中小企業に会計検査院が調査に入る目的とは?

中小企業や従業員を持つ個人事業主の中には、マイナンバー制度が施行されると意外な影響を受ける恐れのあることが分かってきました。

マイナンバーは中小企業にとって頭痛の種

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マイナンバー制度は、正式には「社会保障と税番号制度」とも呼ばれ、公平・公正な社会を実現するために設けられた制度です。
その施行による効果としては、社会保障の不正受給の防止効果が第一に挙げられています。
1月からは、パートやアルバイト、契約社員などの非正規労働者の納税状況も把握できるのです。   
社会保障の不正受給とは、地方財政を圧迫している生活保護費の不正受給、失業保険や年金の不正受給など多方面にわたります。
よく考えると、いろんな社会保障手当を受給する機会が多いことが分かります。必要な手当ては当然受給できますが、不正かなと思う場合はこの際見直すことも必要かも。
本来なら入るべき社会保険(厚生年金・健康保険)に入っていない会社が少なからずあります。社会保険は、法人ならば法的には人数を問わずに加入の義務があります。入っていないのは違法と言えます。
加入していない人の数を国税庁の平成25年度のデータで推計すると、年末調整を行った人が4220万人に対して厚生年金の被保険者は3527万人で、その差693万人が未加入と考えられます。
雇用形態が把握できませんが、未加入者のおよその数が分かります。
中には、社会保険料を滞納している企業もあるようです。

社会保険料の未納額は膨大

未加入者の内で仮に100万人が「本来加入義務があった」と認定されたら、仮に年収が200万円であったとすると、人件費の年間の総額は2兆円にもなります。
社会保険料は人件費の3割(労使で折半負担)ですから、1年間の社会保険料の未納額は6000億円で、時効は2年間なので2年分では1兆2000億円を徴収できるのです。
会計検査院は、国や地方自治体の会計を検査するのが役目で、施行と同時に社会保険料の検査に取り掛かります。
100万人の未加入者と推計しても、年間で6000億円の税収の増加は大きな額です。
実際には未加入者の数はもっと大きな数になると推測されます。
このように、マイナンバー制度は滞納されている社会保険料や滞納企業をあぶり出すために、効果的な制度です。

マイナンバー制度は、脱税封じと社会保障の不正受給防止が目的

平成28年1月5日に施行されるマイナンバー導入の目的は、脱税封じと社会保障の不正受給防止であることがはっきりしてきました。
マイナンバーは、27年10月5日時点の住民票の有無が基準で、日本人約1億2600万人と、国内に住民票がある外国人約200万人にもマイナンバーが与えられます。
今までは個人の所得や資産などを補足するためには、国税庁、地方自治体、日本年金機構などの各行政機関が相互に情報を照会してきたが、時間がかかっていました。
マイナンバーの導入で、これらの情報のやり取りがスムーズになります。
今後は、銀行の口座情報にもマイナンバーをひも付けする狙いです。
私たちの社会保障の情報だけでなく、財産もすべて将来把握されてしまいますね。

会計検査院が調査に入る

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会計検査院とは、国や県、市町村、特殊法人などの会計を常時検査し、会計経理が正しく行われるように監督する機関です。簡単に言うと「役所を調査する役所」ということです。
会計検査院には、
①不適切な会計経理について是正、改善の処置を要求する権限
②法令、制度、行政に関して意見を表示し、又は改善の処置を要求する権限が与えられています。
そこで、助成金を支給している独立行政法人や年金事務所、公共職業安定所にも調査が及ぶのです。近年、年金財政などの悪化により、年金事務所の調査に重点を移しています。
従って、社会保険未加入の会社などには、年金事務所単独の調査だけでなく、会計検査院が検査に入ることがあるのです。
マイナンバー制度施行後は、会計検査院が中小企業と関わるケースが増えてくるようです。
日頃からの備えが必要です。

年金事務所(会計検査院)の調査対応

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社会保険の調査には、年金事務所の調査と会計検査院の調査の二つがあります。
もちろん、年金事務所より上位の機関である会計検査院の調査の方が厳格です。
調査時に要求される資料は概ね次の資料です。
①賃金台帳(過去2年分)
②労働者名簿
③雇用契約書(労働条件通知書)
④出勤簿(タイムカード)
上記の4点は、社会保険加入の有無、パート・アルバイト等問わず、全員分です。
⑤就業規則(給与規定)
⑥源泉所得税(所得税)の領収証書
⑦適用関係諸届の決定通知書   等 です。
これらの資料により
①社会保険の加入要件を満たしているにもかかわらず、加入していない者がいないか?未加入期間はないか? を調べます。
・パート、アルバイト、役員等も調査対象です。
・使用期間等にも関係なく、原則入社と同時に加入が必要です。
②標準報酬月額は適正かどうか?
・毎年7月の算定基礎届(定時決定)の処理
・月額変更届(随時決定)の処理
・資格取得時の標準報酬月額の確認
・社会保険料の算出基礎となる手当の確認
③賞与支払届の提出、保険料の徴収の確認
を行います。
会計検査院の調査では、年金を受給している高齢者の未加入も特に調査されるようです。
原則、過去2年間にまでさかのぼって、保険料が徴収される可能性があります。
しかし、間違っても賃金台帳や出勤簿を改ざんしてその場を取り繕っても、年金事務所の税務資料と照らし合わせればすぐに判明しますので、くれぐれも注意が必要です。
まずは、社会保険諸法令の専門的な知識を持ったところに相談が必要です。

