中小企業の多くはマイナンバーの取り扱いを税理士や社労士に委託することかと思います。そこで気になるのが税理士や社労士のマイナンバー対応状況です。税理士の中では税分野でのマイナンバー取り扱い変更を受けて様子見しているところも多い模様。1月末時点での税理士や社労士の対応状況について見ていきましょう。
税と社会保障に関連する書類にマイナンバーが必要になります
民間事業者でも、従業員やその扶養家族のマイナンバーを取得し、給与所得の源泉徴収票や社会保険の被保険者資格取得届などに記載して、行政機関などに提出する必要があります。また、証券会社や保険会社が作成する支払調書、原稿料の支払調書などにもマイナンバーを記載する必要があります。(2014年6月回答)
マイナンバー業務を委託する場合は?委託先の監督もしなければいけない!
マイナンバーを取り扱う業務の全部又は一部を委託することは可能です。また、委託を受けた者は、委託を行った者の許諾を受けた場合に限り、その業務の全部又は一部を再委託することができます。
委託や再委託を行った場合は、個人情報の安全管理が図られるように、委託や再委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。委託や再委託を受けた者には、委託を行った者と同様にマイナンバーを適切に取り扱う義務が生じます。(2014年6月回答)
マイナンバーに関する業務を税理士や社労士に委託する際にも委託先を監督する必要があります。税理士や社労士に税務や労務を委託することが多い中小企業からすれば対応状況が気になるところですね。
相次いで変更される税分野でのマイナンバー取り扱い!税理士事務所も対応が慎重に?
via mangatop.info
マイナンバー取り扱い変更①本人交付の源泉徴収票
平成 27 年 10 月2日に所得税法施行規則等の改正が行われ、行政手 続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以 下「番号法」といいます。)施行後の平成 28 年1月以降も、給与などの 支払を受ける方に交付する源泉徴収票などへの個人番号の記載は行わな いこととされました(個人番号が記載不要となる税務関係書類は、以下 のものです。)。
なお、税務署に提出する源泉徴収票などには個人番号の記載が必要で すので御注意ください。
マイナンバー取り扱い変更②給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
平成28年1月以後に提出する扶養控除等申告書には、従業員本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族等の個人番号を記載する必要がありますので、その記載内容が前年以前と異動がない場合であっても、原則、その記載を省略することはできません。しかしながら、給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等の個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等の個人番号の記載をしなくても差し支えありません。
なお、給与支払者において保有している個人番号と個人番号の記載が省略された者に係る個人番号については、適切かつ容易に紐付けられるよう管理しておく必要があります。
マイナンバー取り扱い変更③平成28年度税制改正大綱
平成27年12月16日に公表された自由民主党・公明党の「平成28年度税制改正大綱」では、マイナンバーについて「マイナンバーの記載に係る本人確認手続やマイナンバー記載書類の管理負担に配慮し、一定の書類についてマイナンバーの記載を不要とする見直しを行う」 としています。
積極的に収集する税理士事務所もあれば後ろ倒しにする事務所も!
通知カードが届いてから時間がたつと失くしてしまう従業員や扶養親族も出てくる可能性が高くなることから、すでに、これら必要となるマイナンバーの収集を昨年から開始している税理士事務所もあれば、ここまでの変更にとまどい、今後もなんらかの変更があることを想定して、この1月の「償却資産申告書」ではマイナンバーを記載せず、事務所としての繁忙期である所得税の申告時期を乗り切った後に、平成28年度の税制改正の決定など、様子をみたうえでマイナンバーの収集を順次開始していくように考えている事務所もあるようです。
一方で着々と進む社会保障分野でのマイナンバー取り扱い!ただし関与率には課題あり!?
全国各地でPRも兼ねたマイナンバーの提出が行われています!
今年から運用が始まったマイナンバー制度をPRしようと、県社会保険労務士会が4日、大津市中央4丁目のハローワーク大津で、マイナンバーが記入された雇用保険の書類を初めて提出した。今年1月から、雇用保険の書類などにマイナンバーを記入する運用が始まった。この日、同会所属の社会保険労務士が大津市の事業主の代理で、マイナンバーが記載された雇用保険の資格取得届を提出した。
ただし社労士の関与率は3割!順調とは言えない?
「ヒト・モノ・カネ」という経営の三要素のうち、社会保険労務士は「ヒト」の専門家であり、税理士は「カネ」の専門家という違いがまずはありますが、その他にも、この2つの資格を比べたときにひとつ決定的な違いがあります。それは「関与率」です。
関与率というのは、すべての企業に占める、士業者が関与している企業の割合のことで、税税理士の関与率は実に9割とも言われています。
それに対して社会保険労務士の関与率は、公式の統計データがあるわけではありませんが、業界的には3割程度と言われています。すなわち約7割の企業は、自社の人事・労務管理に関して、その道の専門家であるはずの社会保険労務士の力を借りていないということです。
社労士会によるPRも盛んで一見着々と進んでいるかのように見える企業のマイナンバー取り扱いですが、社労士の関与率が3割である事実に鑑みるとまだ順調とは言い難いかもしれません。
中小企業としては税理士事務所にも早めに対応して欲しい!
税理士事務所としては忙しい時期ではありますが、年末調整から法定調書の作成、償却資産申告書の作成などで関与先とコミュニケーションをとる時期でもあります。現状でマイナンバーの収集を開始できてない税理士事務所では、マイナンバーを管理するシステムをきちんと選択した上で、システムに応じた安全管理措置を講じ、中小企業や個人事業主の不安を払拭するためにも、いつマイナンバーを収集するか計画を立て関与先に急ぎ案内することをお勧めします。
従業員がマイナンバーカード紛失するリスクなどを踏まえると早めにお世話になっている税理士事務所に相談する方が得策です。まだ税理士の先生から何も言われていないという場合でもこちらから話を振って収集作業を進めるよう働きかけましょう。