企業がマイナンバー管理を委託する際に注意しておきたいこと

中小企業がマイナンバーを管理するには事務職などの負担がかかるため、業務を委託することも必要だとの声が上がっています。委託にあたって押さえておきたいことをまとめました。

マイナンバーは企業だけでは管理しきれない場合もあります

 「本当に実施するのか、疑問です。役所ですら、毎年のように情報漏えいがあるのに、全企業に自前で完璧なセキュリティーを課すのは、むちゃなのでは」

 ため息まじりに話すのは、都内の医療系の事業所で、共通番号への対応を担当する女性(53)です。

 共通番号法は、扶養控除や源泉徴収票、社会保険の届け出などに共通番号の記載を求めています。

 そのため企業は、社員やパート・アルバイト従業員だけでなく、その扶養家族、報酬や代金の支払い先の業者などの共通番号を集め、管理しなければなりません。

 集めた番号の保管や廃棄について、政府は企業にガイドラインを示しています。内容は、鍵でのファイル管理や不正アクセス対策など多岐に及びます。漏えいには、最大で「4年以下の懲役、または200万円以下の罰金」の罰則です。

導入にあわせて中小企業の支援なども行われるようですが、ノウハウがゼロの中でお金だけ出されても難しいところです。
出来て間もない制度なだけに一般企業などでは対処しきれないので、そういう時に頼りになるのが社労士などの個人情報を管理してくれる人たちでしょう。
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もちろん、ただ丸投げするだけでは駄目ですよ

丸投げのイラスト | 無料イラスト かわいいフリー素材集 いらすとや (25308)

委託者は、委託先において、番号法に基づき委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなければなりません。
とはいえ、企業の情報管理と何にも変わりありませんよね。
記憶に新しいところではベネッセが2014年に顧客の個人情報を流出させた事件がありますが、あれもデータベースを他の企業に委託していたことから起きた事件でした。
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社内調査の結果、弊社の管理するデータベースから個人情報が社外に不正に持ち出されていた事実が存在する可能性が高いことが判明したため、警察に対する相談を開始し、同年7月15日には、警視庁に対して、本件お客様情報漏えい事実についての刑事告訴を行いました。
本件刑事告訴を受け、同月17日、警視庁は、不正競争防止法違反の容疑で、弊社のシステム開発・運用を行っているグループ会社・株式会社シンフォームの業務委託先元社員を逮捕しました。
こうした事件は近年になって頻繁に起きています。

問題はこうした漏洩が起きた際、委託元の企業も責任を問われることです

 この点が,個人情報保護法とマイナンバー法とで大きく異なるところです。
 しばしば誤解されていますが,個人情報を流出させたからと言って,そのことを理由に処罰されることはありません。個人情報保護法では,情報漏洩について処罰規定は置かれていないのです。
 例のベネッセの個人情報流出事件でも,情報を流出させた被疑者は「個人情報保護法違反」ではなく「不正競争防止法違反」で逮捕されていました。個人情報を流出させたことを理由に処罰はできないことため,「ベネッセという会社が保有する営業秘密を持ち出した」ことを理由に立件せざるを得なかった,というわけです。

他方,前回コラムでも触れましたように,マイナンバー法では故意にマイナンバーを流出させると,流出させた担当者はもちろんのこと,会社にまで処罰が及ぶようになっています。

マイナンバーも個人情報の一種だと思うのですが、そう甘くはないようですね。

ではどう委託すればいいの?

仕事・ビジネスのイラスト(挿絵)無料イラスト・フリー素材1 (25321)

中小企業のマイナンバー対応として、前回、今回と外部委託する場合について2つの選択肢、税理士や社会保険労務士へ委託するケース、民間業者へ委託するケースをみてきました。

 この2つのケースが対照的なのは、基本的に

税理士や社会保険労務士へ委託するケースではマイナンバーの保管・利用・提出業務を委託することになる
民間業者に委託するケースでは収集・保管業務を委託することになる
 というように、どの業務を委託するのか、その内容が異なることです。そのため、中小企業にとっては、前者のケースではマイナンバーの収集が課題となり、後者のケースではマイナンバーの利用、提出が課題となります。

 そして、前者では税理士などが利用するシステムによって中小企業がになうことになるマイナンバーの収集方法や収集シーンでの安全管理措置などの負荷が異なってきます。

一長一短と言ったところでしょうか。
単純に社労士などに依頼して管理するのがベターなのでしょうが、企業としてはできればコストカットしたいものです。最近ではクラウドというものを使って管理する方法も紹介されているようです。

そもそもクラウドって?

「cloud=雲」。最近では、クラウドコンピューティングを略して「クラウド」と呼ぶことが多い。

データを自分のパソコンや携帯電話ではなく、インターネット上に保存する使い方、サービスのこと。自宅、会社、ネットカフェ、学校、図書館、外出先など、さまざまな環境のパソコンや携帯電話(主にスマートフォン)からでもデータを閲覧、編集、アップロードすることができる。人とデータを共有するグループウェアのような使い方もある。

ネット上にデータを委託する、とイメージした方がいいでしょうか。
 特にクラウド専業で会計・給与計算ソフトを提供する企業はこれを絶好の商機と見て、マイナンバー関連サービスを相次いで投入している。

 freee(フリー、東京・品川)は「マイナンバー管理freee」の事前登録を受け付けている。単体でも利用でき、その場合の料金は人数無制限で月額980円(税込み)。ただし、「クラウド給与計算ソフトfreee」を利用していればマイナンバー管理機能は無料となる。

 freeeでマーケティングを担当する岡田悠氏は「マイナンバー制度の施行は、中小企業にクラウド型会計ソフトに目を向けてもらう大きなきっかけになる」と話す。

 中小企業がクラウド以外の手段でマイナンバーを収集・管理するのは困難だというのがfreeeの考えだ。Excel形式などでPCに保管すればウイルス感染による情報流出や、内部関係者がのぞき見るリスクにさらされる。紙の帳簿を金庫などに保管することも可能だが、数十人以上の従業員を抱えたり、従業員の入社や退社による入れ替わりが激しかったりする場合は、紙による管理は現実的ではない。

確かにネットで入力などを行えば便利ですよね。

とはいえこちらもまだまだ発展途上?

ただし、このシステムを使っても、やっぱり扶養控除申告書は紙ベースでの保管が原則なので
どうしても、この書類だけは金庫などに物理的に保管せざるを得ません。

本当にこの扶養控除申告書は厄介。マイナンバーを導入するのであれば、
扶養控除申告書についてもっと合理的な保管方法で済むように変更をしていただきたいものです。

そもそも、この扶養控除申告書さえなければ、平成28年1月からマイナンバーを
記載する必要があるのは、退職者や新規採用者等に関するものだけなので、
そこまで急いでマイナンバーを一律で徴収する必要はないはずです。

一方で、今の時点ではMFクラウド給与との連携や年末調整システムはまだ開発がされていません。

freeeも平成27年度の年末調整はまだ出来ませんでした。

そういうことからも、まだまだ導入には時期尚早であり、今このツールを使うために、
慌てて従業員からマイナンバーを徴収し始めることの意味はなさそうです。

それでも、実際にマイナンバーを常時預かるようになった際には、
このクラウドマイナンバー管理システムは利用を検討する有力な選択肢にはなると思います。

それまでにはもっと開発が進んでいるといいですが。

早く実用化されると良いですね。

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