フリーランス・個人事業主・小規模経営者のためのマイナンバー知識

小規模な経営を行っている個人事業主の方は、マイナンバー制度が始まるとどのような対応を強いられるのでしょうか。法人番号は付与されるのでしょうか。個人事業主のためのマイナンバー知識を集めました。

個人事業主のマイナンバーはどうなる??

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法人番号について

10月から国民への通知がはじまるマイナンバーですが、法人には法人番号というものが発行されます。

では、個人と法人の中間のような存在の個人事業主には「個人事業主番号」なるものがあるのかというと…ありません!
なので、個人事業主は、番号の提供を求められた際、個人番号(マイナンバー)を使用することとなります。
マイナンバーを利用するシーンとして、まず思い浮かぶのは、確定申告書への番号記載。こちらは平成28年分の確定申告(平成29年3月15日までの申告)から記載をすることになります。これだけなら負担はあまりなさそうですが、その他にもマイナンバーが必要になってくる場合があります。

〈参考〉

小規模な経営や個人でのフリーランス業務を請け負っている個人事業主の人は、法人番号はもらえないんですね。自分の個人番号を使うしかありません。
法人には法人用のマイナンバー(法人番号)が割り当てられますが、個人事業主用のマイナンバーは割り当てられないため、個人事業主は自分個人に割り当てられたマイナンバー(個人番号)を使用します。
個人事業主やフリーランサーには法人番号は付番されないので、個人番号で行政の手続きを行います。

また、法人番号は1法人に対し、1つの番号しか付番されないので、法人の支店や事業所にはマイナンバーは付番されません。

自分のマイナンバーをそのまま事業用番号として使わなければならないということは、取引相手にマイナンバーを教えるということであり、その取引相手がマイナンバーセキュリティー意識の低い方であっても、取引をする以上マイナンバー提供を拒否することはできません。情報管理において、個人事業主は弱い立場に立たされると言えますね。

個人事業主には、自分以外のマイナンバーを扱う場合はあるの?

キーワードは「支払調書」

個人事業主が自分の確定申告以外でマイナンバーを使う場合とは…?キーワードは「支払調書」。報酬をもらう側と支払う側、2つの立場で関わってきます。

1. 支払調書とは
支払調書(しはらいちょうしょ)とは、特定の支払をした事業者(法人または個人事業主)が、その支払の明細を書いて税務署に提出する書類のことをいいます。支払調書は、その名の通り支払いを調べる書類で、税務署側で、支払いを受けた者がきちんと申告しているかどうか照らし合わせるために利用されます。支払調書には様々な種類がありますが、個人事業主に最も関係深いのは、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」でしょう。

(1)報酬の支払いを受ける場合
事業者から報酬の支払いを受ける個人事業主の場合、前年分の支払額と天引き税額が書かれた書類が取引先から送られてきて、それを元に確定申告をする方も多いのではないでしょうか。この書類が支払調書です。
※厳密には、これは“支払調書”ではなく、取引先事業者からの任意の“支払通知書”です。支払調書とは本来、支払者から税務署に出す書類で、支払先の支払調書提出は義務ではないからです。しかし慣習上、支払調書と同一の書式で送っている事業者が多いようです。

支払調書に記入するための番号を取得する場合があるんですね。
(2)報酬を支払う場合
従業員に給料を支払っている個人事業主は、給料や報酬を支払う際に、所得税の天引きをして、本来の納税者の代わりに税務署に納める「源泉徴収義務者」になります。この場合、報酬(外注費)の支払については、支払調書を作成する側の立場になります。
なお、支払調書は、年間一定額以上の支払をした方だけの分を作成、税務署に提出すれば良いことになっています。
※「源泉徴収義務者」でない個人事業主(ひとりで働いている方など)は、支払調書の作成・提出の必要はありません。

フリーランスがすべきこととは

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個人番号カードの取得申請

まず気をつけたいのが、マイナンバーのカードには2つの種類があるということです。

現在配布が開始されようとしているのが「通知カード」と呼ばれるカード。こちらのカードにはマイナンバーと氏名・住所・生年月日などの情報が記載されています。

通知カードのグレードアップ版とも言えるのが「個人番号カード」です。こちらは通知カードに同封されている申請書を送付すると手に入れることが可能です。こちらには顔写真やICチップなどが付与されており、より多機能なカードといえるでしょう。

