企業の憂鬱 マイナンバー制度の負担を少しでも軽減したい

マイナンバー制度の開始に向け、各企業はその扱い方や保管・管理方法そして安全対策などを整えてきたことでしょう。どの企業も少しでも負担は少なくしたいものです。

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企業の負担

企業は今後、様々な手続き上、従業員のマイナンバーを扱っていくことになります。
当然、その為にはマイナンバーを取得しておかなければなりません。
マイナンバー制度の開始に先立ち、各企業ではマイナンバー収集の作業を行ったはずです。
これからは従業員の雇用がある都度、収集が必要であり、逆に適切に廃棄をすることも必要となります。
これらは今までにはなかった作業が新たに加わるので、単純に考えても業務が増えます。
マイナンバー制度を負担の増加と考えている企業は多いでしょう。
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企業は、従業員の健康保険や厚生年金の加入手続き、従業員の給料から源泉徴収して税金を納めています。マイナンバーは社会保障・税・災害対策の手続きのために、国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金、医療保険者に提供するものですから、個人のナンバーを運用するのは、主に雇い主である企業であるといって良いでしょう。
これを考えると、従業員のマイナンバーを管理する企業に対しては、より一層厳格な安全管理措置が求められることになります。
制度が導入されたあとは、源泉徴収など税に関する書類や、健康保険など社会保障に関する書類へのマイナンバーの記載が義務づけられます。企業は、雇用している従業員からマイナンバーを集めなくてはいけません。
秘匿性が非常に高い個人情報なので、厳罰規定が設けられています。故意に不正行為を行った場合は、監督官庁からの是正勧告は行われず、直接に刑事罰が課されます。また、従業員が不正行為を行った場合、当人だけでなく雇い主の企業も罰金刑が課せられるという両罰規定も存在します。
事業主が従業員やその扶養家族のナンバーを管理するためには事業所内の書類の管理を徹底し、パソコンやサーバーへのウイルス感染や不正侵入の対策、アクセス記録保存などセキュリティー強化、マイナンバーに対応したソフトへの切り替えなどが必要になります。
 また、社会保険事務などの受託者(社会保険労務士など)は、顧客先の個人のマイナンバーが流失した場合の損害賠償の請求に対応する保険への加入も必要になってきます。
 マイナンバーに対応するための費用は対応するパソコンソフトの導入などで従業員数「5人以下」「6~20人」では40万円台、「21~50人」66万円、「51~100人」99万円と推計されています(帝国データバンク調査)。厳しい経営を強いられる小規模事業者にとっては大変な負担増になります。
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対応における自社コスト負担の額は平均約109万円。従業員数に応じて上昇し、1000人超の企業は平均約581万円となった。

 「大小分け隔てなく導入されるのであれば、対策にかかる費用については税金でまかなうか、あるいは最悪でも補助金等の対応がほしい。投資をすると業績に響くが、投資をしないと信用に響くというのでは選択のしようがない」(建材・家具製造、兵庫県)、「コストがかかり、秘密情報保全などのリスクが高まる。民間企業にとっては大変な業務である」(情報サービス、東京都)、「制度の適用に関しては、社内インフラ整備が必要なため、コスト面も含めて慎重に対応していきたい」(機械・器具卸売、東京都)といった意見がみられた。

業務の負担が増えるということは、それに割く人員も必要ですしコストもかかります。
国から援助があるわけでもなく、なかなか頭の痛い問題です。

マイナンバー管理の危険性

各企業による従業員のマイナンバー管理には、絶対に外部に漏れてはいけないという前提があります。
システムの見直しやセキュリティ強化は必須です。
しかし、どんな手を施しても、漏洩の危険性は100%防げるものではありません。
悪意ある攻撃を受ける可能性はどの企業にもあるのです。
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国民ひとりひとりに番号が割り当てられるマイナンバー制度、国民の生活にも少なからぬ影響を及ぼしますが、この制度に対する準備や受け入れる環境づくりが必要という点では企業のほうが直接的な影響が大きいといえるかもしれません。
従業員の個人情報をマイナンバーで管理する必要が出てくるため、慎重な取り扱いが欠かせないのです。何しろ番号からその人の所得や社会保障制度の活用状況までさまざまなデータを知ることができてしまうからです。
個人の責任で管理を求める
 こうした重要な12桁の番号について、国では「番号は一生変更されませんので、マイナンバーはぜひ大切にしてください。法律や条例で決められている社会保障、税、災害対策の手続きで行政機関や勤務先などに提示する以外は、むやみにマイナンバーを他人に教えないようにしてください。他の手続きのパスワードなどにマイナンバーを使うことも避けてください」などと、個人の責任で守ることを求めている。
 インターネットサービスの増加により、IDやパスワードの管理だけでも四苦八苦するなかで、また厳重に管理しなければならない数字列が1つ増えてしまうことは間違いない。
従業員のマイナンバー死守義務
 一方、個人だけでなく、企業も負担が増えることになる。社員と扶養家族の源泉徴収票や社会保険の手続きを代行する際にマイナンバーを記載しなければならないからだ。
 取り扱う企業に対しては、規模の大小を問わず厳格な本人確認を行うことや、利用目的を明示するよう求める。
 「その漏えい、滅失、毀損を防止するなど、マイナンバーの適切な管理のために必要な措置を講じなければなりません」とし、漏洩した場合には最大で「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」とする罰則も新たに設けられた。
 個人にも企業にも負担を強いることになるマイナンバー制度。「添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます」と国がうたうメリットは、そもそも行政の縦割りという無駄によって、国民に押し付け続けてきた負担であることを忘れてはならない。
マイナンバーが漏洩すれば悪用される恐れがあるだけでなく、企業としての責任・信用問題や大きなイメージダウンにもあります。
そして、故意でなかったとしても罰則が科せられる可能性も大いにあるのです。
マイナンバーの管理にはしっかりとした危機管理が大切です。

どんな方法が安全か?

