【マイナンバー制はプライバシー侵害!?】

これから始まるマイナンバー制度。マイナンバーによってプライバシーがあからさま?になるとか、イヤしっかり守られているとか・・・実際のところはどうなんでしょうか?ちょっと調べてみました。

■マイナンバー制で個人情報などのプライバシーはどうなの?

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●マイナンバー制度の理解とリスク

マイナンバー制度については、これまで当サイト内でも何度か取り上げています(4月13日付『マイナンバーで大混乱必至?不正利用や情報漏洩は厳罰、「手間がかかるシステム」と批判』等)ので、ここでは詳しい説明は割愛しますが、要するに日本に住民票がある日本人や外国籍の長期滞在者などに12桁のナンバーを割り当て、これを税金の申告や年金の手続きを行う際などに提出させ、これにより行政サービスを円滑に進めようというものです。

私たちには基礎年金番号、運転免許証番号、住民登録番号、保険証の番号など、多くの番号が付けられています。しかしこれらの番号はそれぞれの業務の目的のために、その対象者に限って付けられ、利用も限定された「限定番号」です。

いま作られようとしている共通番号制度は、住民登録のある(定住外国人を含む)全ての国民に強制的に付番され、様々な「限定番号」をつないで広範な事務に汎用的に使用される「共通番号」であり、まったく違う新しい番号です。プライバシーに深く関わり差別的扱いの原因となるおそれのある「障害」、母子、生活保護・失業、疾病・要介護などのセンシティブ情報や、住基ネットでは提供されない世帯情報も、情報提供ネットワークを通して提供されます。こうした情報が、行政機関や関係する民間機関の間で情報共有されていくことで、漏洩や本人の意思に反した利用が心配されます。

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政府はほかにも、戸籍やパスポートとマイナンバーを紐付けることを検討していますし、さらに、個人番号カードを利用して、自宅のパソコンから様々な機関が保有している自己情報にアクセスできるマイナポータルというサービスも検討しています。
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◆特定個人情報保護評価とは

特定個人情報保護評価は、国の行政機関や地方公共団体等が、特定個人情報ファイル(個人番号をその内容に含む個人情報ファイル) を保有しようとするときは、特定個人情報ファイルを保有する前に、特定個人情報保護評価を実施することを原則として義務付けるものです。具体的には、特定個人情報ファイルを保有することで生じるリスクとそれに対する対策を、所定の様式に記入し、公表する仕組みとなっています。

■マイナンバーはどう使われようとしているのか?

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このマイナンバー制度については、政府広報やメディアなどがさまざまな報道をしています。まとめてみると、これまで税務署や市役所、年金事務所といった国や地方公共団体の機関が独自に管理・運用していた納税記録や家族構成、年金の積立記録といった個人情報について12桁の番号を“アクセスキー”として名寄せができるようにするのです。それにより、行政は仕事を効率化でき、国民個人は必要な行政サービスを楽に受けられるようになります。
1 人を特定する情報 氏名・住所・生年月日・家族関係・勤務先・友人関係・運転免許・災害の時の避難先・前科前歴

2 財産を特定する情報 所得・資産・クレジット・各種保険・電気ガス水道・車検・全銀行口座と預金・株式・各種納税額・借金

3 教育関係の情報 学校・学歴・成績・奨学金残額

4 社会保障に関する情報 年金受け取り状況と保険料支払い状況・健康保険の使用状況と支払い状況・障害年金や雇用保険や生活保護や母子手当などの受給

5 医療情報 過去現在の病気・障害・DNA情報・処方薬の履歴

6 行動の情報(1) 買った本・読んだ本・アクセスしたサイト・検索した内容・ダウンロードしたソフトや情報

7 行動の情報(2) 渡航歴・電車・車などでの移動情報、GPS・防犯カメラで現在地と過去の移動情報

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国家がマイナンバーを使用して様々な個人情報を一元管理するとすれば、それは監視国家・管理国家と呼ぶべき国家体制でしょう。また、マイナンバーが広く民間でも活用されることになると、本人の与り知らぬところで、本人も把握しきれないほどの大量で多種多様な個人情報が集約・集積されて、たとえば商業取引の対象とされるような事態を招きかねません。また、他人のマイナンバーを不正に利用して個人情報をのぞき見る、あるいはその人が受けるべき給付を横取りする、などといった「なりすまし」犯罪が横行する危険性もあります。
これらの納税記録や家族構成などの情報は、行政機関がその業務を遂行するため、また児童手当や年金の支給といった行政サービスを提供するために適法に取得し、管理・運用しているものですし、万が一、これらの情報が間違っていた場合は、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」という法律に基づいて訂正を求めることもできます。
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参院内閣委員会は9日の理事懇談会で、マイナンバー法と個人情報保護法の改正案の審議を当面見送ることで合意した。年金情報の流出問題を踏まえ、政府の原因究明や国民の不安解消を優先させる。参院での採決のめどは立っておらず、今月中の法案成立は困難な情勢となった。

