中小企業が取るべきマイナンバーの準備方法や対策

中小企業が従業員からマイナンバーを収集してから授業員が退職するまでのマイナンバーの管理方法をまとめました。

中小企業とマイナンバー

マイナンバー制度では、中小企業、個人事業主であっても、労働者を雇用して業務を実施している限りは、当該労働者からマイナンバーを取得し、それを適切に管理していくことが必要となります。
特に建設業の下請企業においては、技能労働者を「雇用」しているのか、それとも、外注として「請負」にしているのか、曖昧な形で行われている実態が多く見られます。

マイナンバーの収集

まず最初に、会社は重要員からマイナンバーを収集する必要性があります。その際注意しなければならないのが、必ず従業員に利用目的を明確に伝えることと本人確認をおこなうことです。
また国税関係実務における平成28年4月入社の新規雇用で注意したい点として、1月から3月までの「源泉徴収票」が挙げられます。

平成28年4月に提出される源泉徴収票にマイナンバーが記載されているようなことがあれば、マスキング処理をするなどして特定個人情報を保護しておく必要があります。

原則として源泉徴収票のマイナンバーは個人番号利用事務事業者である国税庁が利用するものです。

本人に交付する源泉徴収票へはマイナンバーを記載しないことになっており、それはマイナンバーが記載してあるようなことがあれば、他の用途にとっては利用目的外としてマイナンバーを収集し保管することになってしまうからです。

従業員の源泉徴収票、給与支払い報告書、支払調書などにマインナンバーの記載が必要となるのは2016年1月以降ですが、様式の変更なども行われるため、書類作成業務の手順確認や準備なども必要になります。

平成28年1月以降、従業員の社会保険の手続き・源泉徴収・税金の納付・証券会社や保険会社等の金融機関での手続きなどを行う場合に、従業員や扶養親族などのマイナンバーを収集することとなります。

また、外部の方に講演や原稿の執筆を依頼し、報酬を支払い、報酬から税金の源泉徴収を行う場合は、外部の方からもマイナンバーの収集が必要です。

なお、法律で限定的に明記された目的以外で、特定個人情報を収集してはなりません。

平成28年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は採用者の扶養親族に関するマイナンバーも記載する必要があります。

また内定者に関して実質的な新規雇用者である場合においては、マイナンバーを収集することが可能となっています。

さらに、試用期間を経てから正式採用となる場合も手続きする必要があります。入社して最初の給与支給日の前日までに「平成28年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。

試用期間後正式採用となり、そのままその年の12月31日まで在籍していた場合は年末調整を行ないます。試用期間後に採用とならなかった場合は、次に説明する退職の手続きを行なうことになります。

 (13635)

マイナンバー保管の際に最も注意しなければならないこと

マイナンバーは個人情報なので厳重に管理し、企業側が責任を持ち保管しなければなりません。そのため企業側は正しい保管方法で管理しなければなりません。
特定個人情報はマイナンバー法で利用目的を明示した上で収集し、必要がある限り保管し続けることができます。個人番号カードの有効期間は10年(※20歳未満については5年)ですが、番号そのものは原則として生涯唯一の番号として取り扱うことになっています。何度も収集する手間を省くために、事務手続きで必要な限り保管し続けることができるとしています。

マイナンバーのガイドライン内では「保管し続けることができる」という表現で、実質的な保管期間を事業者に委ねています。前提として使用しないデータはできるだけはやく廃棄したり削除したりするようにとの保管制限があるからです。

税法上の保管義務は更生の請求手続きや修正申告に準じた期間が設定されています。しかし特定個人情報は証拠証憑としての役割を果たさないため保管する理由がないともいえます。そのため特定個人情報はできるだけ速やかに廃棄するものであるが、保管する必要があれば「保管し続けることができる」と事業者に判断を委ねているのはそのためなのです。

たとえば継続して雇用する従業員のマイナンバーは、源泉徴収税といった税に関する手続きだけでなく、健康保険や雇用保険など社会保険に関しても利用する必要があります。そのため従業員を雇用している限り、保管し続けることができます。

れは休職中の従業員に関しても同様に定義づけることができます。原則として休職は復職を前提としたものですが、休職の内容によっては復職の時期が未定となる場合もあります。復職が未定であったとしても、当該従業員の特定個人情報は引き続き継続雇用の状態であるため、マイナンバー等を保管しておくことによって再度収集する手間を省くことができるのです。また、退職した従業員に対して退職後も支給する給与や賞与がある場合も、源泉徴収票の作成が必要である限り保管し続けることができると解釈することができます。

特に留意すべき点は、マイナンバーを利用して行う事務を処理する必要がなくなった場合で、書類の法定保存期間を経過した場合には、マイナンバーをできるだけ速やかに廃棄または削除しなければならない、とされている点です。

例えば、扶養控除等申告書の法定保存期間は7年ですが、この法定保存期間の7年を経過した場合には、マイナンバーを復元できない手段でできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。あるいは、マイナンバー部分を復元できないようにマスキングまたは削除した上で、当該書類の保管を続けるという方法もあります。

マイナンバーの廃棄

 (13636)
事務処理の必要性と法定保存期間を踏まえて、マイナンバーを廃棄又は削除する時期を決めて管理しましょう。また、廃棄や削除の具体的な方法についても、実務の手順として決めておきましょう。削除・廃棄の記録を保存する必要もあります。また、廃棄等の作業を委託する場合には、委託先が確実に削除・廃棄したことについて、証明書等により確認することも必要です。これらも実務の手順に落とし込みましょう。マイナンバーの削除・廃棄の具体的な手法については、特定個人情報保護委員会が公表している「(別添)特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)」に例示されていますので、ご確認下さい。
個人番号利用事務や個人番号関係事務を行なう必要のなくなった特定個人情報は、できるだけはやく廃棄処分しなくてはなりません。廃棄や削除するために「容易に復元できない手段」で行なうことが重要になります。それではどのような手段が復元不可能な手段となるのでしょうか。

たとえば通知カードや個人情報カードのコピーをとっていた場合は紙媒体で保管していることになります。紙媒体を廃棄するためには焼却や融解が挙げられます。また復元できない程度に細断できるシュレッダーも廃棄手段として有効です。

特定個人情報データを保存している電子媒体や機器類は、削除専用のソフトウェアを使用することや、物理的に破壊する手段があります。またデータ復元用システムといった専用の装置を用いなければ復元できない場合、容易に復元できない手段だと考えることができます。

さらにマイナンバー制度では廃棄削除するだけでは事足りず、その事実を記録しておく作業も必要となります。廃棄削除に関する内容として、廃棄した特定個人情報の書類名称、部数、担当者名、廃棄手段などを記録します。記録内容にマイナンバーを記載したり転記したりすることのないように注意します。

また取扱件数が多い事業者の場合、委託することも考えられます。廃棄作業を委託した場合、証明書等の発行によって記録とすることが可能となります。

退職手続きの際のマイナンバーの管理方法

従業員が退職したら、原則として退職者の特定個人情報が記載された書類は廃棄しますが、廃棄する前に特定個人情報に関する書類を作成する必要があります。

中途退職者に対して作成しなければならない書類として、給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票があります。退職所得の源泉徴収票は法人役員を対象としているため、給与所得の源泉徴収票の発行手続きが実際に行なう実務となります。

給与所得の源泉徴収票は退職後1か月以内に退職した従業員へ交付しなければなりません。つまり、平成28年(2016年)1月1日を退職日とする従業員が発生した場合、最短で平成28年(2016年)2月1日までにマイナンバーを記載した源泉徴収票を作成し、退職者へ交付する必要があるということになります。

退職してからも差額分の給与を支払う必要がある場合や延長して支給される給与がある場合には、退職後に支給されたとしても給与支払実務として行なう必要があります。

ここで注意したいのが源泉徴収税額を計算する上で甲欄と乙欄のどちらかで計算するのかという点です。

原則として退職日を超えた給与は給与所得者の扶養控除等申告書の効力がなくなっているものと考えることができるため、乙欄にて税額計算することになります。

しかし例外として退職者が再就職しないことが明らかな場合(出産による退職など)においては、給与所得者の扶養控除等申告書の効力が引き続き発生していると考えることができるため、甲欄で源泉徴収税額を計算してもよいということになります。