災害利用に活用されるマイナンバー、本人確認はこれだけで本当に大丈夫?

災害が起こった際に迅速な対応を期待されているマイナンバーですが、企業が従業員に対して行うべきこととはどんなことなのか、本人確認を含め考えてみましょう。

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災害対策とは

被災者の生活再建支援のほか、被害者台帳の作成などに使われます。
またマイナンバーにより本人確認がスムーズになり、行政手続きが早くなるとされています。

さらに今後医療分野との提携が結ばれるので、被災中の病気管理や介護にも役立てられます。

2011年3月11日の東日本大震災では、多くの被災者が発生し、避難所も非常に広域にわたり分散していったが、分散してしまった各避難所では何が起こっていたのか。以下は、2013年12月5日開催の、新戦略推進専門調査会防災・減災分科会(第2回)資料3からの引用である。

・携帯電話などの通信手段が使えなくなり、被災者が避難所などで
 家族を探し回ったり、張り紙をして連絡を取ろうとした。
・自治体として組織的な情報の収集発信に時間を要した。
・避難所に多数の住民が避難し、食料調達など多種多様な業務が同時に発生し、
 当初から組織的に避難者の情報を収集することが難しかった。
これ以外にも、人の派遣や救護・救援物資が、本当に必要なところに、必要量が届かなかったり、逆に不要に多い物資が配分されてしまったりといった非効率な事態も発生してしまった。

災害というのは自然現象であり、発生自体を防ぐことはできませんが、発生直後の様々な対応において行政面での課題が浮き彫りになったと言えます。
そもそも安否情報を把握するということが非常に困難でした。各種情報は市区町村ごとに管理されているものが多く、市区町村間での連携は困難なものでした。
また、災害時に着の身着のままで避難した人は多く運転免許証等の本人を証明できる書類や預金通帳・キャッシュカード等が津波で流されてしまい、
身元証明ができずに銀行預金を引き出すことが困難になるといった問題も発生しました。

激甚災害時に企業が特別に認められていること

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また、例外的な利用について、番号法は個人情報保護法に比べ、より限定的に定めている。事業者の場合、利用目的を超えて個人番号を利用することができるのは、①激甚災害が発生したとき等に金融機関が金銭の支払をするために個人番号を利用する場合及び②人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要がある場合である。→2

(関係条文)

・番号法 第9条、第29条第3項、第32条

・個人情報保護法 第16条

2 例外的な取扱いができる場合

番号法では、次に掲げる場合に、例外的に利用目的を超えた個人番号の利用を認めている。

a 金融機関が激甚災害時等に金銭の支払を行う場合(番号法第9条第4項、第29条第3項により読み替えて適用される個人情報保護法第16条第3項第1号、番号法第32条、番号法施行令(注)第10条)

銀行等の預金取扱金融機関等が、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)第2条第1項の激甚災害が発生したとき等に、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号を顧客に対する金銭の支払を行うという目的のために、顧客の預金情報等の検索に利用することができる。

(注)番号法施行令とは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令」(平成26年政令第155号)をいう(以下同じ。)。

b 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難である場合(番号法第29条第3項により読み替えて適用される個人情報保護法第16条第3項第2号、番号法第32条)

人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるときは、支払調書の作成等の個人番号関係事務を処理する目的で保有している個人番号について、人の生命、身体又は財産を保護するために利用することができる。

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企業は従業員のマイナンバーに対して通常の利用としては認められていませんが、東日本大震災のような激甚災害においては従業員の生死や財産の保護等の場合に限り、例外として認められています。

もちろん災害等以外での使用は硬く禁じられています。

人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において本人の同意があり又は本人の同意を得ることが困難であるとき、及び第六条第四項の規定に基づく場合を除き、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて、特定個人情報を取り扱ってはならない。

災害時の本人確認は?

個人番号カードには顔写真が載りますが、当然マイナンバー制度では顔写真情報をシステム上で管理することが可能になります。
災害後に個人番号カードを含む身元証明が可能な書類を持っていなかったとしても、マイナンバーや基本情報を伝えて顔写真と照合することによって本人確認することが可能になると考えられます。
マイナンバーカードを所持している場合は、マイナンバーカード以外の顔写真つきの身分証が必要がありません。

マイナンバーの通知カードのみを所持している場合は、顔写真つきの身分証明がマイナンバーの番号以外にも必要になってくるということですね。

通知カードだけの場合、他の身分証明書が必要

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マイナンバーカードがない人は運転免許証やパスポート、顔写真つきの住基ネットカード、学生証等など、『顔写真つきの身分証』が通知カードの他に必要になってきます。

『顔写真つきの身分証がない』場合の本人確認の書類は、社会保険料や公共料金の領収書、戸籍謄本など本人しかもっていない身分証を幾つか合わせて、通知カードと共に本人確認がなされるようです。

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マイナンバーカードは災害時に有利?

マイナンバーを覚える必要もなく、顔写真つきの個人情報がついたマイナンバーがあれば本人確認はスムーズに進むでしょう。

そもそも災害時にマイナンバーカードを運よく所持できなくても、顔写真つきのマイナンバーカードを発行しておけば顔写真のデータが管轄の市町村役場で保持されるので、マイナンバーカードを作っていない人に比べれば本人確認が迅速になるかも。

現在は無料で発行してくれるマイナンバーカードですが、再発行時には手数料千円がかかるそうです。今は発行手数料が無料ですが、いつから有料になるかは不明です……。

死者のマイナンバーの取り扱いは、番号法の制限を受けない

Q17-5死亡保険金の支払に伴って提出する支払調書に記載する保険契約者の個人番号について、保険契約者が死亡しているケースが想定されますが、その場合どのような対応が適切ですか。
A17-5保険契約者が死亡している場合であっても、支払調書には保険契約者の個人番号を記載することとなっています。死者の個人番号については番号法上の提供制限は及びませんので、保険契約者の個人番号を知っている者に適宜提供を求めることとなります。

災害時でのマイナンバー利用への理解が求められる

個人情報は各地方公共団体の個人情報保護条例において情報の取得が厳しく制限されておりマイナンバーも基本的には同じである。人身や財産を守るためであったとしても、“緊急時”でないと入手することが困難である。災害発生時の事務手続きの為に、マイナンバーの使用が可能となるが、やはり、個人情報漏洩に対する住民の不安は大きい。そのためには、災害発生という緊急の状況下において、マイナンバーが、被災者の方々への迅速・適確・効率的な支援、生活再建に大きな役割を担うということを、日頃より、行政から住民へ、上手に丁寧に説明を行い、啓発し、理解を深めていくこともとても重要なことである。

災害が起こった時の対応の流れ

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災害時の利用で大切になる本人確認、もしもの時に事業者が求められる対応を含め、点検しておくことが大切かもしれませんね。

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