海外のマイナンバー≪2≫徹底した行政管理で成功したスウェーデンPIN

スウェーデンは、個人番号制度の成功事例としてよく挙げられます。もともと住民情報を教会が管理していたスウェーデンでは、管理が教会から国へ移行することにあまり抵抗がなかったなどの理由があるといわれています。

スウェーデンの個人番号制 (PIN)

個人番号制度の成功事例として有名なスウェーデンでは、1947年よりPIN (Personal Identification Number) と呼ばれる個人番号制を導入しています。
PINは10桁の数字から成っており、最初の6桁が生年月日、ハイフンの後の3桁は生誕番号と呼ばれており、男性が奇数で女性が偶数、最後の1桁はチェック・ディジェットと呼ばれる数字で形成されます。

同じ誕生日の人に任意の4桁を割り振るので、ごく簡単にどこにも同一番号がないPINを作る事が可能になるわけです。

スウェーデンでは1947年にマイナンバーが導入されています。

氏名や住所、本籍地などのほか、本人だけでなく家族の所得・資産や所有する不動産関連の情報が含まれることが特徴です。

それらの情報がすべて一元管理されるため、確定申告などの際もあらかじめ内容が入力された書類が送付され、署名して返送するだけで済んでしまうのです。

省庁間での情報共有も徹底されています。

高負担高福祉の話とは直接関係ありませんが、驚いたのが個人情報の利用について。

国民に個別番号が付与されているのはもちろん、それらの情報が、個人を特定できないベースかつ本人が希望すればの話ですが、民間会社にも提供されています。

例えば引っ越しの際はワンストップで各種変更が完了しますが、それは各行政機関だけでなく金融機関・保険会社・クレジット会社にも通知されます。

まあこれは、個人的には便利でよいと思います。

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福祉国家スウェーデン

福祉国家とは、国民には高い税金を強いる分、人生を通じて手厚い保護が受けられる国家で、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどの北欧国家が有名です。

これらの国では、1960年代から70年代にかけて、住民登録番号制度が始まっています。

スウェーデン人の平均年所得は男性580万円、女性440万円。

年金、健保など社会保障費の徴収はない代わり、すべてを税金で賄っており、所得税は平均31%(最高税率は地方税と合わせて55%)。日本は15~50%だが20~30%の層がもっとも多い。

一番の違いは消費税で、日本の5%に対しスウェーデンの税率は25%である。

個人情報は、もともと教会が管理していた

スウェーデンでは、住民の出生や死亡などの個人情報はもともと教会が管理していました。
教会の住民記録から移管されたスウェーデン

高山憲之・一橋大学特任教授によると、スウェーデンでは住民の出生や死亡等は、もともと教会に届け出られており、教会における住民記録管理は1571年に始まったといわれています。

1686年に住民記録管理に関する統一規則が制定され、1947年には国民総背番号制度が導入されました。

住民登録実務が教会から国税庁に移管されたのは1991年と、まだほんの20年前です。日本では考えられないことですが、スウェーデンでは教会と住民生活が密接につながっているようです。

スウェーデン国税庁~
①信頼と納税者の行動~国民がなぜ番号制度(=PIN)を受容しているかというと、国税庁あるいは政府に対する伝統的な厚い信頼が存在するからである。

②記入済み申告書と電子申告~電子的な記入済み申告書は、1987 年から導入されている。

③PIN の概要~スウェーデンでは教会から住民登録の原型がスタートしている点に留意しなければならない。

PINは国税庁が管轄となり1947年から導入され死亡後も残る。

④情報登録庁-SPAR~情報提供の可否やプライバシーの問題解決は6 人の理事会に委ね
られる。

提供情報の適正運用のチェック独立機関としてデータ検査機関がある。

⑤個人情報保護~国民が税金をどのように支払っているか第3 者が知る事が可能。継続中の情
報についての公開は含まれず、終了行為のみの開示である。

スウェーデンクオリティケア (41023)

行政による徹底管理

住民情報の管理が、教会から国税庁に代わったのは1991年からで、もともと教会に一元管理されていたため、国民の抵抗感が少ないといわれています。

また日本と違い、福祉国家スウェーデンでは国家に対する絶大な信頼感があります。

ですが、それは一歩間違えば国による強制管理による専制のおそれもあると指摘されています。

スウェーデンは世界的に見てもマイナンバー制度を早い時期に取り入れて成功している社会保障制度先進国と言われています。

そこで我々はスウェーデンの国税庁を視察対象とし、納税番号制度とそれが社会保障制度に活かされている状況を視察研修しました。

そこで驚いたのが、マイナンバー制度の導入やその実施施行に関して、課税庁の人々や一般の市民が一様にスウェーデン国家に対して絶大なる信頼を持っていることです。

つまり、個人情報の収集や保護、利用範囲について国家行政当局が自分たちを裏切ることは絶対にないと信じているのです。

◆スウェーデンモデルの危険性

確かにスウェーデンは、生産面において日本よりも上手く市場の力を活用し(市場原理主義に近いとも言える)、順調に経済を成長させています。

また、日本では特別会計の不透明性が問題となっておりますが、スウェーデンでは政府の透明性に関しては群を抜いており、そのおかげか国民の政府に対する信頼は厚いものがあります。
これらの点に関して日本も学ぶべきところが幾つかあるのは確かでしょう。

しかし、多くの点で、スウェーデンモデルは問題を抱えています。
スウェーデンのマイナンバー制は、業務の効率化という点では役に立つかもしれませんが、極めて専制的な政府が現れた場合、政府は容易に国民を弾圧しうることをも意味します。

スウェーデン政府は、現時点でもやろうと思えば自身に反対するものの所得や資産を瞬時に把握し差し押さえることができるのです。

スウェーデン国民は政府による個人情報管理にあまり抵抗がない。

これは、古くから教会が住民情報を管理していたという歴史的経緯のほか、政府に対する国民の信頼の高さによるもの。政府への信頼は、政府の透明性と関係があると考えられる。

最後に、スウェーデン社会の大きな特徴として、一般の個人情報とセンシティブ情報が俊別されていることがあげられる。

センシティブ情報は上述の通り、厳格に守られるべきだが、その他の個人情報の提供は、国民の義務であり、権利を正当に行使するための手段でもあると考えられているのだ。

例えば、所得情報は閲覧可能だが、これは自己の社会保障給付の権利を得るために、また適切な納税などの義務を果たすために必要かつ重要な個人情報であり、センシティブ情報ではないと認識されているのだ。