相続税増税を受け、節税を意識し始めた人も多い事でしょう。どうせなら財産を隠してしまいたい、と考える人もいるかもしれません。でもマイナンバー制度になってしまうと、ちょっとそういう訳にはいかなくなるかも。
マイナンバー制度と相続税
相続税の申告にもマイナンバーが必要
平成28年1月1日以降の相続、または遺贈によって取得した財産を申告する際は、申告書にマイナンバーを記載する必要があります。財産の取得者が個人の場合は個人番号を、株式会社や社団・財団などの場合は法人場号を使うんですが、ここで注意点が1つ。被相続人(亡くなった人)のマイナンバーも記載しなければいけません。
本来、マイナンバーというものは、第三者に容易に教えるべきものではありません。親族であっても同様です。
マイナンバー制度|相続税や贈与税で来年以降、順次実施
相続税の申告にマイナンバーを使うことは、次のように予定されています。
記載対象:平成28年1月1日以降の相続
→ 申告期限としては、平成28年11月1日以降の分
(期限より早い提出はできるので、来年夏以降使われだすでしょう。)贈与税の申告では、平成28年1月1日以降の贈与が対象となりますので、平成29年2月1日以降に提出する申告書で使われ始めます。
そして、マイナンバーが記載された申告書を税務署に提出する際は、厳格な本人確認が必要とされます。納税者本人が税務署を訪問して申告書を提出する場合、例えば、「通知カード」と運転免許証、あるいは「個人番号カード」(平成28年1月以降、市町村が希望者に対して作成)を窓口で提示することになります。
相続税の申告書には、マイナンバーの記載+添付書類が必要
相続により財産を取得するのが個人の場合、本人確認を行うために、申告書にマイナンバーを記載した上で、さらに本人確認のための書類を添付する必要があります。下記のいずれかを添付することになっています。
納税者本人(財産を取得した人)の個人番号カードの写し
納税者本人(財産を取得した人)の通知カードまたは住民票(個人番号付き)の写し+免許証などの写真付き身分証明書の写しなお、被相続人の本人確認書類は必要ありません。
将来的には相続税の申告自体がなくなるのでは?
相続税はその方が亡くなったときに持っていた財産の合計額と、その家族の状況等がわかれば原則として計算できてしまいます。今は相続人等が税理士等に頼んで計算し、税額がわかる相続税。
ですが、不動産の保有状況や預金口座、証券口座等、資産にマイナンバーが付されるようになれば、もしかしたら、税務署のほうから、「あなたの相続税はいくらですよ」なんていう通知が来る日も訪れるのかもしれませんね。
財産隠しへの取り締まりが厳しくなる「マイナンバー制度導入」
相続税の計算過程では、相続開始からさかのぼって3年以内の贈与があれば、遺産額に加算しなければならない。余命いくばくもない親の預貯金を子供が分配してしまうケースを想定しているのだ。しかし、日本の税は自己申告制が基本。当事者たちが加算しなければ、税務署が人手のかかる調査をしなければわからない。というのが、これまでの話。残念ながら、こうした“財産隠し”への取り締まりは、これから厳しくなる。マイナンバー制度が導入されるためだ。
情報を戦略的に活用する必要がある
税務署はこれまで、個人所有の不動産については名寄せ(誰が何を所有しているか)管理ができているが、金融資産は把握できていなかった。それが可能になる。この制度に基づく税務調査では、親の預貯金が親族の誰の口座にいつ送金されたかなど、瞬時に把握できるようになるだろう。こうした時代の相続対策は、情報を戦略的に活用する必要がある。例えば、前述の3年以内の贈与を加算しなければならない者は、相続人に特定されている。したがって、相続人でない孫に贈与した場合は、その対象外だ(孫が、養子や生命保険の受取人の場合は、加算対象となる)。
しかし、こうした策を弄さなくても、親が元気なうちに贈与しておけば期限の心配は不要。早期に相続対策に着手することも、戦略のひとつと考えたい。
マイナンバーで戸籍が不要に!?
マイナンバー適用で、日本に住む全ての人の社会保障と税金に関する情報が共通の番号で管理されるようになります。これは戸籍にも導入される予定で、戸籍もマイナンバーで紐づけば、相続の際に大変な出生から死亡までの連続戸籍取得や除籍謄本の取得等の事務手続き負担が大幅に軽減されます。
特に相続の場合、財産の名義変更や各種手続きで戸籍の提示を求められる機会が多く、相続人が相続開始後に大量の戸籍を費用をかけて収集しなければならないという煩雑さがあった。
マイナンバー制度の導入によって、こうした相続における事務負担が大きく軽減されることが期待できる。