企業は今後マイナンバーを取得しておくことが必須となりますので、情報漏洩に対してはこれまでになくきをつけなければなりません。
一体どんな方法を取れば安全に管理していけるのでしょうか。
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従業員を雇っている間は、マイナンバーを給与の源泉徴収事務、健康保険、厚生年金保険届出事務などのために、翌年度以降も継続的に利用することになるため、ほとんどの企業では特定個人情報を継続的に保管することになります。
問題となるのは、マイナンバーが記載された書類や電子媒体の保管方法です。
マイナンバーが記載された書類などは、鍵のかかる保管庫、キャビネット、金庫などに収納し、施錠管理を行うことが求められています。
また、可能であれば、企業は、ICカードや生体認証装置を用いて入退出者管理、持ち出し管理などを行うことができる、保管室を用意したほうが良いと言われています。
同様に、マイナンバーを扱うコンピュータが設置されている部屋も入退出者管理システムを備えることが望ましいとされています。
いずれにしろ特定個人情報は、個人情報よりもさらに厳格な管理、保管を行わなくてはいけなくなります。
マイナンバー制度への対応で民間企業に求められる安全管理措置は、具体的に「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」の中で規定されている。特に物理的および技術的な措置として注目したいのが、「電子媒体等を持ち出す場合の漏洩等の防止」(物理的安全管理措置)と「アクセス制御」「外部からの不正アクセス等の防止」「情報漏洩等の防止」(技術的安全管理措置)だ。

 まず情報漏えいのリスクに関わる「電子媒体等を持ち出す場合」や「情報漏洩等の防止」では具体的にデータや通信経路における暗号化、パスワードで保護可能なツールの使用が推奨されている。また、「アクセス制御」としては個人番号と紐付けてアクセスできる情報の範囲やマイナンバーを扱う情報システム自体へのアクセスを限定したり、システムの利用を「事務取扱担当者」に制限したりするなどの方法が挙げられている。

実務で他人のマイナンバーを保管する場合には、厳重な管理はもちろんのこと一定の知識が必要です。必要のなくなったマイナンバーをいつまでも保管せず、また、事務処理に必要なマイナンバーを廃棄したり、流出させることのないように、正しい知識をもって管理することを心がけましょう。
マイナンバーを扱う担当者はしっかりと人選し、扱う人は限られた人数に決めておくこともよいでしょう。
当然、誰でも閲覧出来たり持ち運べるような場所は絶対に避けなければなりません。
情報の漏えいは外部だけでなく、内部からの可能性もないとは限りません。

負担を軽減するには?

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特にIT化が進んでいない企業にとっては、マイナンバー対応に関わる人的工数や設備投資が増加することが予想されます。IT化の進行度合いによって、対応方法はかなり大きく変わってきます。継続的にマイナンバーを業務で取り扱っていくためには、ITの活用は必須といえます。
マイナンバーへの対応をきっかけに、ITへの投資を検討するのも良い機会ではないかと思います。
IT化をどこから進めていいかわからないという方は、思い切ってERPシステム(財務・管理会計、人事、生産、調達、在庫、販売などを統合した業務システム)を導入してしまうのもおすすめです。多くのERPシステム・パッケージはマイナンバーに対応していますので、手っ取り早く対策が可能になります。
家電量販店やそのWebショップのマイナンバーコーナーのなかで、紙での保管を前提とした金庫や鍵付きの書棚や、マイナンバー利用時の区域管理のためのパーティション、また紙を廃棄するためのシュレッダーなどのオフィス機器が売れているようです。中小企業内ではもともと取引先の情報や従業員の給与情報など社外秘や部門秘の情報を取り扱っているわけですから、マイナンバーも含めてセキュリティ対策を見直す一環としてこれらが導入されているのであれば、それは良い傾向とみることができます。
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自社で制度の導入を対応しようとすると大きな負担がかかります。そこでアウトソースという選択肢があります。導入対応を貴社に代わって給与計算アウトソーシング会社が対応します。多くの企業の人事給与情報を扱っている会社なのでセキュリティ面の信頼度が高く、マイナンバーの運用だけではなく給与の計算支払いまでワンストップで対応することも可能です。今回の制度導入をきっかけにアウトソースを検討してみてはいかがでしょうか?
マイナンバー対応ソリューションを検討する段階では、「自社でシステムの独自開発(EXCELなども含む)か、パッケージソフトの使用か、クラウドサービスなど外部の専門業者に委託するか、3つの大きな選択に迫られるでしょう」(スマイルワークス 代表取締役社長 坂本恒之氏)。企業規模によるが、100名以下の中小企業の場合には、開発までの時間的な制約や、大きなコスト負担を考えれば、独自開発は選択肢から外れざるをえない。
マイナンバーへの対応は各企業様々な方法があるようです。
紙ベースでアナログに行うか、ITを駆使して管理するかも、どちらが正解でどちらが確実なのかは意見も分かれるでしょう。
どちらの場合にも、最近では多種多様なマイナンバー管理サービスや商品が次々に生まれてきています。
また自社の金庫・パソコン・クラウドサービスに保管するのに加えて、外部へ委託することで業務の負担を軽減する企業も多いようです。
もちろん、マイナンバー制度に対してどれくらいのコストを掛けることが出来るのかも各企業により違うので、検討が必要でしょう。

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