マイナンバー導入で中小企業の倒産が増加!?「マイナンバー倒産」とは

マイナンバー制度が導入され、特に中小企業への負担が大きく増加する中、「マイナンバー倒産」の恐れが囁かれています。「マイナンバー倒産」はなぜ起きるのか、社会保険と情報セキュリテイの観点からまとめました。

えっ!?マイナンバーのせいで倒産する会社が出てくるかも…

 (35903)
マイナンバー制度は、行政の効率化や国民の利便性を目指していますがマイナンバー制度により、個人事業主や中小企業への負担は大きくなりかねません。今までの経費削減策や節税策が使えなくなり、場合によっては倒産や廃業に追い込まれる企業も多数出てくるのではないでしょうか?
日本消費者連盟の 大野和興共同代表は、消費税増税や社会保障費の負担増で厳しい経営を迫られている中小零細企業が、さらなる負担増で破綻する「マイナンバー倒産」の発生を危ぶむ。

なぜ起きる?「マイナンバー倒産」

前提として、マイナンバー制度では、個人だけでなく法人にも個別の番号が割り振られるようになるという事情があります。
実は、この制度は個人だけでなく、法人も対象としており、1法人に1つの法人番号が割り振られるのです。この制度により、法人の①社会保険関係や、②税務関係が、明らかになると言われています。
よって想定されるのが、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険等)に未加入となっている法人が、炙り出されること。

つまり、社会保険庁は社会保険未加入の法人を捕捉することになるでしょう。
これまで社会保険に未加入だった企業にも、ある日突然、調査が入り、強制加入が実施されることも、考えられます。

いわゆる「社会保険倒産」と呼ばれるものです。

社会保険未納・未加入の中小零細企業の数はどのくらいなのか

国税庁は、従業員の所得税を給与天引きで国に納めている法人事業所を約250万か所把握している。このうち厚生年金に加入しているのは約170万か所だけ。残る約80万の事業所は加入を逃れている可能性が高い。(2015年2月23日 読売新聞)

未加入の企業には法的措置による強制加入も

政府は厚生年金に入っていない中小零細企業など約80万社(事業所)を来年度から特定し加入させる方針だ。国税庁が保有する企業情報をもとに厚生年金に加入していない企業を調べ、日本年金機構が加入を求める。応じない場合は法的措置で強制加入させる。加入逃れを放置すれば、きちんと保険料を払っている企業や働く人の不満が強まり、年金への信頼が揺らぎかねないと判断した。
そもそも、マイナンバーは「消えた年金問題」を契機に実現にこぎつけたもの。それだけに、企業の社会保険加入は大きな目的の一つなのです。
マイナンバー導入の大きな目的の一つである「企業の社会保険加入逃れの追及」に向け、国税庁と日本年金機構が連携して、法的措置をもって強制加入させる方向ですでに動き出しています。

社会保険未納・未加入の場合のペナルティは?

 (35904)
マイナンバーにより社会保険未納・未加入が判明した場合、当該企業にはどのようなペナルティが課されるのでしょうか。

未加入の場合のペナルティ

未納のペナルティとして延滞金があります。
延滞金は本来の納付日に納付しなかった場合、督促状が届きます。
そして督促状の指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、延滞金が発生します。

未納の場合のペナルティ

未加入の場合のペナルティとして、追徴と罰金があります。
年金事務所の調査により未加入が発覚した事業所には、該当する者の社会保険料を2年間に遡って追徴されます。
例えば、社長1人(月50万)、従業員2人(月20万/人)の場合ですと、東京(平成27年度)の場合、
(137,220円×12か月+54,888円×2人×12か月)×2年=5,927,904円となります。

これを事業所と被保険者で折半し、支払をしなければなりません。

罰則は正当な理由が無く、下記の要件のいずれかに該当するとき、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金があります。(健康保険法第208条)

1. 被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者に届出せず、又は虚偽の届出をしたとき
2. 任意適用事業所取消の認可、被保険者資格の得喪の確認、標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額をいう。)の決定若しくは改定について被保険者又は被保険者であった者に通知しないとき
3. 保険料納付義務に違反して督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき
4. 保険料納付義務に違反して保険料を納付せず、健康保険印紙の受払及び現金納付に関する帳簿を備え付けず、その受払等の状況を保険者に報告せず、若しくは虚偽の報告をしたとき
5. 厚生労働大臣又は社会保険庁長官による被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する立入検査等に対して文書その他の物件の提出若しくは提示をせず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは立入検査等を拒み、妨げ、忌避したとき

「社会保険倒産」だけでなく、情報漏洩による倒産のリスクも

 (35914)
年金情報が流出した問題について、日本年金機構の水島理事長が「民間会社であれば自壊し潰れています」と語っていたことが報じられています(2015年7月31日 産経ニュース)。
民間企業が大規模な個人情報を流出したベネッセ事件では、各顧客へ500円の補償を支払うために、200億円の原資が用意されたといわれています。システムへの対応に投じた経費も相当額だと思われ、はかりしれない額の損失を被った事件でした。さらに、1,700人を超える人々による、一件55,000円の補償を求める集団訴訟にも発展しています。

企業にとって、顧客の個人情報が流出するということは、巨額の損害と信用の失墜、ひいては倒産のリスクを内包しているのです。

番号法では、個人情報保護法よりも罰則の種類が多く、法定刑も重くなっています。具体的には下の表のとおりです。(2014年7月回答)
マイナンバー社会保障・税番号制度(内閣官房ホームページQ&A) (35901)
マイナンバーは、個人情報の中でも、最も重要な情報のひとつとなるでしょう。すべての企業が、個社の努力でこのマイナンバーを管理していくことになります。大規模な会社であるほど、この管理リスクも大きくなります。永久に変更できないとされているマイナンバーがもしも流出してしまったら。いったいどれくらいの対応費用が発生するのでしょう。また、どのような対応をすればその責任がとれるのでしょうか。

万が一の流出事故を起こしてから、お詫びや補償に多額の経費をかけるのではなく、事が起こる前にセキュリティー対策に設備投資すべきであることは言うまでもありません。

中小企業経営者は、これから取り締まりが厳しくなるであろう社会保険加入にかかる負担だけでなく、情報セキュリティにかかる費用も見込んでおく必要があります。

保険料負担やセキュリティ関連費用の増加分をカバーするだけの余力がなければ、倒産や廃業の道を選択するほかない状況に陥ることも考えられます。そうならないよう、一刻も早く準備をして備えておきましょう。

あなたにオススメのコンテンツ



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする