マイナンバー制度は日本では初めての制度なので、これに応じて企業の就業規則を変えなければいけないという声が挙がっています。果たして変更は必須なのか?変えるとするならどのように変えるべきか?今回はこのことに関する記事を紹介します。
必ずしも就業規則を変更する必要はない?
番号法では、事業者がマイナンバーを取り扱う際には、その利用目的をできる限り特定しなければならないとされています。また、企業がマイナンバーを取り扱うことが出来るのは利用目的を特定した範囲のみであり、当初の利用目的と異なる利用目的でマイナンバーを利用する場合には、本人への通知が必要とされています。この「本人への通知」とは、
・社内LANにおける通知
・利用目的を記載した書類の提示
・就業規則への明記といった方法であると、特定個人情報保護委員会のページには記載されています。つまり必ずしも就業規則を変更する必要はないですが、就業規則で明示しておいた方がベターだといえるでしょう。
もし就業規則に明示しなければ、利用方法が変わるたびにいちいち書類の提示などをしなければならず、実務上非常に煩雑ですよね。就業規則を変更して明示しておく事をおすすめします。
次の項で特定個人情報保護委員会の記載を載せておきます。
利用目的の通知または公表
ガイドライン
事業者は、給与所得の源泉徴収票作成事務のほか健康保険・厚生年金保険届出 事務等を行う場合、従業員等から個人番号の提供を受けるに当たって、これら の事務の全てを利用目的として特定して、本人への通知等を行うことにより、 利用目的の変更をすることなく個人番号を利用することができる。なお、通知 等の方法としては、従来から行っている個人情報の取得の際と同様に、社内 LANにおける通知、利用目的を記載した書類の提示、就業規則への明記等の方法が考えられる。
就 業 規 則 の 変 更 例
就 業 規 則 の 変 更 例】
採用、異動等
(採用時の提出書類)
第●条 労働者として採用された者は、採用された日からならない。
(中略)

(番号法等に基づく通知義務及び利用等)
第●条 労働者は、労働者自身及び労働者の扶養家族について、会社から番号法及び関連法等(省令やガイ
ドラインなどを含む、以下「番号法等」という)に基づく通知を求められた場合には、これに応じなければなら
ない。
2 会社は、労働者から個人番号の通知を受ける場合には、利用目的を明示するものとする。
3 会社は、労働者から通知された個人番号について、管理を厳密に行い、法令等で認められた場合を除き、
目的以外には、利用しないものとする。また番号法等の範囲で再利用できるものとする。
4 労働者は、番号法等の改正などにより、個人番号の利用目的などが拡大または改正された場合には、その
内容にともなう会社の指示に従うものとする。
5 労働者が扶養家族を有し、扶養家族の個人番号を会社に通知するにあたっては、誤りのないよう確実に確
認をしなければならない。
このほかに個人番号の利用目的などの変更例なども、サイトには書かれています。
「利用目的の通知」を就業規則により代用することはできない?
マイナンバーの利用範囲を就業規則に明記しておけば、その都度利用目的を本人に対して通知しなくても済みますよね?マイナンバー法や同法ガイドラインの趣旨から考えると、本来は個別対応である「利用目的の通知」を(全従業員対応である)就業規則により代用することはできないと考えられます。
なお、「利用目的の通知」には複数の目的を列挙することは可能ですが、【マイナンバーを必要とするすべての社内事務】という包括的、抽象的な記載は認められません。
その方が会社全体の目安になりますから、トラブルを防ぎやすくなると思われます。
就業規則に加えておきたい規定
就業規則に加えていただく文例をお送りさせていただきます。就業規則には、
◆採用時の提出書類に関する規定
◆提出書類の取り扱いに関する規定
◆提出の協力を求める規定⇒服務規定か、懲戒規定レベルにするか?
あくまで抑止力としてですが…。