性的マイノリティーなどの問題は繊細で、時に従業員から裁判を起こされたりすることもある問題。適切な対応はどういったものなのでしょうか?
性的マイノリティの方は、どのくらいの割合いるの?
同性愛者、性同一性障害などの性的マイノリティー(LGBT)は、全体の7.6%にのぼる。こんな最新の調査結果を、「電通ダイバーシティ・ラボ」が全国約7万人へのアンケートをもとにまとめた。
マイナンバーに対して不安の声
名古屋市に要望10月から個人番号の通知が始まるマイナンバー制度で、カードに性別が記載されることで性同一性障害の人たちなどが不利益を被る可能性があるとして、性的少数者を支援する名古屋市内のNPO法人代表・安間優希さん(46)が14日、名古屋市にプライバシー保護の独自対策を求める要望書を提出した。
マイナンバー制度では、国民一人一人に割り当てられた12桁の個人番号のほか、氏名、住所、性別などがカードに記される。来年1月に運用が始まると、社会保障や税などの行政手続きに個人番号が必要となり、アルバイトなどをする際、勤め先に本人や扶養家族のカードを提出する必要がある。
マイナンバー制度で使われるカードに戸籍上の性別が記載されることに、心と体の性が一致しない性同一性障害の人たちが不安を募らせている。当事者団体が約300人に行ったアンケートで、性別記載のカードを職場に提示することについて「問題が起こる」「何が起きるかわからないので見せたくない」との回答が計70%を超えたことが29日、分かった。戸籍とは違う性を申告して働いている人が少なくないためで、自由記述には解雇や生活難への不安から「自殺を考えている」との深刻な声も寄せられた。
アンケートは「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」が9月、ホームページで実施した。
インターネット上で、マイナンバー制度に反対する人たちが、受け取り拒否をすれば制度が無効になると考え、SNSで拡散しました。
全体の7%に性的少数が含まれているならば、労働人口にも同じ割合だと想定するのが妥当であり、あらゆる職場にいるかもしれないと捉えていた方が大きな問題に発展しないのではないでしょうか。
裁判になった実例
心は女性である性同一性障害の職員は、戸籍上の性別が男性である限り、女性トイレを使ってはならない――。経済産業省がこんな原則を示し、使いたければ異動ごとに職場で同障害を公表するよう求めていた。この職員は近く「人格権の侵害で、同障害を理由にした差別だ」として、東京地裁に行政訴訟と国家賠償訴訟を起こす。……
弁護団によると、性的少数者が職場での処遇の改善を求める訴訟は初めて。この職員は40代で、戸籍上は男性だが心は女性。入省後の1998年ごろ同障害の診断を受け、2009年に女性としての処遇を申し出た。診断から11年かかったのは、ホルモン治療や女性の容姿に近づけるための手術を重ね、「女性として社会適応できる」と思えるまで待ったからだ。11年には名前も女性的なものに変更。今では初対面の人にも女性として認識され、職場の女子会に呼ばれる。
経産省は、女性の服装や休憩室の使用は認めたものの、女性トイレの使用は原則として許可しなかった。この職員が情報公開請求して開示された資料によると、女性トイレの使用を認めない理由について、経産省は①労働安全衛生法の省令で男女別のトイレ設置が定められている②女性職員の了解が不可欠だが、2人から「抵抗感がある」との声があがった――などと説明。
性同一性障害で女性に性転換した京都市の40代経営者が、フィットネスクラブから戸籍上の男性として施設を使うよう求められ人格権を侵害されたとして、運営元のコナミスポーツクラブ(本社・東京)に賠償を求める訴訟を近く京都地裁に起こす。性同一性障害特例法の規定で戸籍の性を変えられない事情があり、「人の生き方を不当に制約する法のあり方も問いたい」と訴える。……性同一性障害特例法で、戸籍上の性別を変えるには未成年の子どもがいないことが条件の一つとなる。経営者は10代の娘がいて、成人するまでは戸籍の性を改められない。そうした事情も支店長に伝えたが、対応は変わらなかったという。
経営者側は、コナミの対応は自ら望む性別で人間らしく生きる権利を妨げ、幸福追求権を保障した憲法13条の趣旨に反するなどと主張。慰謝料など約480万円を求める。
コナミは取材に対し、性同一性障害の人に対しては戸籍上の性別に即していることを基準に対応していると説明。「非常にデリケートな問題。他のお客様の理解も必要」としている。
職場では、6割の性的マイノリティの方が無理解に苦しんでいる
同性愛や性同一性障害など性的少数者(LGBT)の六割が、職場で差別的言動を受けたと感じていることが支援団体などの調査で分かった。睡眠障害やうつなどにかかる割合も高く、当事者は今も根深い無理解に苦しむ。
性的マイノリティへの配慮
現在、保険証の性別記入欄について「現在では表面は性別記載がなく裏面に記載してもらえる事例もある」だったり一部自治体では印鑑証明の性別欄をなくすなどの措置をとっている。
一般の方からしたら気にならないであろう性別欄は性同一性障害の当事者にとっては時には大変苦痛な思いを強いられることになる。
○有村国務大臣 お答えいたします。御指摘のとおり、性的マイノリティー、とりわけ性同一性障害などを有する方々に関して、人権尊重の観点から、その教育、啓発等を進めて、差別や偏見をなくしていくことというのは極めて大事な価値だと認識をしております。
その上で、国家公務員採用試験における受験申込者の記載事項は、人事院が定めることでございまして、お尋ねの性別の記入欄の取り扱いについても、委員御案内かと存じますが、人事院において判断すべきものでございます。質問としては、人事院をお呼びになることができますので、その当事者であります人事院にお尋ねいただきたいと考えております。
その上で、一般論として申し上げれば、性別の記入欄は、女性の活躍推進に資する観点から、男女別の申込者を把握することなど、ジェンダー統計をしっかりと上げてほしいという声も、これまた多くの方々から御指摘をいただいていることでございまして、その必要性から設けられているものと理解をいたしております。
職場でのマイナンバーにおける性別記載に関しての配慮等を含め、フレキシブルな対応が求めらているのです。
従来のような性的少数の方に対してのみに我慢を強いるような対応では裁判になる可能性もあり、また社会的な信用性にも関わってくるので繊細な問題には鈍感な対応はしないようにしましょう。
性的マイノリティの市場効果
LGBT層の消費傾向などを分析し、「LGBT市場」を5.94兆円とする推計をまとめた。内訳で多かったのは、自宅での食費約2兆2000億円、車・バイク6297億円、医療・保健5216億円、外食4532億円など。
一般層に比べ、家電・AV機器、家具・インテリア、化粧品、カルチャーなどの消費額が多くなる傾向があるという。