2016年の1月から本格的に導入されたマイナンバー制度、しかし、企業のマイナンバー制度への対応はあまり進んでいないのが現状です。まずは、制度の目的やメリットについて理解することが必要不可欠です。
企業のマイナンバー管理の重要性
マイナンバーには様々な個人情報が紐づけられているため、徹底した安全管理対策が求められます。
企業が行政機関等に提出する書類はたくさんありますが、マイナンバー制度がスタートすると、税務関係や社会保障関係の書類には必ず当該従業員のマイナンバーを記載しなければなりません。また、従業員以外についても、株主への配当や個人事業主に外注した際の支払調書などにもマイナンバーの記載が必要です。つまり、お金のやりとりがあった相手のマイナンバーは原則的に全部取得しなければいけないということです。
これだけ多くのマイナンバーを取り扱うからには、今後は企業側の管理方法の見直しを問われるようになるでしょう
マイナンバーの管理は慎重に
マイナンバーの管理を怠った場合には、罰則が適用となります。個人情報保護法では、委員会からの命令を受けてからその命令に違反した場合に罰則が適用されていましたが、 マイナンバー法では、特段の指示なく、行為を行ったことに対しての罰則が適用となります。
また、個人情報保護法では6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金でしたが、マイナンバー法では4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科と、非常に厳しい罰則となっています。 そしてそれ以上に、「管理が行き届いていない」「情報漏えいした会社」ということで、これまで築き上げてきた信頼が崩れ、社会的制裁を受けることになりかねません。事前にしっかり準備しましょう。
マイナンバーによる公的個人認証
従来の公的個人認証は住基カードなどで利用され、行政機関などでの手続きに限られていました。
個人番号カードでは、総務大臣の認定を受けることで民間企業も公的個人認証の利用が可能です。
個人番号カードが提供する公的個人認証サービスは、オンラインで個人をほぼ一意に特定できる点で、極めて強力なものだ。利用者にとっては、認証に使われる様々なもの、例えば印章や運転免許証、保険証などを持ち歩かずに済むようになる。企業にとっては、顧客情報の登録や更新にかかるコストを大幅に削減できる。
企業にとっても効果大の法人番号
法人番号は個人番号と違って、民間でのやり取りでも自由に利用することができます。
法人番号って何?
法人番号は、株式会社などの法人等に指定される13桁の番号で、個人番号(マイナンバー)と異なり、原則として公表され、どなたでも自由に利用できます。法人番号は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤であり、番号法の基本理念として、次の4つの目的があります。
1つ目は、法人その他の団体に関する情報管理の効率化を図り、法人情報の授受、照合にかかるコストを削減し、行政運営の効率化を図ること。(行政の効率化)
2つ目は、行政機関間での情報連携を図り、添付書類の削減など、各種申請等の手続を簡素化することで、申請者側の事務負担を軽減すること。(国民の利便性の向上)
3つ目は、法人その他の団体に関する情報の共有により、社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持を可能とすること。(公平・公正な社会の実現)
4つ目は、法人番号特有の目的として、法人番号の利用範囲に制限がないことから、民間による利活用を促進することにより、番号を活用した新たな価値の創出が期待されること。(新たな価値の創出)
企業にとってのメリットとは?
企業においては、これまで社内の各セクション単位で取引先企業の情報管理をしていることが多かったと思います。それが、法人番号が一元化されることでその効率化が図れます。
民間企業は、組織が大きくなればなるほど各部署で管理する取引先情報も膨大となり、そのため、部署ごとに異なるコードを用いて取引先情報を管理しているケースが多いでしょう。
例えば、ある企業で取引先である「株式会社A」の情報を各部署で管理しているというケースを想定した場合です。
株式会社Aの情報を、総務部では旧名称、経理部では部署名付き、営業部は旧住所で、というように使用目的ごとに分け、それぞれ別のコードを用いて情報管理を行っているとします。
その状態で「株式会社A」の情報を集約する必要が生じた場合、名称や所在地だけで名寄せをしなくてはならないので手間がかかってしまいます。
法人番号の導入で、各部署が管理している取引先情報に「株式会社A」の法人番号を追加、情報集約の効率化を図ることが可能となります。
法人番号を各部署共通の管理コードとすることで、国税庁から提供される最新の名称・所在地情報を活用して、各部署の保有する取引先情報の名称・所在地情報の更新を行うことが容易になります。
したがって、
•A社が顧客である場合、取引情報の集約化により、A社のニーズに即したきめ細やかな営業活動等を実施することが可能になる
•A社が調達先である場合、取引情報の集約化により、各部署からA社に対する調達を一本化することでコスト削減が期待できるというようなメリットが生じるのです。
マイナポータルとは
マイナポータルの利用により、個人情報が悪用されていないか確認することができるわけです。
マイナンバーを守る制度ともいえるのではないでしょうか。
民間企業にとっても新たなビジネスチャンスを生むのではという期待が高まっているようです。
マイナポータルとは、別名「情報提供等記録開示システム」といい、インターネット上で個人情報のやりとりの記録が確認できるようになります。平成29年1月から利用できる予定となっています。ちなみに、以前は「マイ・ポータル制度」と呼ばれていましたが、正式名称が2015年4月に「マイナポータル」に決まりました。具体的には以下3つのことができます。
・自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したかの確認
・行政機関などが持っている自分の個人情報の内容の確認
・行政機関などから提供される、一人ひとりに合った行政サービスなどの確認また、パソコンがない方等でもマイナポータルを利用できるよう、公的機関への端末設置を予定となっています。
心配されるセキュリティ面についてですが、マイナポータルでは、なりすましにより特定個人情報を詐取されることのないように、利用の際は、個人番号カードのICチップに搭載される公的個人認証を用いたログイン方法を採用する予定となっています。
民間企業にとっての可能性
民間企業もアプリを開発して提供するなど、オンラインサービス提供の場として利用することができます。利用者は自分で自由にポータルサイトの内容をカスタマイズできるようにする予定ですので、便利なアプリを事業者が開発し、利用促進を図れば、サービスの充実を図ることもできます。民間活用という点では、個人番号カードとマイナポータルは、民間の創意工夫により、様々な利用拡大が見込まれます。
まとめ
初めて効率よく情報をやりとりできる社会の基盤ができるわけですが、
誰もがITの恩恵を受けるには、社会で安全に使える環境が整わなくてはなりません。
企業でのマイナンバー制度への対応準備が遅れているのは、
マイナンバーの取り扱い方法や制度の仕組みを理解している人材の不足だけでなく、
そもそも制度の目的やメリットが理解されていないことにあるのです。
したがって、企業側がマイナンバー制度を正しく理解し、
セキュリティやプライバシー保護の手段の構築に積極的に取り組んでいく姿勢が不可欠でしょう。