マイナンバー法改正案は、国民全員に個人番号を割り当てるマイナンバー制度を、2018年から金融機関の預金口座にも適用する内容。個人情報を企業が活用しやすくする個人情報保護法改正案とともに5月21日に衆院を通過し、今月上旬にも参院本会議で成立する見通しだった。

政府が来年1月から行政手続きなどでマイナンバーを導入することは決まっている。改正法案の審議が難航すれば、制度への反対論が強まる可能性があり、マイナンバーの活用範囲を拡大するスケジュールにも影響を与えそうだ。

■これからの注意点は?

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一つの番号を官民の両分野で広く使用するいわゆる「フラットモデル」の番号制を採用している国は、アメリカ、韓国、スウェーデン等の北欧諸国などで、必ずしも多くはありません。そしてそれらの国では、「なりすまし」犯罪や情報漏えいに手を焼いており、分野毎番号を含めて対策を模索しているのが実情です。一つの番号に様々な個人情報を紐付けるフラットモデルはプライバシーに対する危険性が大きすぎるのです。マイナンバー制度は、プライバシー保護の世界的な潮流にも逆行していると言わざるを得ません。
マイナンバーによって、「自分の知らないところで、とある行政機関が自分の個人情報を持つことになる」ということはあっても、訂正や削除を求める権利が阻害されるわけではないので、プライバシー権を「国家等が保有する自己の情報について訂正・削除を求めたり、コントロールすることができる権利」と理解する限り、侵害されることにはならないと考えられます。
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番号や氏名、住所、本人の顔写真などを表示したプラスチック製のマイナンバーカードも来年1月から市区町村の窓口で無償で受け取れる。カードは運転免許証のように身分証明書として使える。

来年1月からマイナンバーが活用されるのは、税、社会保障、災害対策の3分野に関連する行政手続き。国や自治体は、税金や住民票など制度ごとにばらばらに管理されている個人情報をマイナンバーで照合できるようになる。国民が行政の窓口で番号を伝えると、さまざまな手続きが簡素化される。

例えば、厚生年金の受給開始や所得税の確定申告で住宅ローン減税を初めて申請する際、添付が必要だった住民票が不要になる。確定申告の場合、まず自治体の窓口で住民票を取得し、その後に税務署で手続きをしなければならなかったが、手間が省ける。

会社を退職して国民健康保険に加入する時や、児童手当の受給者が毎年現況届を提出する際にも、必要な書類が減る。また、転職しても、加入していた年金の記録を正確にたどれるようになるため、年金が「消える」恐れはなくなる。

災害時に自治体が作る「被災者台帳」(氏名、住所、被災状況など)にもマイナンバーを記載する。被災者への給付金支給などを円滑に進める狙いだ。

個人用のサイト「マイナポータル」も導入される。自分が納めた税金や将来もらえる年金の情報をパソコンやスマートフォンで確認できる。利用者が制度を知らなくても行政側が個人の事情に応じて各種手当など利用可能なサービスをオンラインで通知する「プッシュ型行政」も採用される。

番号法の内容が周知徹底されないままマイナンバーの通知を行えば、漏えいや不正使用が頻発し、大変な混乱が生じることが危惧されます。実際、年金の分野では個人情報の漏洩事件を受けて、当面マイナンバーとの紐付けは延期される方向です。少なくても政府の責任できちんと安全管理が徹底されるまでは、マイナンバーの通知は延期されるべきです。その上で、プライバシー保護を図りつつ、情報通信技術を活用した効率化を実現するためには何が必要か、現場のニーズに立ち返って、今一度考えてみる必要があるのではないかと思います。
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●マイナンバーはプライバシー権を侵害するのか

結論からいうと、マイナンバーはプライバシー権を侵害しないと思います。

前述のとおり、マイナンバーは国や地方公共団体の機関がすでに持っている個人の納税記録、家族構成、年金の積立記録といった情報を、行政機関がマイナンバーという“アクセスキー”を使って利用しやすくする、という制度です

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