身分証明書に使えるマイナンバーのカードですが、後者の「個人番号カード」のみとなります。その理由は、本人確認をするために必要な顔写真が個人番号カードにはあり、通知カードにはないためです

自動的に送られてくる通知カードではなく、自ら申請しなければならいない個人番号カードを取得するべきです。個人カードはそれがあれば本人確認もすんでしまうという身分証明書を兼ねていて、個人事業主にとっては利便性が高いと言えます。しかし個人カードは個人情報の宝庫。紛失したり、誰かに課したりということがないようにしましょう。
マイナンバー制度に関して、フリーランスがまず初めに対応すべきことは、「個人番号カードの取得」を行なうこと。ここは誤解されやすい点なのですが、先ほど説明した住民票の住所に届くものは「通知カード」であり、「個人番号カード」は申請しなければ取得することができないのです。
では、なぜこの「個人番号カード」を取得したほうが良いのでしょうか。それは、本人確認を行なう際、「通知カード」の場合は追加で身元確認書類(運転免許証等)の提示が必要になるのに対し、「個人番号カード」を持っている場合、1枚で済んでしまうためです。
これらの違いから、ぜひ「個人番号カード」を取得したほうがよいと言えるでしょう。ちなみに、「個人番号カード」の申請は、郵送される「通知カード」とともに送られてくる「個人番号カード交付申請書」に必要事項を記載し、行なってください。
身元確認の手間が省けます。
フリーランスや個人事業主には、マイナンバー制度の運用にあたり必要とされる対応があります。なかでも、従業員を雇っている個人事業主は従業員からマイナンバーの提示を受けるため、マイナンバー制度を正しく理解すると共に、マイナンバーを適切に管理する必要があります。以下の2点にまとめていますので、ぜひご確認ください。
1、報酬を得たフリーランス:
報酬の支払者の求めに応じてマイナンバーを提供します。マイナンバーは報酬の支払調書に記載されるため、報酬の支払者はフリーランスにマイナンバーの提示を求めます。
2、従業員を雇っている個人事業主:
従業員の源泉徴収票、社会保険の届出書などで従業員のマイナンバーの記載が必要となります。従業員からマイナンバーの提供を受け、管理を求められることから、マイナンバー制度を正しく理解することが重要となります。

個人番号を事業番号として使う時のリスク

ちなみに個人事業主は、法人版のマイナンバーである「法人番号」は取得できないので、“個人のマイナンバー”をそのまま仕事でも使わざるを得ません。それだけに、企業のマイナンバー対応の遅れは、個人事業主に大きなリスクと考えているのです。個人事業主はビジネス上どうしても弱い立場ですので、「マイナンバー対応できていない会社とは、お仕事できません」などとは……よほどのことがない限り言えません。

ですので、個人事業主のマイナンバーは、残念ながら「漏えいする(してしまう)ことを前提にする」という点からスタートせざるを得ないと私は考えています

個人事業主には、仕事の際に個人番号を提出しなければならないので、漏洩のリスクがあります。

個人事業主の税金支払い手続きは簡素化されるのか?

社会保障・税番号制度が導入されることにより、申告手続は簡素化されるのでしょうか。

(答)

国税庁では、社会保障・税番号制度の導入による納税者利便向上の具体的な施策の一つとして、住宅ローン控除等の申告手続における住民票の添付省略について、関係機関と協議を行うなど、その実現に向け検討を行っています。さらに、事業者負担の軽減策として、国と地方にそれぞれ提出する義務のある給与・年金の源泉徴収票・支払報告書の電子的提出の一元化についても、関係機関と協議を行うなど、検討を行っています。

医療控除の領収書が要らなくなる!

