民間利用に備え、企業が今から準備しておくこととは?

マイナンバーに含まれる個人情報の民間利用がグローバル社会の生き残りにかかっていると経済界は見ています。適切な民間活用のために必要なことはなんでしょうか?

マイナンバーの民間活用

 (31401)

マイナンバー制度とともに議論されてきた民間活用、
具体的にはマイナンバーに紐付けされた個人情報(パーソナルデータ)を活用することは、
少子化や人口減小が叫ばれる日本の内需を活性化させると見られています。

ビッグデータを活用したマーケティングによって市場の開拓の成功例が続くことで、
個人情報は第4の資源とみなされています。

第4の資源、パーソナルデータ

産業界の間では、情報というのはヒト、カネ、モノに並ぶ第4の経営資源 ということで大変注目されており、ビッグデータ、特にパーソナルデータをいかに使っていく のかということが、これは日本企業だけではなく、世界中の企業が競っている状況である。
マーケティング部門にとってビッグデータは、デジタル化が進んだ世界の新たなマーケティング環境で取り組むべき当然の課題です。……

・カスタマー・エンゲージンメント
ビッグデータは顧客が誰かという基本情報だけでなく、顧客が今どこにいるか、何を欲しいと考えているか、どのようなタイミングとチャネルでコンタクトを希望しているかなどについて情報・洞察をもたらします。
・顧客維持とロイヤルティ
ビッグデータは顧客ロイヤルティに影響する要因や、顧客の継続的な取引につながる要因を発見するために役立ちます。
・マーケティング活動の最適化/効率化
ビッグデータを活用すると、複数のチャネルにまたがるマーケティング予算の配分を最適化したり、テスト/測定/分析を繰り返しながら継続的にマーケティング・プログラムを最適化できます。

パーソナルデータの利活用の問題点

 (32329)

現在、様々な事業者が、顧客データなどの個人情報を所有していますが、情報処理技術の発達により、その蓄積、流通、加工、編集が簡単に行え、またネットワークの普及により、それが瞬時に世界中をも駆け巡るような状況が出現しています。適正に利用すれば、営業上非常に有用なデータとなりえますが、反面、事業者の管理が不適切であると、顧客データが外部に漏洩することにつながり、現実にそういった事故も少なからず起こっています。
2013年に、JR東日本がSuicaの乗降履歴データを外部の企業に提供していたことが報じられ、事前に利用者に十分な説明がなかったことに批判が寄せられた……パーソナルデータの利活用においては、顧客が安心できる利用方法であるかどうかという点が重要だ。個人情報保護法で定められた個人情報にあたらないものについても、利用者が嫌だと感じるようなことはすべきではないだろう。……
 (32331)

現金よりカードが多用される米国では、日本以上に個人情報の盗用、IDセフト(泥棒)が広がる。民間調査機関の調べでは、2013年のID盗難被害者は全米で約1310万人と前年比50万人増。被害総額は180億ドルにもなる。

 なかでもSSN盗用によるなりすましは、ネット社会化に伴って増加している。SSNと住所、氏名が分かれば、カード作製、住宅ローン申し込み、就職、運転免許証の取得にまで悪用できる。……

実際の契約の際には、番号の持ち主の実年齢が確認されないことも多い。ID盗難に詳しい専門家の推定によると、毎年50万人以上の未成年が被害に遭い、半数は6歳以下とみられる。カーネギーメロン大学の調査では、生後5カ月の被害者もいた。

 ネットを通じてIDを盗み、不法移民に転売する組織的犯罪も目立つ。ユタ州政府が公的扶助を受ける未成年のSSNを調査したところ、れんが職人やウエートレスをしている「子ども」たちが見つかった。数千人の成人が未成年の番号を悪用して働く資格を得ていたといい、9歳児の番号を9人の大人が不正使用していた例もあった。……

このように米国では未成年者がなりすまされても信用情報の確認は18歳からなので、発覚に時間がかかり悪用されやすくなっています。

プライバシーと健全な利用の両立には

 (32330)

