企業での社会保険手続きは、マイナンバー制度開始でどう変わる?

マイナンバー制度は、社会保障と特に深く関わりのある制度です。社会保険手続きも変わってくるので、その変更点を中心に紹介していきます。

マイナンバーの社会保険での利用

「マイナンバーがはじまる」ということをなんとなく知ってはいても、具体的な利用例や導入の目的まではよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

このマイナンバー制度を導入することになったきっかけは、社会保険手続きの複雑さという点があげられます。そのため、マイナンバーを利用することによって、社会保険に関するさまざまな手続きがスムーズになることが期待されています。

マイナンバーで社会保険手続きが効率的に

これまで、国民の個人情報は、管轄官庁や部署ごとにバラバラに管理されていました。それぞれの内部でやりとりをする分には従来の方法でも大丈夫でしたが、管轄を越えてデータのやりとりをしようとすると、混乱やミスが起きやすいという問題がありました。

実際に、多くの国民の年金記録が紛失されて社会問題となったこと(2007年に判明した年金記録問題)は記憶に新しいかもしれません。

マイナンバーは国民ひとりひとりに割り振られ、生涯変わることのない番号です。そのため、マイナンバーにあらゆる社会保険情報を紐付けして管理すれば、データの取り違えや混乱を最小限に抑えることができます。また、それだけ手続きが簡単になりますので時間の短縮にもなりますし、コスト削減にも繋がるというメリットがあります。

マイナンバー制度によって、管轄を超えたデータ管理が可能になるそうです。

効率アップは間違いなく起こるのでしょうね。

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事業者における社会保険手続きの変更点

● 被扶養配偶者が被保険者の扶養から外れた場合

「国民年金第3号被保険者被扶養配偶者非該当届」の提出が必要になります
~平成 26 年 12 月 1 日より健康保険組合加入の事業所が対象~

これまでは・・・●死亡した場合●海外に移住した場合など、限られた場合
12 月 1 日からは・・・

●収入が扶養の基準額以上に増加した場合
●配偶者(第 2 号被保険者)と離婚した場合

● 厚生年の資格取得時の本人確認事務の変更
~平成 26 年 10 月 1 日より~
【確認の対象】新たに採用する(被保険者となる)方で、
基礎年番号がわからない場合には・・・
1 運転免許証等により必ず本人確認が必要です。
2 住民票上の住所と郵便物が届く住所(現住所等)が・・
● 同じ場合 ⇒ 被保険者住所欄に住民票上の住所を記入
● 異なる場合 ⇒ 被保険者住所欄に郵便物の届く住所を 記入し、備考欄に住民票上の住所を記入
・資格取得時はに必ず、年手帳等の基礎年番号を確認できる書類を必ずご確認ください。
・年手帳を紛失した場合は「年帳再交付申請書」を併せてご提出ください。



社会保険の手続き上の取り扱いで、今秋だけでこんなに変更されていたのですね。

記載時期が保険によって微妙に違うので、実務担当者は参考にして下さい。

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個人番号と法人番号を記載すべき書類はこんなにある!

日常業務以外にも、個人番号と法人番号を記入しなければならない書類があります。以下でその中でも、特に忘れやすいものを列挙しました。

1. 総務業務
従業員を雇用した場合
雇用保険被保険者資格取得届→個人番号を記入
従業員が社会保険に加入した場合
社会保険被保険者取得届→個人番号を記入
従業員が退職した場合
雇用保険被保険者資格喪失届→個人番号を記入
給与所得、退職所得の源泉徴収票→個人番号・法人番号を記入

様式の変更もあるのに、これだけの書類にマイナンバーを記載しなければいけないなんて、効率アップまでの道は険しいみたいです。
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社会保険関連の申請書類にマイナンバーを記載することに伴い、従業員等のマイナンバーを取得する必要がある

Q4-5-3 事業者が取得した従業員やその扶養家族のマイナンバー(個人番号)を当該従業員などが加入している健康保険組合に提供してもよいですか?
A4-5-3 健康保険法等の法令の規定により、事業主が健康保険組合に対して、従業員やその扶養家族のマイナンバーの提供を行うこととされている場合には、個人番号利用事務実施者である健康保険組合に対して、事業者は個人番号関係事務実施者になるので、事業者から健康保険組合にマイナンバーを提供することは可能です。なお、事業者がマイナンバーを取得するにあたっては、健康保険に関する個人番号関係事務において利用することを明示しておく必要があります。
内閣官房のサイトからの抜粋です。

利用目的を明らかにして、なおかつ本人確認を厳重に行うことでマイナンバーの悪用や流用が防げます。

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まとめ

マイナンバー制度の導入は、社会保障・税制度の大きな転換点ともいえます。

これまでは、国民の共通番号がなく、また、役所間の情報共有もほとんどなかったため、一つの書類を役所に提出するため、別の複数の役所から添付書類を取り寄せなければいけませんでした。まさに「縦割り行政です」。

マイナンバー制度は、これらの不便から解放されるというメリットがあります。しかしながら、一方では、国による国民の個人情報の把握が強まる不安が指摘されているのも事実です。

マイナンバー制度には、行政手続きの簡略化や、必要な情報の把握、災害時での活用等、さまざまなメリットがあります。ですが、私たちも、自分の情報が適切に収集・利用されていることをマイポータルなどで、監視・監督する責任が出てくるのかも知れません。

マイナンバー制度のおかげで行政手続きの簡略化が実現し、その影響で企業の事務作業の効率が上がることはとてもいいことなのですが、上記にもあるように監視・監督する責任が出てくるというのは大変ですね。
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