2017年7月を目処に、確定申告で医療費控除を受けるための領収書の提出が不要になる予定です。
現状では医療費の支払いを証明するために、確定申告で1年分の領収書の提出が必要となっていますが、マイナンバーが導入されると健康保険のデータがひも付けられ、税務署に医療費のデータが送られるようになるので領収書の提出が不要となります。

ただし、すべての領収書が対象となるわけではなく、市販薬の購入代や通院にかかった交通費など、健康保険以外の医療費の支払いはこれまで通り領収書が必要となります。
領収書の管理は楽になりそうですが、自分で医療費を把握するために領収書をまとめる必要があるので、個人事業主にとっては効果が薄そうな印象です。

マイナンバー制度によって、リスクばかりではなく、利便性も期待できますね。ややこしい手続きや、書類を集める手間が省けるのは嬉しい点です。

マイナポータルの利便性とは

マイなポータルというネットでのマイナンバーオンラインサービスが実施される予定になっています。このマイなポータルシステムが始まれば、納税が更に簡単になることでしょう。今までややこしい手続きを行っていた個人事業主にとっては嬉しい制度ですね。
マイナポータルができたら、申告手続が簡素化されるのでしょうか。

(答)

マイナポータルでは、民間サービスとも連携し、利便性の高いオンラインサービスをパソコンや携帯端末など多様なチャネルで利用可能にすることについて、内閣官房を中心に検討が行われていると承知しています。

国税庁においては、内閣官房における検討状況を踏まえつつ、これらが実現された場合を見据え、納税者の方の利便性向上を図る観点から、マイナポータルとe-Taxとの連携について、検討することとしています。

個人事業主のマイナンバーのセキュリティー対策

従業員がいなくても、税理士に業務を依頼した場合や、土地の大家さんなど、支払調書関連で他人のマイナンバーを扱うことがあります。その際のセキュリティー対策はきちんと行わなければなりません。
他の人のマイナンバーを預かる場合、支払調書などの税務署提出書類や従業員の雇用保険・社会保険等以外の場面でのマイナンバー利用が厳しく禁じられています。また、マイナンバーを含む個人情報が漏れないようにきちんとした取り扱いをする必要があります。
従業員の多い法人の場合、その管理方法を社内規程として定め、その通りに運用されているか適正な管理が求められています。ですが、個人事業主や従業員の少ない会社の場合は、事務負担が大きくなり過ぎないようにポイントを絞った適切な管理が必要です。

個人事業主によるマイナンバー管理のポイント

従業員の少ない事業者では、マイナンバーの主なチェック項目として以下のものが挙げられます。

①マイナンバーを従業員や取引先から取得する際、利用目的を伝えましょう。
②マイナンバーを取得する際には、番号が間違っていないかの確認と身元の確認が必要です。
③マイナンバーが記載された書類は、鍵がかかる引き出し等に大切に保管します。
④パソコンで管理する場合、ウイルス対策ソフトを最新にする等セキュリティ対策を行います。
⑤従業員の退職・契約終了等によりマイナンバーが必要なくなったら、データ削除やシュレッダーにより書類裁断するなど、きちんと削除・廃棄します。

マイナンバーは金庫に保管する。取り出す際の記録も付けておく

マイナンバー漏洩を防ぐため、ネットにつながないPCを作ると良いかも

流出防げ…自治体の9割、インターネットからシステム分離

今月5日に始まった共通番号(マイナンバー)制度で、自治体へのサイバー攻撃でマイナンバーが外部に流出するのを防ぐため、全国の市・特別区の813自治体のうち少なくとも92%が、マイナンバー情報を扱うネットワークをインターネットから分離していることが読売新聞の全国調査でわかった。
ただ、マイナンバー情報を狙った攻撃への対応方針などを明文化したり、攻撃をすぐに把握できる態勢を整えたりしている自治体は約半数にとどまっている。(→

他人のマイナンバーを知り得てしまう以上、そこには秘密保持の義務と責任が伴います。知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまわないよう、マイナンバーの利用と扱いには慎重になりましょう。
いつどこで、なんのために誰のマイナンバーを扱ったのか、記録に残しておくことを強くお勧めいたします。マイナンバー制度を正しく活用して、よりスムーズにビジネスができるようにしましょう。

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