会計検査院が目をつける企業とは?

パートタイマーなどの短時間労働者を多く雇用している事業主を中心に、特別支給の老齢厚生年金を全額支給されている受給権者を使用している事業所はチェックされるようです。
、特別支給の老齢厚生年金の受給権者を、14名の従業員の中でたった2名、社会保険に加入させていなかったことが判明し、計3,364,402円の追徴を受けた事例もあります。
厚生労働省は、社会保険未加入事業所の公表と告発、適用事業所に対しては4年に一度程度の調査をします。
パートや60歳以上の従業員が多い事業所は、被保険資格取得届がきちんと提出されているか、改めて確認が必要です。
社会保険の資格取得がなされていないことを指摘される時のデメリットは、保険料の追徴だけでなく、受給した年金額の返還もあり得るので、注意が必要ですね。

国民年金の未納問題も理由がある

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国民年金は、その支払いをしていない人が4割もいる。(ここ数年で4割になってしまったが、これはリストラ等で会社をやめさせられたり、正社員がパートになった人が多いことが主因)
その支払いをしていない人には、2通りある。つまり、そもそも未加入の人と加入はしているが、支払っていない人である。
新聞の投書等には、政治家には督促が行かないが、庶民は2ケ月遅れてもかなりうるさく言ってくるのは、不公平であるなどという記事が見られるが、本当はちょっと違う。
 つまり、未加入の人には、何も言ってこないが、加入者にはうるさいのである。このことは、国民年金だけでなく、厚生年金についても同様である。
 日本全体の法人数は、ここ数年若干ではあるが増加している。しかしながら、厚生年金(健康保険も含む)に加入している法人数はドンドン減少している。

社長1人の株式会社や有限会社でも、厚生年金は強制加入である。(つまり、すべての法人は加入しなければならない。)
にもかかわらず、こちらも4割近くの法人が未加入なのである。
 いやむしろ加入したくても、社会保険庁は赤字法人を加入させない。法律上は強制加入にもかかわらず行政裁量だなどと言って、加入を認めない。
何故この様なことが行なわれるのか。
 年1回、会計検査院は、社会保険庁に調査に来る。そこで、厚生年金の保険料の回収率をチェックする。その回収率は、99%台である。
 回収率を下げない様にするためにも、法人も個人も未納になりそうなところは敢えて強制加入に踏み込まないようだ。

社会保険の未加入の実態は、事業主側にも個人的にもいろいろと事情があるようです。ただ、加入者への滞納の催促が厳しいことは、不公平感もあるようです。

未加入は働くものが損をするかも

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社会保険に未加入だったために、就職後に慌てることにもなった事例です。
それは、就職先の会社が社会保険資格取得届をしないまま3ヶ月経ち、その人が突然病気で働けなくなったのです。 国民健康保険、国民年金だと傷病手当金はありませんし障害基礎年金になります。
しかし、資格取得届を提出してないことは保険料も払ってないことです。傷病手当と障害厚生年金の受給資格はありません。
事業主のミスであり、慌てて事業主が資格取得届が遅れた理由を添付して、就職した日から社会保険に資格が有るとの扱いに訂正できたそうです。
その結果 傷病手当と障害厚生年金の受給が可能になりました。
この事例では確認に必要な事実証明などの書類を調えることができました。
ハローワークの紹介証明 事業主の加入届が遅れた弁明書理由 賃金台帳 出勤簿などを提出で
入社日確認被保険者となれました。
保険料を加入月に遡り支払い、健康保険証の発行、傷病手当金受給の手続き、退職、任意継続被保険者、障害厚生年金受給者となれることになりました。
会社が強制適用事業所であっても、未納となっていないか、個人的にも確認が必要です。 
公的年金の利回りは、生命保険会社の個人年金などより倍以上良いそうです。将来、年金を支払った金額より取得した金額の方が少なくても、税務上のメリットがあるため、損はしないとのことです。(ある社会保険労務士の話ですが)調べてみたいですね。

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