国民一人一人に「番号(マイナンバー)」を割り振る国の新しい制度のマイナンバー制度。民間企業にとっては社員全員のマイナンバーを管理しなくてはいけなくなりました。マイナンバー制度導入は民間企業にとってどのように影響があるのか調べてみました。
マイナンバー制度とはどんな制度なのでしょうか
国民一人ひとりに番号を割り振り、社会保障や納税に関する情報を一元的に管理する共通番号制度。年金や納税などの個人情報を照合できるようにし、行政手続きの効率化や公正な給付と負担の実現などを目的とする。一人ひとりに割り振る12桁の個人番号を「マイナンバー」と呼び、「マイナンバー法」に基づき、2016年1月から番号の利用を開始する。
マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤であり、期待される効果としては、大きく3つあげられます。1つめは、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。(公平・公正な社会の実現)
2つめは、添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。(国民の利便性の向上)
3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)
民間企業にとってマイナンバー制度とは?
●民間企業でもマイナンバーの取扱いが必要になります。
民間企業は、従業員の健康保険や厚生年金の加入手続を行ったり、従業員の給料から源泉徴収して税金を納めたりしています。また、証券会社や保険会社等の金融機関でも、利金・配当金・保険金等の税務処理を行っています。平成28年1月以降(厚生年金、健康保険は平成29年1月以降) は、これらの手続を行うためにマイナンバーが必要となります。そのため、企業や団体にお勤めの方や金融機関とお取引がある方は、勤務先や金融機関にご本人やご家族のマイナンバーを提示する必要があります。
民間企業が外部の方に講演や原稿の執筆を依頼し、報酬を支払う場合、報酬から税金の源泉徴収をしなければいけません。そのため、こうした外部の方からもマイナンバーを提供してもらう必要があります。
マイナンバー制度の裏づけとなる法律では、税関連や社会保険などの各種書類、
源泉徴収票や保険料控除申告書等に番号(マイナンバー)を明記することが義務づけられています。源泉徴収表などでは扶養家族(扶養親族)の番号も帳票に記載するため、
企業における従業員本人の番号だけでなく
全従業員の家族の番号についての収集と管理も必要となります。この場合の全従業員とは、正社員だけでなく契約社員、パート、アルバイトなど、
自社が直接給与を支払っている従業員を指します。
給与・厚生事務の対象である全従業員に対しては自社での対応が必要となります。ただし、派遣社員に関しては、派遣元が給与厚生業務を行うため、自社での対応は不要です。
マイナンバー制度導入で民間企業がしなくていけない事は?
マイナンバー制度の導入に伴い、2015年10月には実際のマイナンバー利用に先駆けて「マイナンバー法」が施行されます。マイナンバー法には、これまで個人情報を管理していた「個人情報保護法」とは異なる点があるため注意が必要です。人事総務担当者はマイナンバー導入における注意点を十分に把握し、全社員に周知してください。
マイナンバーは「人事労務」「給与会計」などの業務に深く関わり、
企業から税務署やハローワークなど、行政機関に提出する「社会保障・税」分野における書類には
全てマイナンバーや法人番号の記載が義務付けられます。企業は、2016年1月以降で行政に書類を提出する業務が発生する以前に、
マイナンバーをしかるべき方法で社員から入手する必要があります。
マイナンバーを従業員から取得する際には、本人の実在性の確認と個人番号の真正性の確認のため、
身分証明書の提示、もしくは添付が必要となります。
帳票の利用や情報セキュリティに関してのルールが変更されると、
業務を円滑に進めるために社員に対してそれらの変更点を周知徹底しなければなりません。帳票を直接扱う部門だけならばまだしも、
マイナンバーは給与を受け取っている全従業員が関わる制度になるので
遠隔地にある支店や営業所の社員にも制度に関する教育が必要となります。
まず、民間事業者はマイナンバー制度について理解を深めなければいけません。その上で、大事な個人情報を取り扱うためのルールを決める必要があります。
具体的には、
マイナンバーを取り扱う対象が何であるか明確にすること
実務担当者を明確にし、それ以外の人間に扱わせないよう徹底すること
従業員に対しマイナンバー提供の必要を通知すること
が求められます。
制度導入で民間企業に与える影響とは
マイナンバーの導入に伴い、企業は社内のシステムを変更する必要があります。例えば、マイナンバーは社会保障や税に関する分野で利用するため、既存の給与システムの変更が求められます。
これまでエクセルなどを使用して給与業務を行っていた場合、情報の持ち出しが容易であるため危険です。このような状態でマイナンバーが漏えいしてしまうと、マイナンバー法の「技術安全管理措置」を怠ったと見なされ、罰せられる恐れがあります。そのため、エクセルではなく別の方法に置き換えるなど、社内のシステムを変更することが必要です。
つまり、日本国で登記している企業はマイナンバーを利用する業務が発生するまでに・利用しているシステムや帳票類などのフォーマットを変更し、
・従業員とその扶養家族の個人番号、取引先の法人番号を入手、
・また番号の取得と保管に関するセキュリティの対策を事前に行い、
・さらには全社員にその変更とマイナンバーの取り扱いに関しての周知徹底を行ったうえで、それらの運用管理を継続して行う義務を課せられているのです。
通常業務に支障が出る可能性マイナンバーの開始は平成28年1月です。もう1年も猶予がない中で多くの対応をしなければいけないわけですから、そこに割かれる時間やコストは小さくありません。通常業務に支障が出ることもあるかもしれません。
システム整備のために本業が疎かになるのでは本末転倒ですが、対応は義務ですから、徹底して行わなければいけません。情報が漏洩した場合には重い罰則がある
法律によって一方的に事務が増やされたにもかかわらず、それらの情報を漏洩した際には重い罰則規定が待っています。企業側からするとリスクばかりの仕組みだといえるかもしれません。
マイナンバー法 ~事業者に関わる罰則規定~
1. 正当な理由なく特定個人情報ファイルを提供した場合
4年以下の懲役か200万円以下の罰金又はこれらの併科2. 不正利益目的で個人番号を提供・盗用・漏えいした場合
3年以下の懲役か150万円以下の罰金又はこれらの併科3. 人をあざむく、暴行、施設への侵入など不正行為で個人番号を取得した場合
3年以下の懲役又は150万円以下の罰金4. 偽りなどの不正手段により個人番号カードを取得した場合
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
帳票を扱う総務・経理・人事だけはでなく、システム・コンプライアンスに関わる部署など、他部門にわたり幅広く企業全体に影響が及ぶことが想定されます。
本年(H18)1月以降、提出書類がマイナンバーを記載する新書式に変わっていますので、決算期に慌てて書類を作成する事にならない為にも税理士、社労士などに早めに相談することをおすすめします。