各企業は社員のマイナンバーを収集し、管理・保管・破棄を行うことが必要となります。何事もなく業務が行えればいいのですが、中には上手く事が運ばないケースもあるようです。
マイナンバー制度とは
そもそもマイナンバーはなぜ必要なのでしょう。
デメリットが目立っている感じが否めませんが、本当に私たちの生活にメリットはあるのでしょうか。
マイナンバー制度とは簡単に言えば国民一人ひとりが番号を持つ(持たされる)制度のことです。
国民の個人データを12桁の番号で把握することで行政サービスをはじめとしたさまざまな作業を簡便化し、より迅速かつ最適な作業を行うために導入されます。
これまで行政の手続きといえば何かと煩雑で時間がかかるというイメージが付きまとっていましたが、このマイナンバー制度の導入によってそれが改善されることが期待されています。
マイナンバー制度の導入は、社会保障・税制度の大きな転換点ともいえます。これまでは、国民の共通番号がなく、また、役所間の情報共有もほとんどなかったため、一つの書類を役所に提出するため、別の複数の役所から添付書類を取り寄せなければいけませんでした。まさに「縦割り行政です」。
マイナンバー制度は、これらの不便から解放されるというメリットがあります。しかしながら、一方では、国による国民の個人情報の把握が強まる不安が指摘されているのも事実です。
マイナンバー制度には、行政手続きの簡略化や、必要な情報の把握、災害時での活用等、さまざまなメリットがあります。ですが、私たちも、自分の情報が適切に収集・利用されていることをマイポータルなどで、監視・監督する責任が出てくるのかも知れません。
すでに起きているマイナンバートラブル
番号が漏れると悪用される可能性があるだけに、その扱いには全国民が少なからず不安を感じているのが現状ではないでしょうか。
実際に、システム上や人為的なミスが全国各地で起こっています。
1月1日より運用が開始された個人番号(マイナンバー)制度だが、そのシステムの一部に不具合があったと産経新聞が報じている。「東京都葛飾区のマイナンバー通知カード約5千世帯分が未作成だったにもかかわらず、機構のシステム上では正常終了と認識されていた」とのことで、データの移行時にシステムが一時停止した際に、実際にデータ処理が行われていなかったにも関わらずデータ処理が完了したことになっていたという。 システムの修正自体は行われているが、どのような不具合によってこの問題が発生したかの詳細はセキュリティ上の理由から開示されていないという。
2016年1月19日、全国各地の住民からマイナンバーの運営を担っている地方公共団体情報システム機構が送付した封書に「通知カード」が未封入だったとの訴えが相次いでいることがわかった。機構側は「同封した」と主張しているが、昨年から各地の自治体で複数の通報があった。機構は昨年、プログラムミスで通知カードが作成されていないのに「配達済み」と誤認する失態を犯している。同13日には同機構でシステム障害が発生し、一部自治体で一時的に「マイナンバーカード」の交付ができなくなった。同14日夜には鳥取県の県情報センターでカード交付システムに不具合が起きた。
また、同日に愛知県豊田市でマイナンバーカード1枚を誤って別の市民に交付したことが発覚。交付臨時窓口でカードを受け取りに来た男性にカードを交付したが、町名と名字が同一の別人のものを渡していた。同カードは全て顔写真がついているが、それでも誤交付が起きてしまった。
企業が扱う従業員のマイナンバー
当然のことながら、その為には従業員のマイナンバーを集めておかなければなりません。
当面このマイナンバーは「社会保障」「税」「災害対策分野」で利用されます。皆さんもご存知のとおり、会社は従業員に代わって、
例えば健康保険や厚生年金の手続き等の「社会保障」関連の業務であるとか、年末調整や住民税の納付などの「税」関連の手続きを行っています。
これらの手続きで作成する帳票類は「税務署」とか、役所、行政に提出します。
この行政に提出する書類、つまり「帳票」に関してはほぼ全てのものに関してマイナンバーの記載が必要になってくるのです。
マイナンバーは、使用範囲が「税・社会保障・災害対策」と厳密に決まっております。民間企業の使用範囲は税と社会保障となります。
逆に言うとこれ以外の目的で使ってはいけません。使っていけないということは、税と社会保障目的以外の収集もやってはいけないということです。
従って、たとえ社員の家族であっても、扶養親族に該当しない者のマイナンバーは収集しない様に注意しましょう。
また、扶養親族のマイナンバーを集める際には、扶養親族の本人確認作業を会社は行う必要がありませんから、扶養親族の通知カードや個人番号カードのコピーを集める必要もありません。
