日本のマイナンバー制度はアメリカの社会保障番号を参考に作られていますが、そもそも社会保障番号とはどんなものなのか、そしてその運用の現状を知ることが、日本でのマイナンバーの今後の運用等について非常に参考になることでしょう。
アメリカをモデルにした日本のマイナンバー制
他国で採用している番号制度にはいろいろな事例があり、大別すると下記の三例になります。セパレート・モデル
分野別に異なる番号を限定利用する方式【ドイツ】セクトラル・モデル
秘匿の汎用番号から第三者期間を介在させて分野別限定番号を生成・付番し各分野で利用【オーストリア】フラット・モデル
一般に公開された形で共通番号を官民幅広い分野へ汎用する方式【アメリカ、スウェーデン、韓国】日本のマイナンバー制はアメリカをモデルにしたといわれています。
マイナンバーのモデルとなったアメリカの社会保障番号(SSN)とは
社会保障番号の元来の目的は、社会保障プログラムの中で個々人の収支を記録するためのものであったが、やがて多重登録などのエラーも稀にあったものの、アメリカ国内での身分証明として使用されることとなった。労働・疾病・学業・クレジットなどの記録に社会保障番号が用いられることもある。
アメリカの社会保障番号の問題点
アメリカではSSN を使ったなりすまし問題で、非常に苦労をしているようです。他人のSSN を使って、他人に成りすますわけです。
これに対して、最近では、次のような対応がなされているのだそうです。
具体的には、政府機関ではできるだけSSNを利用しないようにシステムを更新するなどの対策を行っている。健康保険証(Medicare Card)からSSNの記載を取り除く検討なども進めている。また、SSNの印刷やSSNを認証に用いることを禁止する法律を制定する州も存在する
アメリカの反省を活かしている日本のマイナンバー制度
日本のマイナンバー制度においては、社会保障番号のデメリットの反省を活かし、マイナンバーを口頭で伝えるだけでの本人認証は行わない予定です。本人認証が必要な場合には、個人番号カードや運転免許証等の顔写真付きの身分証明書によって本人確認を行うことが法律に厳格に規定され、行政の関係各機関に義務付けられています。一般企業等の民間事業者においても、番号法の規定以外でのマイナンバーの収集・保管が禁止されているため、マイナンバーのみが本人認証として用いられることはありません。
このため、日本のマイナンバー制度では、なりすまし被害のデメリットが発生する可能性は低いと考えられています。
政府広報でも「なりすまし」は出来ないと公言
マイナンバーを用いる手続では、マイナンバーだけでなく、本人確認書類による本人確認も行うため、マイナンバーだけでなりすましはできません。
「なりすまし」は出来ないが注意すべき点がある
アメリカでも、社会保障番号の始まりは、社会保障分野のための制度だったものが、利用目的が拡大されていった点です。実際、1980年代以前の社会保障証には「本人認証のためではない」という一文が添えられていました。日本のマイナンバー制度も、その役割についても順次拡大されていく予定です。それにつれ、デメリットがあるかないかがはっきりしてきます。
私たちは第三者機関である特定個人情報保護委員会がしっかりとマイナンバー制度の監視監督がしているか、そしてマイナンバーが目的外の利用がされていないかをチェックしていかなければならないと思います。
それでも日本のマイナンバーは本当に大丈夫なのか…
日本でも2015年5月にサイバー攻撃を受け、日本年金機構の約125万件の個人情報が流出する事件が起きている。これから導入されるマイナンバーは、国だけではなく、一般企業も給与の支払いなどで使用するため、情報漏えいが起きるリスクは高い。個人番号制度の先駆者である米国でさえも、情報管理が万全ではあるとは言えない中で、日本のマイナンバー制度はどこまで対策ができているのだろうか。情報管理、行政や企業の管理運営体制にはしっかりと目を光らせておく必要があるだろう。