マイナンバー制度の対応に追われる中で、他の企業がどの程度対応しているのか気になる方も多いかと思います。労務業研究所の調査内容を見て実務面での課題認識や事務担当者の人数、研修の実施具合、対応にかかる初期費用など他企業の対応具合をチェックしましょう。
労務行政研究所とは?
当所は昭和5年の創立以来、人事管理、賃金、雇用管理から、法令、判例解説、独自の企業実態調査データまで、企業・労働組合の求める情報を、『労政時報』を中心とした出版物を通して発信し続けてきました。近年は情報媒体やワーキングスタイルの多様化に対応し、ビジネスシーンに最適な形態での情報提供に力を入れています
労務や人事に関する様々な調査をして情報を発信している組織のようです。2015年11月に行った企業のマイナンバー対応状況についての調査を公開しているので見て行きましょう。
企業が認識する実務面での課題は?
via pbs.twimg.com
実務面での課題認識では、50.4%が「従業員やその家族のマイナンバー収集・保管・廃棄」が課題と回答。「組織的・人的・物理的・技術的などの安全管理措置(41.2%)」「事務手続きの変更に伴う業務量の増大(40.0%)」と続いた。
個人番号は従業員退社7年後まで保管しなければいけません!
退社した従業員等であっても、扶養控除等申告書や退職所得の受給に関する申告書等については、7年間の保存義務が課されていることから、そこに記載された個人番号については、その間は保管しなければなりません。また、税法等で保存期間が定められていない書類に記載された個人番号や、作成した特定個人情報ファイルに記録された個人番号については、個人番号関係事務を処理するのに必要がなくなった場合には、できるだけ速やかに廃棄又は削除する必要があります。
企業は厳重な安全管理措置を実施しなければいけません
マイナンバー制度では、個人情報の漏えいに対して厳しい罰則があるため、企業は厳格な管理体制を構築する必要がある。
それについては内閣府・特定個人情報保護委員会が「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」を発行し、マイナンバーを取り扱うすべての企業が特定個人情報に対して「安全管理措置」を講じなければならないとしている。
同ガイドには、安全管理措置として「基本方針の策定」「取扱規定などの策定」「組織的安全管理措置」「人的安全管理措置」「物理的安全管理措置」「技術的安全管理措置」が示されている。
多くの企業が従業員のマイナンバー取り扱いと安全管理措置を重い課題として感じているようです。
事務担当者の人数は?
マイナンバーを取り扱う事務担当者は、1社平均8人。規模別では従業員1000人以上が15人、300人から999人が5人と、規模の大きさに比例。
マイナンバーを取り扱う事務担当者は明確にしておかなければいけません!
A 個人番号を取り扱う事務の範囲の明確化
事業者は、個人番号関係事務又は個人番号利用事務の範囲を明確にして
おかなければならない。→ガイドライン第4-1-(1) A参照
B 特定個人情報等の範囲の明確化
事業者は、Aで明確化した事務において取り扱う特定個人情報等の範囲 を明確にしておかなければならない(注)。
(注)特定個人情報等の範囲を明確にするとは、事務において使用される個人番号及 び個人番号と関連付けて管理される個人情報(氏名、生年月日等)の範囲を明確 にすることをいう。
C 事務取扱担当者の明確化
事業者は、Aで明確化した事務に従事する事務取扱担当者を明確にして おかなければならない。
企業は個人番号を取り扱う事務の範囲を明確にし、その事務を行う担当者を明確にしておかなければいけません。規模の大きい企業ほど事務の量と事務取扱担当者が多くなる傾向があるため、早めに決めておきましょう。
研修の実施状況は?9割弱が実施する!
マイナンバーの適正な取り扱いのために、事業者は、1事務取扱担当者の監督、2事務取扱担当者の教育の措置を 講じなければならない。教育・研修状況について見ると、事務取扱担当者に教育・研修を「実施した」企業は50.6%、「実 施する予定」は38.6%となっている。この両者を合計すると89.2%に上り、9割弱の企業で教育を“実施する”としている [図表4]。また、マイナンバーの取り扱いに際しては、事務取扱担当者だけでなく、従業員の正確な理解とルールの遵守 が重要となる。従業員に教育・研修を「実施した」企業は35.9%、「実施する予定」の企業は26.0%で、両者を合計すると 61.9%となる。6割超の企業が従業員への教育を行うことが分かった。
どれだけシステムを対応しても担当者の教育が不十分では意味がありません。マイナンバーの管理についてきちんと社内で周知徹底しましょう。
マイナンバー対応にかかった初期費用は?10万円未満が最多!
マイナンバー制度への対応に要した初 期費用の総額(新たに人材を採用したなど の人員面の費用は除く)を尋ねたところ、 「10万円未満」が25.0%と最も割合が高く、 以下、「10万~50万円未満」20.2%、「50 万~100万円未満」16.6%と続く。全体の 61.8%が100万円未満となっている[図表 5]。
マイナンバー制度への対応は高価なソフトを買えばいいというものでもないので工夫して対応していきましょう。