今から始める中小企業主のマイナンバー対策

2016年1月から始まるマイナンバー制度に備えて、従業員のマイナンバー情報の取扱や、セキュリティ対策、社会保障や税の手続について説明します。

新しいポストを決める。

まずはマイナンバーの管理者と事務担当者を決めます。
マイナンバーの事務担当者の仕事は、従業員からマイナンバーを聞き、データにまとめ、税務署やハローワーク、健康保険組合、年金事務所などに対して、各手続き時に必要な番号を報告することです。
管理者は、集めたマイナンバー情報を管理監督する役目になります。

中小企業でいえば、事務担当者は経理、管理監督者は社長になるでしょう。
社長が経理も兼任している場合はその両方を担うことになりますが、中小企業向けマイナンバーガイドラインでは、責任者と事務担当者は区分して管理するのが望ましいとされています。

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新しく人を雇うという手もありますが、人件費削減のためには「事務担当者は経理、管理監督者は社長」という兼任のやり方が一番望ましいように思えます。
ただ、これだと仕事が確実に増えることになりますね。

従業員のマイナンバー情報を取扱う際の注意点

マイナンバーの利用・提供範囲は、法律や条例で定められた社会保険、税に関する事務に限定されています。

社員番号や顧客管理番号としての利用は、本人の同意があっても禁止されています。

マイナンバーを書き写したり、コピーを取ったりすることは、禁止されています。

マイナンバーが記載された書類やデータファイル等については、所管法令において定められている保存期間を経過した場合、マイナンバーを出来るだけ速やかに廃棄または削除しなければなりません。

マイナンバー取得するときに、本人に通知した利用目的以外に利用してはいけません。また、利用目的を後から追加することも禁止されています。ただし、取得するときに複数の利用目的をまとめて明示・通知することは可能です。(例:源泉徴収のためとして取得した従業員のマイナンバーを健康保険の手続で利用することはできませんが、取得する際に源泉徴収や健康保険の手続きのためと、利用目的を明示して取得、利用することはできます。)

社会保障、税、災害対策の手続きに必要な場合などを除き、他人のマイナンバーの提供を求めたり、特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)を収集し、保管したりすることは、本人の同意が有っても禁止されています。

たかが番号と思っていたら、これだけしてはいけないことやしなければならないことがあるとはビックリです。
従業員のマイナンバーが悪用されては大変ですから、慎重に取り扱う必要があるのはわかりますが…。
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業務ソフトを対応させる。

人事・給与・会計システムなど、マイナンバー対応のためにシステムの改修が必要な場合があります。例えば、源泉徴収票や支払調書にマイナンバーの記載欄が新たに設けられますし、源泉徴収票のサイズは現行のA6サイズからA5サイズに変更になります。マイナンバー制度開始後の規格などに対応するために、業務ソフトについても早めの検討が必要です。
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すでに多くのメーカーが業務ソフトを販売しています。
比較サイトなどで、自社に合ったソフトを選び購入するべきでしょう。

マイナンバーに関する罰則規定

①個人番号関係事務または個人番号利用事務に従事する者または従事していた者が、正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科(第67条)
②上記の者が、不正な利益を図る目的で、個人番号を提供または盗用3年以下の懲役もしくは150万円以下の罰金または併科(第68条)
※従業員など継続的に手続きが必要な場合や法定保存期間で7年保存が義務付けられているものは適切な安全管理の元での保存が義務となります。ただし法定保存期間経過後は個人番号を削除した上で、当該情報を削除した記録を残す必要があります。
マイナンバー関係書類やファイルを紛失・漏洩、または第三者に盗まれた場合は①に該当するとのこと。
うっかりミスが、大きな損失を生んでしまうので要注意です。
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社員研修が必要です。

一般企業でも、マイナンバー法の施行とともに、社員に研修を行う必要があります。全社員のマイナンバーを扱う人事総務部門は、もちろんのことですが、他の社員にもマイナンバーについて概要の説明と、マイナンバーの利用の範囲の説明、そしてマイナンバーの収集が必要になってきます。
日本国内には、200万社以上の企業があると言われていますし、マイナンバーの施行の開始についても、それほど大々的に告知がされている訳ではありませんので、全ての企業が施行までに、一般社員向けに研修を行えるかと言うと、難しいとは思います。しかしながら、社員のセンシティブな情報を扱う訳ですから、最低限の説明は行うのが、マナー・会社としてのモラルだと思います。
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研修は任意だと思いますが、社員全員がマイナンバーに精通していると頼もしいですね。
そして、それによってトラブル発生の確率はかなり減ると思います。

補足 もしマイナンバー提出を拒否する従業員が現れたら。

国税庁:「マイナンバーを出し渋る人を一生懸命説得して下さい。どうしてもダメなら,提供を求めた経過等を記録、保存するなどし,単なる義務違反でないことを明確にしておいてください(その上で,個人番号欄を空白の状態で提出して下さい)。」
ハローワーク:「マイナンバーを出し渋る人を一生懸命説得して下さい。どうしてもダメなら,個人番号欄を空白の状態で提出して下さい。」
説得したという事実がわかるように、説得経過を残して欲しいというのが国税庁の希望のようです。
こういった場合に備えて、あらかじめ定型化した書類を用意しておいたほうがいいかもしれません。
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