開業した事業主のマイナンバー知識

新しく起業する人は、開業届けにマイナンバーが必要です。開業した個人事業主は、さっそくマイナンバー制度に係わる対応に着手しておかなければなりません。マイナンバーの収集、保管、利用の基本的な知識が必要です。

今年からマイナンバー制度がスタートしています。個人事業主は最低限、何をしておかないといけないのか、何をしてはいけないのか、慎重に再確認しておく必要があります。
今まで、そのまま特に何もせず過ごして来た事業主や、これから開業しようとしている方はぜひ今後のために参考にしていただきたいです。

開業届けで事業を始めるという新たな気持ちに

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新しく事業を始める方は、開業届を出さなければなりません。なかには、開業届を出さないまま事業を行っている人もいるようですが、開業届を出すことで社会的に信用を得られるだけではなく、節税面でもを大きなメリットがあります。それは、
・節税効果の高い青色申告ができること
・銀行口座を屋号で取得できること
・赤字を繰り越すこともできること などです。

「所得税の青色申告承認申請書」とともに、開業届を提出することで、個人事業主として青色申告をすることができます。
青色申告の特典は、65万円の特別控除が得られることです。
奥さんなど家族への給与が全額必要経費になるなど、節税効果は多く得られます。
事業用の銀行口座も、開業届がないと開設できません。

税務署に「個人事業の開廃業等届出書」を提出するだけです。きちんと提出することで「これから新たな事業を始めるんだ」と決意を新たにし、新たな船出に弾みをつけてください。

開業届は、個人で事業を始めるための最初の届け出になります。
最初の手続きは大切ですので、漏れがないようしっかりと把握しておきましょう。

開業届にもマイナンバーが必要

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個人事業主として事業を始める時に、まず最初に税務署へ開業届を提出します。今年(平成28年)1月以降に開業届を提出する場合には、マイナンバーを記載しなければなりません。これは個人事業主がマイナンバーを記載する最初の書類になります。
開業届にマイナンバーを記載することで、税務署側で、個人事業主の確定申告書の提出の有無が把握しやすくなるのです。
また、個人番号カードを取得しておくと、所得税の電子申告などで利用できる電子証明書も内臓されていますので、e-Taxでの申告を予定している人は、早急に交付申請をする必要があります。

参考までに、申告に必要な届出書類とその時期は、
・個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)・・・・・開業してから1カ月以内
・所得税の青色申告承認申請書・・・・・開業日から2カ月以内(開業が1月1日~1月15日の場合は、3月15日まで)
青色申告にしようとする年の3月15日まで
・青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書・・・・・青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで

配偶者など生計を同じくする親族に対して給料を支払おうとする場合は、青色事業専従者給与に関する届出書を提出しなければなりません。
この場合、青色事業専従者となる親族のマイナンバーも届出に記載が必要です。

青色事業専従者になるための要件としては、15歳以上であることのほか、事業への従事期間が年間6カ月を超えていること(ほかの職場において正社員などメインで働いている期間は従事期間にはカウントされない)などがあります。

開業届けにマイナンバーが必要ですが、これは個人事業主の初めてのマイナンバーの利用になるのですね。

開業したらマイナンバーの対応は4つだけ

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個人事業主は、マイナンバー制度に関して、今でもややこしいと感じているはずです。しかし、単純に考えると、その対応策は4つに絞れます。
1.従業員および関係先からマイナンバーを集める【取得】
2.集めたマイナンバーをしっかり管理する【保管】
3.各種申告書に、これら番号を記載する【利用】
4.適切に廃棄する【廃棄】

まずは、マイナンバーを集める時の注意からです。
1)誰のマイナンバーを集めなければならないのか、よく確認してください。
個人事業主なら、従業員とその扶養家族、報酬などの支払調書発行する先なども必要です。
雇用形態に関わらず、給与支払いをする従業員全員です。アルバイトや契約社員も含みます。

こんな時にもマイナンバーは必要です。
・外部講師への講演依頼、外部ライターへの原稿執筆依頼の時
 →支払調書への記載が必要 で報酬支払いに際して支払先のマイナンバーまたは法人番号が必要です。
・社会保険に加入しない短期アルバイトを雇用する時
 →雇用形態にかかわらず、給与支払をする従業員全員の個人番号が必要です。
・従業員の扶養家族
 →従業員の扶養家族全員の個人番号が必要です。
 単身赴任や実家の両親など、離れた場所に住んでいる家族を扶養している従業員には、その家族の個人番号を集めなくてはいけません。

従業員については、採用時に住民票などの提出を受けて本人確認を行っていれば、個人番号取得時に改めて身元確認資料を追加で求める必要はありません。
従業員の家族の個人番号については、事業主は確認する必要がなく、記入をする従業員が自分の家族の個人番号を確認すればいいことになっています。
また、直接来社してもらうのが難しい、離れたところにいる報酬支払先などに対しては、番号通知カードや本人確認書類をコピーしたものを書留などで送ってもらいます。

事業主は、誰のマイナンバーが必要か判断し、その収集方法・時期を考えておきます。

マイナンバーを取り扱う場所の確保は?