それだと間違った番号を書いて提出されるのがイヤだという方も出てきます。
そんな場合は、扶養親族の通知カードや個人番号カードのコピーを取ってもいいよ。という風になりました。ただ、その場合はしっかりとした安全管理措置が必要になるのは当然です。
私からのお勧めとしては、マイナンバー漏えい対策は、必要以上に集めないことに尽きます。
企業のマイナンバーによるデメリットはマイナンバーを管理する体制にかかる初期費用です。マイナンバーを管理するために、ウイルス対策ソフトや厳重なる取り扱いルールの構築。さらに従業員が提出した書類にマイナンバーが記載されていた場合の書類棚やそれを廃棄するシュレッダーの確保など、情報漏えいがあってはならないマイナンバーだからこその設備が必要となります。
企業に起こりうるマイナンバートラブル
マイナンバーを扱う社員の憂鬱
担当者の任命や責任の所在など、しっかりと配慮しましょう。
マイナンバー制度が始まる事くらいは風の噂で知っていたのですが、まさか自分が取り扱う立場になるな
んて思わなかったので(まぁ事務員は実質私一人ですが)知らんぷりしていましたが、今日急にマイナンバーについての相談会みたいなものに社長に連れて行かれ、事が重大であるという事くらいはなんとなく理解したような段階です。
マイナンバーを収集出来るような状態ではないです。
事務員が私一人だからと言って、当たり前のようにこの仕事に従事して責任を負う立場になる事が非常に辛いです。
このマイナンバー制度の話をご近所、知り合いの企業様に話を聞いたところみなさん頭を悩ませているところが多いようで、罰則規定を聞くと総務のおばちゃんはびびっちゃって「私は預かりたくありません」と言われた社長さんもいるようです。まあ、マイナンバーを提供する従業員へのケアも大切ですが、それを取り扱うことになるスタッフのケアも大切だと思っています。
まさかのマイナンバー拒否
そもそも、マイナンバーの通知を受け取らない・会社に通知しないという選択をとる人がいたとしても、強制的に従わせることは不可能です。
マイナンバーを受けらないという選択は可能だ。簡易郵便のため、受け取り拒否という積極的な手段を用いなくとも、居留守を使えば受取ることはない。しかし「受け取り拒否=マイナンバー削除」ではない。そのため、受け取らないことによるメリットは単なる「現状維持」といっていいだろう。一方デメリットはどうか。もし会社に提出拒否としても罰則があるわけではない。マイナンバーに関する罰則は「情報漏えい」「不正使用」「虚偽報告」など、使用者側を戒めるためのもばかりで、個人の提出拒否に関する罰則は設けられていない。
今後、マイナンバーを各種手続き書類の作成・届出の際には記載することが「会社の義務」となってきます。しかし、従業員のなかには、マイナンバー法の理解が深まっていないことを背景に、
漠然と不安がある。
個人情報が流出するのではないか。
会社側のマイナンバーの管理はしっかりしているのか。
といった不安が先行し、マイナンバーの収集が困難になることも考えられます。
もしもマイナンバーの収集を拒否されてしまったら
従業員等の協力が得られない理由について、その原因は幾つか考えることができます。
その中で、最も多いと予想されるのが「従業員らのマイナンバー制度に対する理解が深まっていない」という理由です。
「マイナンバー制度がどういうものか分からないが、漠然と不安である」
「最近、個人情報の流出が多くて不安だ」
「自分の勤め先のマイナンバーの管理がどうなっているか分からない」
国の機関においてでさえ、情報漏えいが生じてしまう昨今、非常に重要な情報であるマイナンバーに対して不安が先行するのは、当然のことです。
こうした不安が生じる原因の多くは、情報不足に原因を求めることができます。
特に、自らの就業先での安全管理措置の状況が判らないから不安である、という場合は、事業者・団体において、きちんとした体制を整え、理解を求めていく他ありません。
従業員等からどうしてもマイナンバーの提供を受けることができなかった場合には、書類の提出先の機関(例えば、支払調書や源泉徴収票であれば税務署)に対し、マイナンバーを記載できなかった経緯を説明することになります。この説明の際には、単なる義務違反ではないことを説明できるようにしておくことが重要になります。そのためには、証拠として、従業員等に提供を求めた経過などを記録、保存しておくことが重要です。
具体的には、提供を求めた文書の内容や、文書を出した日付を記録しておくことや、提供を求めるメールの履歴を残しておくことが考えられます。
しかし、どうしても提出してもらえない場合には、その経緯を説明しなければなりません。
その社員にも企業にも罰則はないものの、企業としては少し面倒な手続きが増えてしまいますね。