マイナンバー導入で今後の災害対策が変わる

マイナンバーは災害時にも有効活用できることが期待されています。どんな風に役立つのか紹介します。

マイナンバーは災害対策にも利用されます

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国の行政機関や地方公共団体などにおいて、マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の分野で利用されることとなります。
マイナンバーの制度開始で税や個人情報に注目が集まっていますが、マイナンバーは災害時にも有効活用できることが期待されています。

しかし具体的にはどんなことができるのでしょうか。

具体的にはどんなことに利用するのか

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防災については、「被災者生活再建支援金の支給に関する事務その他地方公共団体の条例で定める事務等に利用できる」と各自治体の実態に即した運用ができるようになっている。
来年1月から本格利用が始まる共通番号制度のマイナンバーを使って、災害時に安否確認を行うシステムを、東大生産技術研究所(東京都目黒区)が開発した。

 自治体の避難所に来た住民のマイナンバーをタブレット型端末に入力すると、避難した住民の情報を一元的に管理できる。未入力者をリストアップし、安否不明者も絞り込めるため、同研究所は内閣府の支援を受け、全国の自治体へのシステム導入を目指している。

東日本大震災を教訓に

2011年3月の東日本大震災の時、「避難所や避難先自治体で、(安否確認や支援物資の判断に極めて重要な)被災者名簿の作成に苦労した」「罹災証明書を発行するのが大変だった」との話を自治体の方からよく聞く。

 これらの問題は、確実な本人確認ができないこと、そして本人確認ができないために様々な個人情報(銀行口座、健康保険、介護保険、家屋関連情報など)をそれぞれの保有機関から、他人のものと誤ることなく収集することができなかったことに起因する。

東日本大震災のように、多数の被災者が他自治体へ移住した場合に迅速かつ効率的に対処するためには、自治体相互の情報連携を可能にするインフラが必要になる。こうした面でも、番号制度は大きな役割を担うことになる。マイナンバー法では、災害時には都道府県知事が「災害救助法による救助又は扶助金の支給に関する事務」と「被災者生活再建支援金の支給に関する事務」に関してマイナンバーを利用することが認められている。だが、国民が非常事態にあるこうした時にこそ、社会インフラとしてのマイナンバーがさらにさまざまなシーンで真に国民の役に立つことが期待される。
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東日本大震災では、被災3県で15,786人(2012年3月11日時点)の死者が発生しました。そのうち60歳以上の高齢者は10,085人と、死者数の65.8%を占めています。

この教訓から学べることは、災害時における正確な要支援者情報の重要性であり、その前提となる要支援者リストの整備・維持の重要性です。

マイナンバー制度導入により、自治体は必要に応じて家族の状況、個人の健康保険や介護保険の利用状況などを確認。持病・障害等の把握ができるようになり、要支援者リストの整備を行いやすくなります。

また、災害後の被災者生活再建支援金などの給付においても、個人の資産状況、健康状態を把握、これまで以上に適切な給付ができるようになります。

今後の課題◆「本人確認」はどうするのか

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2011年3月11日の東日本大震災の際、津波により、多くの方々が着の身着のままで避難することになった。当然、免許証やパスポートといった身元証明書や、印鑑、預金通帳、キャッシュカードといった預金の引き出しに必要なものを持ち出す時間はなく、あるいは消失、紛失された方も数多くいらっしゃったという。避難先で行政サービスを受けたり、金融機関から預金を引き出そうにも、「自分が誰であるか(身元)」を証明できなければ、被災者支援を受けるどころか、自分の預金を引き出すことさえ難しかったことは記憶に新しい。当時、金融機関は臨機応変な対応により、預金通帳やキャシュカードがなくても10万円以下の臨時支払いを実施したようであるが、それを逆手にとった「なりすまし」による不正引き出しの発生の可能性は否定できない。こういったことから、政府のマイナンバー制度の検討の中でも「災害時の本人確認の仕組み」の必要性が声高に叫ばれるようになり、有識者会議やシンポジウムでも強調されるようになった。
「災害時の本人確認」の手段としてマイナンバーは有効なのであろうか。巷で議論されるように、マイナンバーを記載したカードを身元証明書として配布しておき、被災した場合に、身元証明書が手元になくても、口頭でマイナンバーと氏名を告げることで身元確認とみなす、といった方策を考えてみる。被災者には、老人や子供も多くいることが想定され、皆が番号を覚えているとは思えない。さらに悪いことに、他人の身元証明書を拾ってしまえば簡単になりすましができてしまう。つまり、番号であろうとカードであろうと、本人の形質情報と結びついていない限り、本人確認の精度はおろか、かえってなりすましを助長してしまうことになりかねない。

つまり、災害時の本人確認の仕組みに必要なのは、忘れてしまうかもしれない番号や紛失してしまうかもしれないカードに依存せず、形質情報から本人確認をすることで、行政や金融機関と着の身着のままの被災者とを結びつけることができる仕組みなのである。

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