外部の人材の力を借りるなら知っておきたい、支払調書についてのアレコレ

外部の人材の力を借りる機会が多い中小企業では、支払調書を作成する機会も多いもの。マイナンバー記載が必要になった支払調書を作成・提出する上で、担当者が知っておきたいことをまとめました。

外部人材の力を借りる機会が多い中小企業

フリー写真素材ぱくたそ モデル:ひろゆき・紳さん (43879)

研修セミナーで講演してもらったり、企業サイトを作成してもらったり、税理士や弁護士に専門分野について相談に乗ってもらったり――。
企業を経営していく上では、外部の人材の力を借りる機会もあるものです。社内の人材数が限られている中小企業では、その機会は特に多くあるでしょう。

支払調書

支払調書についての基礎知識

外部の人材と取引をして報酬を支払う必要が発生した場合には、基本的に、支払調書の作成・提出をしなくてはなりません。
前年の1月から12月までに支払いが発生したその取引先への報酬額をまとめて、期限である1月31日までに税務署へ提出することが義務となっています。
支払調書とは、特定の支払いをした事業者が、その明細を書いて税務署に提出する書類のこと。支払いを受けた者がきちんと申告しているかどうかを税務署が照らし合わせるために利用される。

一般的に「支払調書」という時には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を指していることが多いです。

提出義務者は、これらの支払いを行った者で、その提出先は、支払事務を行った事務所等の所在地を管轄する税務署になります。また、支払いを受けた側には支払調書を税務署に提出する義務はなく、さらに、支払った側も支払いを受けた側にたいして支払調書の発行義務はありません。

支払調書の税務署への提出期限は、原則、支払いの確定した日の翌年1月31日です。

ただし、外部の人材と取引を行ったとしても、1年間の支払金額が一定金額未満である場合には、提出しなくても良いことになっています。
弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの

マイナンバー制度開始(2016年1月)から変わること

マイナンバー制度開始に伴って、支払調書にマイナンバーを記載する欄が登場しました。
2016年以降に発生する報酬に関しての支払調書、つまり、2017年の1月31日が提出期限の支払調書からこの新しい書式で作成する必要があります。
国税分野における社会保障・税番号制度導入に伴う各種様式の変更点pdf|国税庁 (43784)

・「支払を受ける者」の欄に、「個人番号又は法人番号」の項目が加わる
・「支払者」の欄に、「個人番号又は法人番号」の項目が加わる
マイナンバーが始まるのは”2016年”からです。
このため2015年度分の支払い調書にはマイナンバーの記載が必要ありません。

外部人材のマイナンバーを取得する

支払調書にマイナンバーを記載するためには、まずは、外部人材のマイナンバーを把握しなくてはなりません。
取引先が法人である場合には、支払調書に記載すべき法人番号は、国税庁のWebサイトにて簡単に調べて取得することができます。
それに対して、個人や個人事業主へ支払う報酬に関する支払調書に記載する個人番号は、従業員の個人番号と同じように個別に取得しなければなりません。
外部人材に対して支払調書の提出が必要になりそうな依頼をする際に、支払調書に記載する必要がある旨を伝えて、個人番号を教えてもらえるようにお願いすることになります。
単発で業務を依頼する、個人の外部講師や弁護士、社労士などに支払う報酬料に対しては、その報酬料の支払い時にマイナンバーを収集しましょう。

法定調書は平成28年中の一定の支払いを、平成29年1月までに税務署へ誰にいくら支払ったか、支払った側が提出する書類となります。

平成28年の契約があるうちに、マイナンバーを提出してもらうよう早めの収集活動が必要になります。

原稿料や講演料の支払いで「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を作成する今回のケースは、“2016年(平成28年)1月以降で、実際に原稿料や講演料を支払うことが決まった時点”からしか取得できません。士業の方で継続的な顧問契約が結ばれている個人事業主の場合は別にして、あらかじめ取得しておけないため、取得のための準備期間が限られる可能性があります。
個人番号を取得する際には、本人確認が必要になります。
マイナンバー制度が導入される以前から長く付き合いがあった個人・個人事業主であったとしても、書類の提出を省いて本人確認を済ませることはできないことに注意しましょう。
マイナンバー取得時に必要な本人確認(個人番号確認と身元確認)について考察します。その方法は、国税庁が提示している本人確認方法の例「国税分野における番号法に基づく本人確認方法」を満たしていれば問題はありません。多くは「マイナンバー通知カード+運転免許証(または士業の証票)」か「個人番号カード」となります。従業員の場合と異なり、長年の付き合いがある士業の方でも身元確認のための書類の提示は必要です。その点は忘れないように確認してください。