パーソナルデータのうち個人情報保護法における個人情報、すなわち「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」については、当然、同法に基づく厳重な取扱いが求められるため、個人識別ができない匿名化」されたパーソナルデータの利活用が、新産業・新サービスの創出に貢献できるものとして注目されている。
もっとも、匿名化されたパーソナルデータであってもビッグデータとしての分析の仕方によっては、特定個人を識別し、更に該当者の思想、信条、性癖のようなプライバシーの中核に当たる部分まで暴露することを可能にするという懸念がある ……
・ 適切なプライバシー保護を実現するため、保護すべきパーソナルデータの範囲、個人情報の開示及び訂正(追加又は削除を含む。)等における本人関与の在り方、取り扱う個人情報の規模が小さい事業者の取扱い、プライバシー影響評価の導入、データ取得時等における手続きの標準化等について検討する。
・ 専門的知見の集中化、機動的な法執行の確保、及び諸外国の制度との整合を取りつつパーソナルデータの保護と利活用の促進を図るため、独立した執行機関(第三者機関)に行政処分等の権限を付与するとともに、プライバシーに配慮したデータ利活用の促進を図る観点から、罰則の在り方、法解釈・運用の事前相談の在り方等を検討する。
さらに、これらの対応と併せて、個人情報及びプライバシーの保護を有効に機能させるため、事業者が自主的に行っているパーソナルデータの保護の取組を評価し、十分な規律に服することが担保される、マルチステークホルダープロセス※の考え方を活かした民間主導の枠組みの構築を検討することにより、パーソナルデータ利活用のルールが遵守される仕組みを整備する。
プライバシーの侵害の危険性を熟知した上で、個人情報を侵害しないように配慮したデータ活用が重要になってきます。

政府の方針

① パーソナルデータの利活用は、目的外利用や第三者提供において大きな効果をもたらすことから、それらを本人同意に代わる一定の条件のもと、行うことを可能とする枠組みを導入する。
② グレーゾーンの内容や、個人の権利利益の侵害の可能性・度合いは、情報通信技術の進展状況や個人の主観など複数の要素により時代とともに変動するものであることから、これに機動的に対応可能とするため、法律では大枠のみ定め、具体的な内容は政省令、規則及びガイドライン並びに民間の自主規制により対応するものとする。
③ バランスのよい保護及び利活用の推進に向けて、法令や民間の自主規制を実効性あるものとして執行するために、独立した第三者機関の体制を整備する。

民間企業に求められる意識と姿勢

 (32332)

・事業者が利活用に躊躇しないよう、「個人情報」の範囲を明確化し、本人の権利利益の侵害が生じることのないようその取扱いを規定。
・技術の進展に迅速に対応することができる制度の枠組みとする。
・パーソナルデータの利活用の促進と個人情報及びプライバシーの保護を両立させるため、マルチステークホルダープロセスの考えを活かし、消費者等も参画する民間主導による自主規制ルールの枠組みを創設。
・民間団体が、消費者等も参画する民間主導による自主規制ルール(業界の特性に応じた具体的な運用ルール(加工方法)や、法定されていない事項に関する業界独自のルール)(※)を策定し、その認定等実効性の確保に第三者機関が関与する枠組みを構築。

マルチステークホルダープロセスの実施

1.信頼関係の醸成
 利害の食い違う関係でも、先ずは、対等な立場での対話を持ち、お互いを理解していくことから信頼関係を深めていくことができます。

2.社会的な正当性
 多様なステークホルダーが参加することで、多様な意見を反映させることができ、社会的な正当性が得られ、市民からの理解も得やすくなります。

3.全体最適の追求
 単独の取組、もしくは2者間での対話では解決が難しい課題において、課題に関係する全てのステークホルダーで行動することで解決の可能が見出されることがあります。

 また、社会には、ある主体の最適解が全体における最適解にならないことが多くあります。参加者全員が、全体のヴィジョンや課題を共有していくことで、各主体の役割分担が明確になり、全体最適を追い求めていくことが可能になります。

つまり消費者を巻き込んで、より優良なデータ活用による未来構築の有用性について理解を得る必要性があり、それにはまず「個人のプライバシーの侵害をしない」という個人情報利用による不安感の解消が必要になるでしょう。

パーソナルデータの取扱い方

1) 提供するサービスの概要
2) 取得するパーソナルデータと取得の方法
3) パーソナルデータの利用目的
4) パーソナルデータやパーソナルデータを加工したデータの第三者へ
の提供の有無及び提供先
5) 消費者によるパーソナルデータの提供の停止・訂正の可否及びその
方法
6) 問合せ先
7) 保存期間、廃棄
データの利用目的のどこに提供され、何に使われるのか、個人を特定しない方法であるか、消費者に提供の選択肢を与えること、適切なデータ管理がされ廃棄されるなどの点に理解と信頼を得る必要があります。

あなたにオススメのコンテンツ



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする