【マイナンバー制度】社会保険に早めの加入でメリットも

雇い主と雇われ側の事情で社会保険に未加入の企業は、マイナンバー制度施行を機に加入を考えて見る時期です。現行の制度では、加入している方が将来受給する年金の額が多くなります。会社経営を持続させるには、加入することにより労使ともにメリットもたくさんあります。

未加入企業の洗い出し

政府は、厚生年金に入っていない中小零細企業など約80万社(事業所)を、平成27年度から特定し加入させる方針を発表した。
国税庁が保有する企業情報をもとに厚生年金に加入していない企業を調べ、日本年金機構が加入を求める。
応じない場合は、法的措置で強制加入させる。
加入逃れを放置すれば、きちんと保険料を払っている企業や働く人の不満が強まり、年金への信頼が揺らぎかねないと判断したようだ。
マイナンバー制度の基本である、税負担の公平・公正化である。
マイナンバー制度施行に合わせ、国税局と日本年金機構の取り組みが既に始まっていることが分かります。施行後は、どんな業態の企業から重大な不正問題が発覚するか分かりません。
明らかに税に関する新時代が到来するのです。

社会保険に加入する条件とは

では、改めて社会保険に加入する事業所の条件とはどのようなものでしょう。
社会保険の加入形態には、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類があります。
「強制適用事業所」とは、事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が義務付けられています。
「任意適用事業所」とは、日本年金機構(年金事務所)の許可を受け健康保険・厚生年金保険に加入することができる事業所です。

法人の場合は、従業員の人数に関係なく、全て社会保険の適用事業所になります。
個人事業主の場合は、非適用業種と非適用業種以外とに分類されます。
非適用業種の場合は、従業員が何人いても適用事業所になりません。(任意での加入は可能です。下の表をご覧ください。)
非適用業種以外の個人事業主の場合は、従業員が5人以上いると適用事業所になります。
つまり、社会保険の適用事業所になるのです。

事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。では非適用業種とは、どのような業種なのか調べてみました。

非適用業種とは?

非適用業種とは、
1.第1次産業(農林水産業)
2.サービス業(飲食店・美容業・旅館業など)
3.法務専門サービス業(士業にあたる事業)
4.宗教業(神社・教会など)など  です。
非適用業種でも、従業員の半数以上が厚生年金保険等の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けた場合は加入できます。
※ただし、認可を受けた場合は、従業員全員が加入することになります。
非適用業種以外でも、従業員が5名以上になると強制適用事業所になり、社会保険への加入が義務付けられます。
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法人税は伸び悩み

総務省統計局によると、平成24年2月時点で、全国にある企業数は412万8215企業。約4割強が法人企業と言われているので、法人企業は約170万社あるということになります。
差引すると、個人事業主が約240万社存在することになります。
この中で、実際に活動している企業の数は分かりませんが。
また、2014年3月に国税庁が発表した「平成24年度分法人企業の実態(会社標本調査)」では、赤字会社は調査法人全体(253万5272社)の70.3%の177万6253社となっています。
つまり、現在納税されている法人税の大半は3割弱の会社によって賄われています。その3割の会社もちょっとだけ黒字という会社が多いのでは。
年間の倒産(破産)件数は、毎年1万~1万5千社と言われています。
平成26年度予想では、約10兆円の法人税収と予想されています。よく見ると、法人税の大半が約3割の会社によって賄われていることに驚きです。
下の財務省の税収推移のグラフでは、法人税収が伸び悩んでいることが分かります。
だから、マイナンバー制度を活用して未加入企業を早期に特定できるようになります。
財務省 主要税目の税収(一般会計分)の推移

財務省 主要税目の税収(一般会計分)の推移

未加入で最大2年間分の追徴が

概算ですが、試算してみました。
法人で3名の従業員が2年間社会保険に未加入であった場合の試算です。
・ひとり当たり月額報酬換算で30万円の従業員とすると、月額の厚生年金保険料52,422円と健康保険料29,910円で、月額合計が82,332円。
・この保険料で2年間、3人分を計算すると、
82,332円×24カ月×3人分=5,927,904円です。
・労使折半ですから、2年間での会社負担額は2,963,952円です。
利益が出にくい業界では、この保険料負担は厳しいものでしょう。

しかし、未加入であることが分かると、さらに法律での罰則が下されます。
健康保険法第208状で「6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金」と定められています。追徴金と罰則のダブルで、致命的なダメージを受けるかも知れません。

3人でも2年間分で約600万円。会社負担分がその半分の約300万円にもなるのですね。
社会保険に加入すると、保険料負担により収益性への影響が大きくなりますが、マイナンバー制度下では必ず不正は見つかります。未加入の場合やこれから事業を立ち上げる時には、マイナンバー施行を機会に、加入を検討すべきですね。
社会保険に加入することにより、大きなメリットもあるのです。

