海外のマイナンバー≪1≫相次ぐなりすましが深刻なアメリカSSN (社会保障番号制度)

日本では始まったばかりのマイナンバー制度ですが、海外では個人番号制を既に取り入れている国は多々あります。その目的や構造も様々です。ここでは、アメリカ社会保障番号制度 (SSN) について解説します。

主要諸国の番号制度

日本では始まったばかりのマイナンバー制度ですが、海外ではすでに何十年も前から導入している国もあります。

諸外国における番号制度はどう機能しているのでしょうか。

導入目的によって分類すると、

(1)住民登録のため:
スウェーデン(1947)、デンマーク(1968)、ノルウェー(1970)、フィンランド(不明)、オランダ(2006)、フランス(1941)、韓国(1962)、

(2)社会保障の加入者管理のため:
アメリカ(1936)、カナダ(1964)、イギリス(1948)、

(3)税務管理のため:
イタリア(1977)、オーストラリア(1989)、

(4)身分証明のため:
シンガポール(1948)、エストニア(1999)となります。

 一方、発行方法で分類すると、

(1)分散モデル―年金、医療といった領域(目的)ごとに個別のIDコードを発行し、統一的に利用できるIDコードを発行しない(筆者注:セパレートモデルともいわれる):
日本、ドイツ、

(2)統合モデル―あらゆる分野で共通して1つのIDコードを用いる(筆者注:フラットモデルともいわれる):
スウェーデン、アメリカ、韓国、

(3)セクトラルモデル―領域ごとに異なるIDコードを用いるが、それらのIDコードが個人に1つの基幹IDコードから紐付けられる仕組み:
オーストリアとなるとしています。

他国で採用している番号制度にはいろいろな事例があり、大別すると下記の三例になります。

•セパレート・モデル
分野別に異なる番号を限定利用する方式【ドイツ】

•セクトラル・モデル
秘匿の汎用番号から第三者期間を介在させて分野別限定番号を生成・付番し各分野で利用【オーストリア】

•フラット・モデル
一般に公開された形で共通番号を官民幅広い分野へ汎用する方式【アメリカ、スウェーデン、韓国】

日本のマイナンバー制はアメリカをモデルにしたといわれています。

アメリカの社会保障番号制度 (SSN)

アメリカでは、80年ほど前からSSN(Social Security Number=社会保障番号)と呼ばれる9ケタの番号が導入されています。

導入当初は、社会保障プログラムの一環として収支を記録するためのものでしたが、現在では身分証明としての役割が高まり、社会保障番号がないと就職はおろか、銀行口座の開設も難しいほどです。

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社会保障番号( Social Security number, SSN)は、アメリカ合衆国において社会保障法(the Social Security Act)205条C2に記載された市民・永住者・外国人就労者に対して発行される9桁の番号。

連邦政府の社会保障局によって個人に対してそれぞれ発行される。

もともとは徴税用の個人特定が目的であったが、近年は事実上の国民識別番号となっている。
SS-5申請を適用することによって取得することもできる。

クレジットカードとは異なり、カード自体の提示を求められることはほぼ皆無(私はこれまで一度もない)。番号を書類に記入するか、口頭で伝えるかどちらかで済む。あまりによく使うので、自分の番号は覚えてしまうのが普通だ。セキュリティーの関係で「最後の4ケタだけ」を要求されることも多い。番号を利用しようとする団体は、この番号をキーとして社会保険庁に照合するシステムを使って、本人が記入した内容に間違いがないかどうかを確認する。

 クレジットカードのように番号自体が取り引きのトリガーになるのではなく、運転免許証のようにSSNカード自体が「身分証明」の役割を果たすのでもない。その一層下にある「本人確認」に使われるだけだ。

 すなわち米国のSSNは、生活の中では日本の「戸籍」に該当する役割を果たしている。こう考えると、分かりやすい。

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相次ぐ「なりすまし詐欺」

アメリカのマイナンバー制度

主なフラットモデルの運用国としては米国があげられるが、元々は社会保障目的で発行された「社会保障番号、通称SSN(social security number)」が実施的な共通番号としての役割を果たしており、SSNの下四桁で簡易的な身分確認の手段として用いられるなど幅広い用途で運用されてきた。

しかし、使用用途が極めて広いこの識別番号はその問題点も近年になって目立ってきている。主だったものとしては識別番号が広く個人認証に用いられたため成りすまし犯罪が激増し、邦取引委員会(FTC)の調査によると損害額は年500億ドルにも登るという。

問題点-普及の裏で悪用がはびこる

アメリカでは社会保障番号が身分証明の手段として一般的となっており、カードがなくても番号さえ口頭で伝えれば良いケースも多くあります。

原則、発行を受けた本人以外は番号を知らないという想定に基づいて、カード自体の確認が省かれるのです。

しかし、この状況を悪用したなりすまし事件が多発しています。

今年5月には、サイバー攻撃により流出した個人情報が悪用される事件がありました。なりすましにより、1万3千人分、3,900万ドル(約49億円・当時)の税金還付金が詐取されたのです。

