給
・雇用保険の届出や失業給付金の申請
・石綿による健康被害救済に関する手続き
・中国残留孤児への支援給付
生活保護を受けていて隠れて働くほとんどの人たちは、福祉事務所の課税調査によってその収入を調査され発覚に至ります。これまでケースワーカーは、民間の会社が毎年提出する所得申告による課税情報から、不正受給を暴いてきました。
しかし、水商売や一部の零歳企業では、こういった所得申告を個人の確定申告に任せている部分があります。そのため、これらの業種で、確定申告をせずに隠れて働いた場合、福祉事務所の調査にはひっかからないことが多々ありました。
マイナンバー制度の導入により、水商売や零歳企業で働く人たちにもマイナンバーカードの提示が必要となります。その結果、個人の就労情報が行政に正確に把握されることとなるでしょう。
今後は行政が就労情報をもつかむことができるため、確定申告をせずに、ケースワーカーの目を欺く不正受給者の取り締まりがいっそう強化されることが予想されます。
失業保険は他に収入があると原則受給できないことになっていますが、虚偽の申請により不正受給する例も少なくありません。受給期間中のアルバイトで解説しているとおり、失業保険の受給中にアルバイト収入を得た場合は、「失業認定申告書」で報告しなくてはなりません。
この報告をしないと不正受給となるわけですが、所得状況を把握できないハローワークでは、これが不正受給であることになかなか気付けませんでした。
ところが、マイナンバー制度の導入により、税務署や市区町村役場が把握している所得状況をハローワークでも共有できるようになるため、虚偽報告の発見がしやすく、不正受給の防止につながると考えられます。