加入の有無で選別

社会保険に未加入の会社は、会社側と従業員側の双方が、保険料負担を避けて利益を確保したい、手取りを減らしたくない、との思いのようです。
低成長時代では、社長の気持ちが優先し、社会保険に未加入の期間が続くのです。
しかし、これからマイナンバー制度の施行により、不正は確実に補足されるのです。すると、過去2年間にさかのぼって未納額を追徴される事態に及びます。従業員が多いと、数千万円単位にもなり、会社の破産・倒産にも結び付きます。これでは、せっかくの雇用を失うことにも。
逆に、社会保険に加入していると、良い人材の確保にも結び付くのです。良い人材は、賃金と同じように社会保険の有無も、会社選びの判断材料なのです。
会社が社会保険に加入することは、長い目で見ると会社の発展に結びつくのです。
もっと、加入のメリットを考えてみましょう。

社会保険に加入するメリット

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1.健康保険・厚生年金保険に共通する加入メリット
良い人材を確保するための最低条件といってもいいかもしれません。
応募者が就職先を決める際に、社会保険に加入しているかどうかは賃金と同じくらい重要な要件です。
2.健康保険加入のメリット
何といっても傷病手当金と出産手当金があることです。傷病手当金は病気や怪我で働くことができない間(最大1年半)、出産手当金は産前産後で働くことができない間について、だいたい賃金の3分の2が支給されるものです。
社員の方はもちろん、社長も病気や怪我で入院する可能性はあります。そのとき、会社からの賃金は0になったとしても、傷病手当金で3分の2がカバーできるのは非常に大きいと思います。
3.厚生年金保険加入のメリット
配偶者の保険料が免除される第3号被保険者という制度によって、保険料は納めなくても将来の年金はもらえるというものです。これは大きなメリットだといえるでしょう。

現行の制度で、仮に夫が厚生年金保険に加入し、妻が第3号被保険者の夫婦の場合について、未加入の場合と将来の年金額を比較してみます。
①厚生年金未加入の場合(国民年金のみ加入の場合)
・毎月支払う保険料(2名分)は約3万円で、40年間では合計約1,440万円
・将来受給される年金(2名分)は年に160万円。

②厚生年金加入の場合(賃金は月額20万円として)
・毎月支払う保険料は31,183円。40年間では約1,500万円。
・将来受給する年金は、夫130万円+妻80万円=210万円(年間の概算)
未加入の場合と比べると、加入している方が年間で約50万円多くなります。
改めてメリットが多いことも認識して、将来のためにも未加入の企業は加入を考える機会だと思います。

保険料負担が重荷に感じるならば、加入後に現在支払っている保険料に見合う金額になるように、賃金水準を見直す方法もあります。
専門の社会保険労務士などに相談することも考えましょう。

「社会保険完備」とは?

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従業員を募集しているサイトに「社会保険完備」とあったが、実際に確認してみると厚生年金と健康保険のみの加入であることが分かりました。これで、社会保険完備と言えるのでしょうか?

これでは社会保険完備とはならないのです。社会保険完備とは、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険(労災保険)、雇用保険の4つすべてに加入できるという意味です。雇用保険と労災保険に加入していないこの会社は「社会保険完備」とはいえません。

ちなみに、すべての企業は、就業規則又は労働契約書等で定められた労働時間(所定労働時間)が1週間に20時間以上あり、なおかつ31日以上働く見込みがある雇用者を、雇用保険に加入させなくてはなりません。また、労働者災害補償保険は、労働者が一人でもいれば、会社の適用手続きを行わなければなりません。この会社は求人広告の表記と実態が違うだけでなく、法律上の加入義務を果たしていない可能性があります。

結局、しっかりと働いて家庭を守る意思のある優良な社員を確保するためには、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険(労災保険)、雇用保険の4つを完備した企業であることが前提でしょうか?

開業医も加入を検討

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医療業界も人材難に見舞われています。良い人材は大きな病院に引き抜かれて、小さな医院は従業員を確保するのも苦戦しています。
一旦採用しても、理由をつけて休みがちになったり、遅刻や早退、あげくは患者さんとのトラブルを起こしたり、人材の質も低下しています。
こういう時に、社会保険に加入する個人開業医や歯科医院が増えています。
これはやはり社会保険に加入して、少しでも良い人材を確保する意思の現われです。社会保険のメリットはこんなところにあるのです。
高齢化社会に突入し、働く人にとっては健康保険と厚生年金保険のメリットは大きいのです。

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