Q. 個人番号の取得や本人確認は毎年行わなくてはいけないの?

作成・提出した支払調書の控えを最長で7年間保管しておくことが許可されています。
ですから、個人番号に変更がない限りは、再度本人確認することなく、保管している個人番号を翌年以降の支払調書への記入に利用しても大丈夫です。
Q6-4所管法令によって個人番号が記載された書類を一定期間保存することが義務付けられている場合には、その期間、事業者がシステム内で個人番号を保管することができますか。

A6-4所管法令で定められた個人番号を記載する書類等の保存期間を経過するまでの間は、当該書類だけでなく、システム内においても保管することができると解されます。(平成27年4月更新)

Q6-4-2支払調書の控えには保存義務が課されていませんが、支払調書の作成・提出後個人番号が記載された支払調書の控えを保管することができますか。

A6-4-2支払調書を正しく作成して提出したかを確認するために支払調書の控えを保管することは、個人番号関係事務の一環として認められると考えられます。
支払調書の控えを保管する期間については、確認の必要性及び特定個人情報の保有に係る安全性を勘案し、事業者において判断してください。なお、税務における更正決定等の期間制限に鑑みると、保管できる期間は最長でも7年が限度であると考えられます。(平成27年4月追加)

マイナンバーの実務から言うと、「7年間保管しなければならない」という言い方はネガティブに過ぎるかもしれません。「7年間は利用することが許されているのは便利」という見方もできるからです。例えば、従業員の配偶者が就労により扶養から外れたとしましょう。その後配偶者が退職して再び扶養に入ったとしても、7年以内であればマイナンバーを改めて収集する必要はないのです。スポットで業務を委託している社外の支払先のマイナンバー管理も同じです。
Q4-3-9 講師へ講演料の支払が発生し、翌年以降も継続して報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務の為に利用する場合、本人確認を行う必要はありますか。

A4-3-9 前年の講演料の支払に伴う報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務の為に提供を受けた個人番号は、翌年以降も継続的に講演料の支払に伴う報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務のために利用することができる為、改めて本人確認を行う必要はございません。 ただし、番号の変更に伴い再度個人番号の提供を受ける場合には番号確認と身元確認が必要になります。(2015年9月回答)

Q. 依頼時点では支払調書の提出が必要か不明な場合はどうしたらいい?

外部人材とは頻繁に会う機会が取れない場合も多いので、年間に支払う金額が一定金額以上になるかどうか不明な場合でも、依頼をする時点で個人番号の提出をお願いしておくのがいいでしょう。
後に支払調書の作成が必要が無いと分かったら、その時点で廃棄や削除すれば良いのです。
Q4-2-8 契約の締結時点で支払金額が定まっておらず、支払調書の提出要否が明らかでない場合、その契約の締結時点で個人番号の提供を求めることができますか。

A4-2-8 顧客との法律関係等に基づいて、個人番号関係事務の発生が予想される場合として、契約の締結時点で個人番号の提供を受けることができると解されます。その後、個人番号関係事務が発生しないことが明らかになった場合には、できるだけ速やかに個人番号を廃棄又は削除する必要があります。(2015年9月回答)

支払調書を作成する

作成の際には、支払いを受ける側と支払いを行う側双方のマイナンバーを忘れずに記入します。
その他の点は、従来の書式のときと変わらないので、記入に際して大きな混乱は起きないでしょう。
ただ、支払調書を手書き以外の方法で作成する場合には、ソフトやシステムをマイナンバーに対応したものに変更する必要があります。
2017年1月31日までに書類が作成・提出できるよう、早めに変更を済ませておくことが大切です。
平成28年1月1日以降に報酬などの料金を支払った場合には、個人番号(マイナンバー)や法人番号の項目を記入する必要があります。

取り扱う件数がそれほど多くなければ、新しい様式にこれまでどおりの情報に加えて、個人番号(マイナンバー)や法人番号を記入すれば問題ありません。

ただし取り扱う件数が多く、手書きではなくソフトやシステムを使用している場合は、個人番号(マイナンバー)や法人番号を入力できるようにシステムを作り変える必要があります。

支払調書を提出・送付する

支払調書は前述の通り、税務署に期限までに提出します。

また、それと合わせて、報酬を受け取る人材本人にも支払調書の写しを送付する習慣がある企業もあるでしょう。
その際、支払調書内に個人番号が記載されている場合には、情報漏洩を防ぐために個人番号が読み取れない状態に加工してから送付しなくてはなりません。
忘れないように気をつけてください。

Q5-8支払調書等の写しを本人に送付することはできますか。

A5-8個人情報保護法第25条に基づいて開示の求めを行った本人に開示を行う場合は、支払調書等の写しを本人に送付することができます。その際の開示の求めを受け付ける方法として、書面による方法のほか、口頭による方法等を定めることも考えられます。なお、当該支払調書等の写しに本人以外の個人番号が含まれている場合には、本人以外の個人番号を記載しない措置や復元できない程度にマスキングする等の工夫が必要となります。

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