その後もidentity theftは増える一方だ。詐欺師の手に渡ったら、さまざまな場面でSSNが悪用されてしまう。

 たとえば、金融関係。盗んだSSNで銀行口座を開いたり、クレジットカードを作ったりできる。小切手やカードで買い物したあと、請求書はSSNの持ち主、つまり被害者に届く。SSNが盗まれたことに気づくのはそれを見た瞬間のこと。「あら? 俺、車を買っちゃった? 運転免許もないのに?」とか、「あら、ジャスティン・ビーバーのコンサートチケット?」とか、ありえない買い物で初めて発覚するようだ。

 また、毎年春には詐欺師が成り済まし確定申告をするのが恒例行事。勝手に住所変更手続きをし、税務署をだまして還付金を受け取るという手口だ。もちろん当該の還付金は被害者に届かない。また、年金の場合も、本人より先に申し込んで同様に住所変更し、給付を代わりに受け取るという手口がある。素早く手続きや申告を済ませる詐欺師のマメさにもびっくりするが、大変な被害だ。

SSNの取得は義務ではないが、福祉、医療の補助金や税の還付など行政手続きに加え、ローンの申請や、クレジットカードの発行、銀行口座開設、携帯電話の契約、運転免許の取得などあらゆる場面で身分証明として使われる。
1936年の制度開始から累計4億5370万枚のSSNが発行されている。

だが、このSSNを悪用した「なりすまし被害」が深刻化している。

最も多いのは、他人のSSNを使ってクレジットカードを発行して、買い物をするというケース。ア

メリカ政府機関の統計によれば2014年には、16歳以上の7%にあたる延べ1760万人がSSNに関する被害に遭った。
詐欺事件の中では、SSNに関するものが15年連続、最多である。

SSNのヤミ売買、垂れ流し、犯罪者の手に渡るなどが横行しており、国外へ派遣された軍人が、任務を終えて故郷へ帰ると、何者かにSSNを使われて信用口座を開設され多額の焦げ付きがあった そればかりか、信用情報機関のブラックリストに登録されてしまって新規にクレジットカードも作れない状況に。

*患者が医療機関で呈示したSSNを職員が盗用、成りすまし犯に悪用される

*他人のSSNを悪用した成りすましの不正申告。

*ローン地獄に陥っている親がわが子のSSNで信用口座を開設し焦げ付かせ、その子が青年に達して銀行口座を開設しようとしたときにはじめて自分のSSNが信用情報機関のブラックリストに登録されていることを知ったという事例

講座2回目その1 (40247)

アメリカのSSNは本人確認に問題点

ただSSNの最大の問題点は本人確認が緩いということです。

もともとSSNを持っている人は本人に違いないという考えが根底にあったため、確認のときに指紋も本人写真も必要なかったのです。
したがってSSNが提示できるというだけで「はい、本人」と判断してしまっていたのです。

もうお分かりですよね?
これでは成りすますのも異常に簡単で、それに伴う被害も大きな社会問題となっていったのです。

では本題に戻って、日本のマイナンバー制度で成りすましは起こりえるのでしょうか?

SSNの基礎データは,氏名,生年月日,住所と郵便番号(と,その変更記録)である。

指紋も本人写真も必要ない。これでは誰か別人が,あなたのSSNを手に入れて,あなたになりすますことは簡単である。

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REAL ID 法

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受け、2005年ブッシュ政権は、より厳格な国民IDカードを導入する「REAL ID 法 (REAL ID ACT)」を成立させました。

が、このREAL ID法はプライバシー侵害などの理由に国民の根強い反対にあっており、未だ導入の目途は立っていません。

Real ID法

9.11の同時多発テロの犯人達が、州発行の運転免許証と身分証明書を容易に利用したことから、連邦政府は2005年5月11日にReal ID法を成立した。

同法により、各州が運転免許証を発行する際の統一基準が示され、また、施行から3年以降に州が発行する運転免許証(及びIDカード)で基準に従っていないものは、連邦政府機関により公的用途のための身分証明書として認められなくなった。

基準に従っていない各州発行の運転免許証では、航空機搭乗の際の身分証明として認められない。50歳以下については2014年12月1日までに発行を完了する。

まぁ、要するに今までアメリカは各州でバラバラに運転免許証を発行していたけど、全国統一で発行することに変えますたという法律です。

で、管理を効率化するために、日本もそうですが、現在、全ての運転免許書にICチップが埋め込まれています。

リアルID法って何?

2005年5月、ブッシュ大統領の署名により「REAL ID Act」が成立しました。

この法律は、テロリストや犯罪者が運転免許証やIDカードの取得を困難にすることを目的にしたものです。

この法律の要件に従わず発行された運転免許証やIDカードの提示では、飛行機の搭乗や連邦政府機関の建物に入ることができなくなります。