マイナンバー制度の利用範囲は、当初、社会保障と税、災害対策の3分野への適用に限定されているが、今後民間利用が拡大される。マイナンバー制度や個人情報保護法の改正は、民間企業にどのような機会や変化をもたらすのか。
マイナンバー制度に期待する企業
マイナンバー、民間企業へのチャンスは?
マイナンバー制度の利用範囲は、当初、社会保障と税、災害対策の3分野への適用に限定されているが、今後民間利用が拡大される。まず、準公的な領域である医療分野や、税との近接領域にある金融分野から利用が始まるだろう。個人番号カードには電子証明書が格納され、この証明書を使った公的個人認証サービスは民間企業にも開放される。これまで保険証や免許証を提示して行っていた本人確認も、個人番号カードを提示すれば済み、またネット上で電子証明書を使うこともできる。ネットショッピングをはじめ、さまざまな利用シーンが考えられるし、民間企業にとってビジネスチャンスがあるだろう。
スマホや保険証でも利用へ
そもそもマイナンバー制度は、頓挫してしまった住基ネット制度を根本からやり直して、すべての国民がメリットを享受できる番号制度のインフラを作ろうという狙いだ。それ故、特に総務省の意欲は高く、普及に向けてさまざまな仕掛けを行っていくようだ。例えば、スマートフォンに個人番号カードの機能を搭載し、行政手続きをスマホ経由で簡単に行える仕組みが検討されている。これは非常に重要で、マイナンバー利活用のベースにスマホがなるべきだろう。
民間市場は3兆円!?マイナンバー 企業メリットは?
マイナンバーを管理するために必要なシステムを構築するIT業界の市場だけで2兆円の経済効果、と主張する人がいます。これは行政、民間企業含め各種機関における直接的な投資を中心とした経済効果だと考えられます。この直接的な投資だけではなく、マイナンバー制度から派生したビジネスが考えられます。「個人番号カード」を利用したオンラインショッピング、さらには企業のマーケティング利用などが想定できます。
同じように共通番号制度を導入している外国の中には、個人情報に適した企業商品を紹介できる事例もあります。
こうしたマーケティング利用まで可能になると、経済効果は無限に広がりそうです。
「マイナポータル」にもビジネスチャンスがあります。
「マイナポータル」というweb上の個人サイトでは、あなたがこれまで支払った税金や社会保険料の確認などができるほか、行政機関から様々なサービスのお知らせが受けられる、またサイト上の「電子私書箱」には、保険会社からの「生命保険料控除証明書」や、金融機関からの「住宅ローン残高証明書」などが届けられることも検討されています。なお、なりすまし防止のため、「マイナポータル」を利用する時にも、「個人番号カード」に格納された電子証明書とパスワードを組み合わせて利用する、つまり「公的個人認証」を採用することにしています。
マイナンバー制度対応によって生まれるビジネスチャンスとは?
代表的なものは、企業が、従業員他からマイナンバーを正確に、安全に取得するサービス。アクセス制御や暗号化技術を用いてマイナンバーを安全に管理するサービス。税・社会保障関係の書類記載等を処理するサービスなどが挙げられます。民間企業は、一人でも従業員がいれば、マイナンバーの取得、保管、手続き、廃棄までを義務付けられます。421万社あると言われる日本の企業。これらほぼすべてに課せられる措置ですから、ビジネスチャンスの大きさも容易に想像できるものと思います。
マイナンバー一連の業務を自社内で取り組むためのソリューション、もしくはそれらを代行するソリューションは、マイナンバー制度対応のビジネスとして脚光を浴びています。
最低でも2兆円!? マイナンバー特需で、業界がすごいことに!
昨年あたりからシステム改修を請け負う情報処理会社や情報セキュリティ会社、業務ソフトウエア会社などに仕事が殺到。一説にはIT業界にもたらされる経済効果は2兆円以上(!)と言われています。しかも驚いたことに、IT業界に限定しなければ、その経済効果は数兆円とも!
他業界ではどうでしょう。どんなビジネスチャンスが?
すでに役所でのマイナンバーカードの交付や、各企業のマイナンバーの問い合わせ業務、研修など、IT業界以外でも様々な業務が生まれています。でもそれは、あくまでマイナンバー制度を遂行するにあたって発生したもの。マイナンバーそのものを使って、民間企業が新ビジネスを始めることができれば、業界の常識を変えるような画期的なビジネスが生まれる可能性があります
ヨーロッパでは、国が管理する個人情報をもとにダイレクトメールを送る!
個人情報先進国のヨーロッパでは、国が管理する個人情報をダイレクトメール送付に利用するという事例もあります。個人情報そのものを企業に渡すというわけではありませんが、ターゲットの年齢・性別などに合わせて、ダイレクトメールの発送を代行してくれるのです。たとえば、60歳に退職者向けの金融商品の案内を送るとか、子どもを産んだ女性におむつの広告を送るとか、子どもが6歳になったら親にランドセルの広告を送るとか。ターゲットを正確に絞り込めるので、無駄がありません
マイナンバーの民間のメリットとして、これまでにないチャンスがある
ITベンダー各社から企業向けのサービス/製品の発表や発売が相次いでいます。多数の従業員および扶養家族からマイナンバーを正確に効率的に、そして安全に取得するためのサービス、アクセス制御や暗号化技術を用いて従業員のマイナンバーのデータファイルを安全に管理する製品やソリューション、税・社会保障関係の調書・届け出などの書類に従業員などのマイナンバーを記載して出力するサービスなど
保有する個人情報の件数が5000件未満であれば規制の対象外になる現行の個人情報保護法と異なり、マイナンバー法では家族以外に従業員を一人でも雇っていれば規制の対象となるますのでターゲットはかなり広くなります。