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マイナンバーを取り扱う部屋・保管する場所を決めておくことが必要です。しかし、部屋が確保できない狭い事業所では、次の様に物理的に対応ができます。
1.入力作業中にのぞき見されないように、パーティションなどで仕切ります。
2.番号が書かれた書類は、開いたまま机の上に置きっぱなしにしない事。
3.番号が書かれた書類は、鍵のかかる書庫や金庫に保管します。

また、給与の計算や管理に必要なパソコンやそのソフトですが、その対応については
1.パソコンやファイルには必ずパスワードをかけます。パスワードも定期的に変更します。
2.給与計算や申告用のソフトは、マイナンバー対応に更新します。
3.ウイルス対策ソフトを導入し、ソフトの更新をこまめにしてメールの受信は避けます。
4.場合によっては、当ソフトへのアクセス権限を設定します。

小さな事業所でも、工夫することによって個人情報の漏えいを防ぐことが可能になります。

マイナンバーは適切に廃棄することも重要

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マイナンバーは、従業員が勤務する限り、税および社会保障に関する手続きの書類を作成する必要がある限り、保管されることになります。
しかし、その必要がなくなった場合は、適切に廃棄する必要もあります。
「必要がなくなった」の判断基準は、従業員の「退職後ただちに」ではなく、各種帳票の法律上の保管期間が経過したか否かです(例:扶養控除等申告書は、7年間保存)。
日付まできっちり管理することを義務付けられているわけではありませんから、一定期間ごとに忘れることなくきちんと廃棄されるようルールを作り、担当者に意識づけ、徹底していくことが必要です。パソコン上のデータでも同様です。
なお、個人番号が書かれた書類を廃棄する際は、必ずシュレッダーにかけるなど、復元困難な形にした上で処分しましょう。
マイナンバーが必要で無くなった場合、そのまま捨ててしまうと個人情報が漏れてしまう恐れがあるので、適切に廃棄することも忘れてはいけません。

個人事業主がマイナンバーの収集可能なタイミングとは?

マイナンバーを利用した事務(個人番号関連事務)を行うときにマイナンバーを収集することが、本来的なあり方です。
それでは事務が滞ってしまい、業務に重大な支障が生じかねません。
そこで、契約などによって個人番号関連事務の発生が確実であることが明らかになった時点で、マイナンバーの収集を行うことが可能であるとされています。
平成28年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書にはマイナンバーの記入欄が設けられています。なので、ほとんどの職場で年末には各従業員へ記入を依頼しているでしょうから、そのタイミングで個人番号が集まっているはずです。実質的には、今年から採用した従業員やアルバイトなどが対象になります。
ただ、平成29年1月に法定調書を作成する段階では、すべての従業員とその扶養家族および報酬支払先のマイナンバーを利用する必要がありますので、通常では番号収集作業は完了していると思われます。

・雇用契約
雇用契約の時点で、社会保険・税務関係の事務が生じることが予想されるため、雇用契約締結時にマイナンバーの提供を求めることができます。
・内定者
内定者の場合はその立場や扱いが個々で異なるため、一律の扱いをすることができません。 ですが、正式に内定通知書を送付し、内定者からも入社に関する誓約書が提出されているような状況であれば、内定者が「確実に入社する」ことが予想されるため、マイナンバーの提供を求めることが可能だと解されています。
・人材派遣
人材派遣会社で登録がなされた場合ですが、その登録をもって派遣が行われるかは、未だ確実ではありません。
そのため、原則として登録時点でマイナンバーを求めることはできません。
しかし、登録時以外に登録者の本人確認をした上でマイナンバー提供を求める機会がないこと、そして登録時点で実際の給与支払い条件等の合意があるなど、近い将来に雇用契約締結の蓋然性が高いと認められる場合に限って、雇用契約に準じて、登録時点でのマイナンバーの提供の求めが可能であると解されています。
・報酬や講演料
外部の専門家に支払った報酬や講演料などで、支払調書作成義務が生じることが契約上、明らかな場合は、契約締結時にマイナンバー提供を求めることができます。

大切なマイナンバーですから、収集にも気配りが重要です。

収集の範囲にも注意が必要

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従業員の扶養控除手続きをするためにマイナンバーを収集することは、目的の範囲内であり、合法です。
しかし、ある従業員の家族が扶養控除の対象外であった場合は、扶養控除手続きが発生しないことが明らかなので、この従業員のマイナンバーを収集することはできません。
混乱しやすいのはアルバイトと派遣社員の扱いです。
源泉徴収票を作成しなければならない以上、どれだけ短期のアルバイトであってもマイナンバーの収集が必要となります。
逆に派遣社員の場合、給与支払・社会保険などは派遣元が行うため、マイナンバーを収集することはできません。
実際に自分のところでどんな手続きを行うかによって、収集の範囲は決まってきます。

また、外部の専門家に業務依頼をした場合の報酬を支払う場合は、一定額を超えると支払調書提出義務が生じます。
この支払調書には、支払相手のマイナンバーを記載しなければならないので、この事務への利用のために支払相手にマイナンバーの提供を求めることは、問題ありません。
しかし、契約の内容などから、支払調書の作成を要しないことが明らかである場合には、事務を行う必要がないので、マイナンバーの提供を求めることができません。

アルバイトと派遣社員とは、混同しない様に配慮が必要です。
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