企業側は、従業員の情報を収集し、管理する必要があります。マイナンバーが始まることにより、不正受給や脱税などを見逃すことなく、公正・公平な社会を実現することになります。ここでは企業側のマイナンバーの事前収集について簡単に説明します。
民間事業者にも影響はあります
社会保障や税金の手続きは企業が代行している通常、会社員には確定申告の義務がありません。これは、企業が従業員のかわりに社会保障手続きや源泉徴収を行っているからです。
ということは、マイナンバー制度がスタートすると、企業はこれらの手続きをする際に従業員のマイナンバーを記入する必要が出てくるため、マイナンバーの収集が必要になるというわけです。
確定申告とは?
税金には所得税・消費税・固定資産税等さまざまな種類がありますが、私たちにはこれらを納付する義務があります。この中で、所得税の確定申告については毎年1月1日から12月31日までに得たすべての所得を計算し、申告・納税しなければなりません。この手続きのことを確定申告といいます。確定申告では1年間に得た所得を計算し、納税額を確定させますが、あらかじめ源泉徴収という形で税金を徴収されている場合や、予定納税という形で税金を前払いしている場合もあります。したがって、確定申告は税金を計算し払った税金との精算の手続きという意味合いもあります。確定申告をしなければならないのはどのような人でしょうか? まず、個人事業主は確定申告が必要というのが一般的でしょう。しかし、給与所得者、いわゆるサラリーマンであっても確定申告しなければならないケースがたくさんあります。
通常サラリーマンについては会社が各社員の所得税の額を計算し、あらかじめ天引きするしくみになっています。ただし、完全に確定した金額である所得税を計算することは不可能なので、概算で給与から控除し、その精算を年末調整で行っています。
つまりサラリーマンは、年末調整をすることによって一年間の所得と税額が確定するわけです。ただ、年末調整ではできない控除の適用を受けるためには確定申告をしなければなりません。年末調整ではできない控除を受けるため、確定申告をすることによって、納めすぎた所得税を返してもらうことができるのです。
まず組織体制やスケジュールの検討をしよう
6つの導入チェックリスト決めよう!
1 マイナンバーを扱う担当者を決めましょう。集めよう!
2 マイナンバーを従業員から取得する際は、
利用目的を伝え、番号の確認と身元の確認をしましょう。適切に管理しよう!
3 マイナンバーが記載された書類は、
カギがかかる棚や引き出しに保管しましょう。
4 ウィルス対策ソフトを最新版にするなど、
セキュリティ対策を行いましょう。
5 退職や契約終了で従業員のマイナンバーが必要なくなったら、
確実に廃棄しましょう。理解しよう!
6 従業員にマイナンバー制度周知のための研修や勉強会を行いましょう。
そして、計画立てて作業を進めていき、慌てることがないよう準備しておくことが大事です。
本人確認から始まる
会社は、税や社会保障関係の事務を行うために、本人等からマイナンバーの提供を受けることになりますが、その際に、会社は必ず本人確認をしなければなりません。いわゆる「成りすまし」を防ぐためにも厳格な本人確認が求められます。本人確認では、2つのことを確認することになります。一つは、正しい番号であることの確認、つまり「番号確認」です。もう一つは、正しい番号の持ち主であることの確認、つまり「身元確認」です。以上の2つの確認がワンセットになって「本人確認」となります。
番号確認と身元確認のための確認書類については、番号法施行規則等により定められています。顔写真入りの「個人番号カード」であれば、個人番号カード1枚で番号確認と身元確認の両方を確認できます。紙製の「通知カード」や「マイナンバー付きの住民票」により番号確認する場合は、「運転免許証」や「パスポート」等による身元確認でワンセットの本人確認となります。
また、従業員の扶養親族のマイナンバーの記載が必要な書類があります。例えば「扶養控除等申告書」「国民年金第3号被保険者関係届」等ですが、書類により対応方法が異なりますので注意が必要です。
「扶養控除等申告書」については、会社への提出義務者は従業員で、その扶養親族のマイナンバーの本人確認も従業員が行うことになりますので、会社は扶養親族の本人確認を行う必要はなく、従業員についての本人確認を行えばよいことになります。
これに対し、「国民年金第3号被保険者関係届」については、会社への提出義務者は扶養親族であることから、会社が扶養親族の本人確認をする必要があります。しかしながら、会社が扶養親族に直接本人確認するのは大変ですので、実務上は、扶養親族の代理人として従業員がマイナンバーを会社に提出する方法があります。この方法の場合、会社は「代理権確認」「代理人の身元確認」「本人の番号確認」の3つの確認が必要になります。
マイナンバーの提出を拒否されたら?
