マイナンバー法は個人情報保護法と似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか?両者の違いを理解し、個人情報の取扱いを適切に行いましょう。
マイナンバー法と個人情報保護法の関係
個人情報保護法では、利用目的を特定する必要はあったが、特段事務の利用範囲に制限を設けていなかった。しかしながら、マイナンバー法では、利用範囲を明確に定め、厳しく利用制限しています。
利用目的には制限があることに留意して運用する必要があります。
特定個人情報も個人情報の一部なので、原則として個人情報保護法が適用されます。さらに特定個人情報は、マイナンバーによって名寄せなどが行われるリスクがあることから、個人情報保護法よりも厳しい保護措置を番号法で上乗せしています。また、番号法の保護措置は、個人情報保護法が適用されない小規模な事業者にも適用されます。
マイナンバーを含む個人情報を「特定個人情報」といいます。マイナンバーは個人情報を構成する要素の一部であるため、当然のことながら、個人情報保護法の影響を受けることになります。
法律の適用範囲
個人情報保護法では、過去6ヵ月以内のいずれの日においても個人データが5,000人を超えて取り扱っていない企業は適用除外でした。しかしながら、マイナンバー法は、個人事業主のような一人の会社であってもすべて例外なしに対象となります。
個人情報保護法では適用外だった小さな会社も、マイナンバー法では対象となりますので要注意です。
個人情報の利用範囲
マイナンバー法では、マイナンバーの利用範囲は、社会保障、税、災害対策に限定されており、事業者は、社会保障及び税に関する手続書類の作成事務を行う必要がある場合に限り、本人などにマイナンバーの提供を求めることが可能とされています。また、マイナンバー法では、従業員などから提供を受ける個人番号を含む特定個人情報を、法律で限定的に明記された場合を除き提供してはならないとされているため、事業者が特定個人情報を提供できるのは、社会保障、税及び災害対策に関する特定の事務のために従業員等の特定個人情報を行政機関等及び健康保険組合等に提供する場合等に限られます。
従業員のマイナンバーを事業者が利用できるのは、社会保障、税、災害対策に限定されています。他の用途に利用すると法律違反となりますので要注意です。
利用目的外の利用
個人情報保護法:本人の事前の同意があれば、利用目的の達成に必要な範囲を超えて利用が可能マイナンバー法:本人の事前の同意があっても、原則として利用目的の達成に必要な範囲を超えて利用はできない
本人の同意があっても、法律に定められた利用以外は一切不可となります。
個人情報の提供の制限
個人情報保護法では、本人の同意があれば個人データの第三者への提供が認められます(同法23条1項)。これに対して、特定個人情報については、第三者への提供が認められるのは番号法19条に列挙された場合に限られ、たとえ本人の同意があっても、また、子会社に対してであっても、第三者への提供は認められません。
本人の同意があっても個人情報の提供は認められません。
安全管理措置の義務
個人情報保護法では、生存者の情報について、安全管理を求められていましたが、マイナンバーは死亡者についても完全管理を義務付けられています。
死亡者の個人情報だからといって管理を放棄してよいわけではないことにご注意ください。
委託先の監督義務
個人番号関係事務又は個人番号利用事務の全部又は一部の委託をする者は、委託先において、番号法に基づき委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなければならない。
「必要かつ適切な監督」には、(1) 委託先の適切な選定、(2) 安全管理措置に関する委託契約の締結、(3) 委託先における特定個人情報の取扱状況の把握が含まれる。
個人情報保護法でも委託先の監督義務がありますが、より厳格な運用が求められています。
契約内容として、秘密保持義務、事業所内からの特定個人情報の持出しの禁止、特定個人情報の目的外利用の禁止、再委託における条件、漏洩事案等が発生した場合の委託先の責任、委託契約終了後の特定個人情報の返却又は廃棄、従業者に対する監督・教育、契約内容の遵守状況について報告を求める規定等を盛り込まなければならない。
委託先に加えて再委託先まで監督責任があることを明確に定めています。これに伴い、契約内容の見直しも必要になるかもしれません。
罰則
個人情報保護法では、命令違反や、虚偽の報告等に30万円以下の罰則を設けていましたが、マイナンバー法では、罰の対象事項の多くなり、かなり罰則も強化されています。
違反企業とならないためにも、人事部門や経理総務部門に限らず、全社的な研修・教育体制が必要ですね。