これでもう怖くない、中小企業向けマイナンバーの基礎知識 ⑧

最近は、マイナンバー制度が始まると聞くことが増えていますが、なんか複雑そうと思っていませんか。 なにかとお忙しい中小企業の社長さんが、準備するきっかけになるようにがんばってまとめてみます。 今回は、就業規則の整備についてです。

参考 前回のまとめ

これでもう怖くない、中小企業向けマイナンバーの基礎知識 ⑦ – マイナンバー大学

これでもう怖くない、中小企業向けマイナンバーの基礎知識 ⑦ - マイナンバー大学

就業規則とは

そもそも就業規則とは? 【就業規則作成の堀川社会保険労務士事務所】 (17019)
就業規則とは、会社や従業員が守るべきルールを定めたもので、よく「会社の法律」や「従業員との契約書」などといわれます。

会社が人を雇い入れるときは、当然ですが働いてもらう時間や、支払う賃金の額、仕事の内容、休日などについてあらかじめ約束しておかなければ スムーズに働いていただくことはできません。

この「約束」を民法では、「雇用は当事者の一方が相手方に対して働く(労務に服する)ことを約束して、相手方がその労務に対して 報酬を支払うことを約束することによって効力を生ずる(民法第623条)」典型的な「契約」の一種として規定しています。

つまり人を雇用することは「契約行為」そのものであるということになります。

就業規則等 | 八王子の社会保険労務士事務所 長澤労法管理事務所 (17084)

どのくらいの規模から必要となるのか

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

マイナンバーのあらゆる場面を想定した規則の整備を

 (17073)
就業規則に加えていただく文例をお送りさせていただきます。
◆採用時の提出書類に関する規定

◆提出書類の取り扱いに関する規定

◆提出の協力を求める規定⇒服務規定か、懲戒規定レベルにするか?

マイナンバーは、プライバシーの観点から、 社員に提出を強制する強制力が会社にはなく、社員の理解を求め 提出の協力を得るものとなるために、ややこしい事務が発生します。
まあ、そこまで心配しなくても、社員の皆さんは協力的に素直に 提出に応じてくれるという場合は、就業規則上も服務規程で十分だと思います。

懲戒規定にも規定しておくという場合は、そういう社員さんがいるかも。。。ではなく 、抑止力的に規定しておくというものになると思います。

就業規則追加文例 ① 採用時の提出書類

(採用時の提出書類)
第●条 労働者として採用された者は、採用された日から【 】週間以内に次の書類を提出(送付による方法を含む。以下本条において同じ。)又は提示しなければならない。
① 履歴書
② 住民票記載事項証明書(個人番号が記載されていないものに限る。)
③ 自動車運転免許証の写し(ただし、自動車運転免許証を有する場合に限る。)
④ 資格証明書の写し(ただし、何らかの資格証明書を有する場合に限る。)
⑤個人番号カード、通知カード又は個人番号が記載された住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書(個人番号カード又は通知カードについては提示の場合は原本の提示、送付の場合は写しの送付による。)
⑥ その他会社が指定するもの
2 前項の定めにより提出又は提示した書類の記載事項に変更を生じたときは、速やかに書面で会社に変更事項を届け出なければならない。

採用時の提出書類について詳しく

【解説】
採用時の提出書類として、マイナンバー法上の本人確認(番号確認)のために必要となる個人番号カード、通知カード又は個人番号が記載された住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書の提示又は送付を受けることを記載することが考えられます。
通常は、「提出書類」とされていますが、本人確認においては、個人番号カード、通知カード又は個人番号が記載された住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書の提示を受けて確認し、その写し(コピー)を受領しない場合もありますので、「提示」による方法も追加しています。なお、「採用時の提出書類」としては、通常、「住民票記載事項証明書」が提出書類とされていますが、労働者の年齢や現住所を確認するために求めるものであり、これに個人番号が記載されていると目的外利用となるおそれがあるので、「住民票記載事項証明書(個人番号が記載されていないものに限る。)」との修正を行いました。

就業規則追加文例 ② 提出書類の取り扱い規定

 1.会社の内外を問わず、在職中または退職後においても、会社、取引先等の秘密、機密性のある情報、患者情報、データ、ID、パスワード、個人番号(マイナンバー)、特定個人情報および会社の不利益となる事項を第三者に開示、漏えい、提供または不正に使用しないこと

2.会社が特別に許可した場合を除き、秘密情報のコピー等をして社外に持ち出さないこと

3.IDカードを会社の許可なく他の従業員に貸与しないこと

4.会社が貸与する携帯電話、パソコン、その他情報関連機器を、紛失または破損しないこと。情報関連機器を紛失または破損した場合は、直ちに情報漏えいの防止の対策を行うとともに会社に報告すること

5.会社の許可なく私物のパソコン、携帯電話、その他電子機器類に顧客に関する情報、その他秘密情報を記録しないこと。やむを得ず顧客の電話番号、メールアドレス等を記録する場合はセキュリティー管理が可能な機種を選択し、私物の機器であっても会社が貸与する機器と同様に、善良な管理者の注意をもって取り扱うこと(等)

就業規則追加文例 ③ 提出の協力を求める規定

従来の就業規則には,「服務規律」という条項があるかと思います。
「勤務時間中は会社の指揮命令に従い,定められた業務に専念しなければならない」といった遵守事項がズラッと並んでいるアレです。
そこに,以下のような事由を追加して下さい。

・労働者は,「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に規定された会社による個人番号の提供の求め及び本人確認に協力しなければならない。

従業員がマイナンバーの提供を拒否するという事態も考えられます。そこで,服務規律に入れることで本人確認手続等への協力を促します。
なお,「マイナンバー提供を拒否したら懲戒処分!」という考え方もありうるところですが,懲戒処分は会社秩序を維持するために必要な限度で行われる必要があり,マイナンバー提供の拒否が懲戒事由足りうるかどうかは少々微妙なところです。そこで,マイナンバー提供拒否についてはあえて懲戒事由に入れず,服務規律に含めるのにとどめるのがバランスのとれた処理と考えます。

規則作成後の流れ

マイナンバー制度対応と就業規則 | マイナンバー制度対応サポート (17080)
そして、マイナンバーに関する就業規則を作成した場合、従業員10名以上の事業所では労働基準監督署への届出が必要になります。同様に、就業規則の変更・追加を行った場合も届出の義務があります。

この就業規則の届出には、過半数の従業員を代表する者の意見書の添付が必要です。また、すべての従業員に対して変更内容を周知させることが必要です。

ここで上記の「周知」とは、社員食堂の掲示板に変更後の就業規則を掲示する、変更後の就業規則をファイル等で社内共有LANにアップする、全従業員対象の説明会を行う等、一般に知らせる方法をとることをいいます。

就業規則でトラブル防止

マイナンバーは取り扱いを慎重にしないといけないものですが、従業員へ依頼することも多くあります。すべての従業員が素直に会社の指示に従うとは限りません。
そこで会社と従業員との約束を交わすもの、就業規則を活用しましょう。

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