マイナンバーは個人の知られたくない情報まで調べられてしまうのでは…という恐れから、収集を拒否されてしまうことも考えられます。
従業員からマイナンバーの提出を拒否された場合は「法令で定められた義務」であることを告知し、提供を求めます。
それでも拒否された場合には、書類の提出先機関の指示に従うことになります(具体的には、どのように従業員にマイナンバーの提示の説明をしたかの報告書をあげるようになる予定です)
ただマイナンバーは、番号を知っているだけでは詳しい個人情報はわからないことになっています。
2017 年1月からはインターネットで閲覧(マイナポータル)が始まりますが、マイナポータルを利用する際は、個人番号カード(2015年10月に届く通知カード とは別物です)に格納された電子情報とパスワードを組み合わせて確認する公的個人認証を採用し、マイナンバーを使用しない仕組みが考えられているようで す。
ですから、マイナンバーを知っているだけで全ての情報が知られてしまうわけではなく、その点を従業員に説明すると良いでしょう。
しかし、提出の必要性を訴え、理解してもらう必要があります。
そのためにも丁寧な説明が、大切です。
従業員への告知
利用目的の通知・公表
マイナンバーを利用するときは、利用目的を本人に通知、または公表しなければなりません。このとき、複数の利用目的をまとめて明らかにすることは可能ですが、利用目的を超えて利用することは認められず、利用目的を後から追加することもできません。
ただし、当初の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲内で利用目的を変更することは、本人への通知等を条件として認められます。
たとえば、雇用契約に基づく税務事務を利用目的として従業員のマイナンバーを取得した場合、その従業員が会社の株主であったとしても、配当の支払いは雇用契約と関連するものではないので、配当金の支払調書作成事務に利用しようとするときは、あらためてマイナンバーを取得する手続きが必要です。しかし、健康保険等の社会保険関係事務にマイナンバーを利用することは、社会保険関係の事務が雇用契約に基づくものですから、本人への通知により利用目的の変更として認められます。
保管期限と廃棄
番号法第19条に限定的に定められた場合を除いて、他人のマイナンバーを収集または保管することはできません。一般的な企業においては、「個人番号関係事務」を処理するために必要がある場合に限り、従業員等のマイナンバーを収集・保管することができます。特に留意すべき点は、マイナンバーを利用して行う事務を処理する必要がなくなった場合で、書類の法定保存期間を経過した場合には、マイナンバーをできるだけ速やかに廃棄または削除しなければならない、とされている点です。
例えば、扶養控除等申告書の法定保存期間は7年ですが、この法定保存期間の7年を経過した場合には、マイナンバーを復元できない手段でできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。あるいは、マイナンバー部分を復元できないようにマスキングまたは削除した上で、当該書類の保管を続けるという方法もあります。
事務処理の必要性と法定保存期間を踏まえて、マイナンバーを廃棄又は削除する時期を決めて管理しましょう。また、廃棄や削除の具体的な方法についても、実務の手順として決めておきましょう。削除・廃棄の記録を保存する必要もあります。また、廃棄等の作業を委託する場合には、委託先が確実に削除・廃棄したことについて、証明書等により確認することも必要です。これらも実務の手順に落とし込みましょう。マイナンバーの削除・廃棄の具体的な手法については、特定個人情報保護委員会が公表している「(別添)特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)」に例示されていますので、ご確認下さい。
個人情報を扱っているという認識をもつことが必要です。
新しい制度が始まるわけですから、それに伴い変化する業務が発生するわけです。