マイナンバーの一般常識≪1≫マイナンバー制度導入の歴史

マイナンバー制度の導入については、実は35年も前から検討されていました。ここでは「少額貯蓄非課税制度(マル優)」に始まるマイナンバー制度導入までの歴史について解説します。

マイナンバー制度導入までの歴史

いよいよ運用開始となったマイナンバー制度ですが、実は35年前から導入が検討されていました。

「少額貯蓄非課税制度(マル優)」を原点として、マイナンバー制度の直接の基礎となる「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」、そして年金問題を背景として、マイナンバー制度が開始となったのです。

1963年 少額貯蓄非課税制度(マル優)開始

1963年、貯蓄の奨励と社会保障支援を目的に、少額貯蓄の利子を非課税扱いとして優遇する「少額貯蓄非課税制度(マル優)」が始まりました。
マル優とは

もともと、貯蓄の奨励と社会保障の支援を目的として1963年に創設された貯蓄優遇税制。

別名「少額貯蓄非課税制度」で、現在は「障害者等のマル優(非課税貯蓄)」として存在する。

預貯金や国債などの利子が非課税になる制度で、この制度を利用できる人は、国内に住所のある個人で、障害者手帳の交付を受けている人や、遺族年金を受けている妻などの障害者等に該当する人に限られている。

預貯金、合同運用信託、特定公募公社債等運用投資信託及び一定の有価証券が対象となり、これらの貯蓄の元本の合計350万円までの利子が非課税となる。

マル優とは、少額貯蓄非課税制度のこと。

1963年に創設された貯蓄優遇税制で、貯蓄の奨励と保護を目的として1人につき元本350万円以下の特定の貯蓄(国債・地方債のほか預貯金などの金融商品)の利息が非課税扱いになる(通常は20%)。

残念なことに、大口資産者の脱税などに利用されるなど本来の目的に反する利用がみられることもあった。

1980年 グリーン・カード制度(少額貯蓄等利用者カード)の導入が検討される(1985年に廃止)

マル優は、脱税目的の架空口座開設などの問題がたはつしたため、政府は「グリーン・カード制度(少額貯蓄等利用者カード)」の導入を検討し、これが日本の番号制度のさきがけとなるはずでした。

が、法律は成立したものの、グリーン・カードは国民の大きな反対運動により実施は延期され、ついに廃止されました。

グリーンカードとは国民すべてに番号を付した「少額貯蓄等利用者カード」のことです。
当時、「マル優」と称される300万円以下の非課税貯蓄制度があり、この制度を悪用して利子・配当課税を逃れるための「仮名口座」が横行しました。
この課税逃れを防ぐため、当時の大蔵省、国税庁は「少額貯蓄等利用者カード(グリーンカード)」制度の導入をもくろんだのです。

 グリーンカード制度を盛り込んだ「所得税法改正案」は1980年3月にいったん成立しました。
しかし法が施行される段になって制度の怖さを知り実施反対論が噴出、1985年には議員立法では廃案になってしまいました。

行田市/社会保障・税番号制度 (39872)

1996年 住民台帳番号制度の導入が提案される

「住民記録システムのネットワークの構築等に関する研究会」により、住民台帳番号制度の導入が提案されました。

1999年  改正住民基本台帳法が成立

2002年 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)が稼働

1999年、確実な本人確認やセーフティネットの基盤として活用するための改正住民基本台帳法が成立し、2002年より住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)が稼働を開始しました。

国民の1人ひとりに、氏名、住所、性別、生年月日、出身地が容易に判別できないよう11ケタのランダムな数字で構成される住民票コードが付けられました。

この住基ネットがマイナンバーの基礎となっています。

住民基本台帳カード

住民基本台帳カード

個人番号カード(マイナンバーカード)

個人番号カード(マイナンバーカード)

Q. 住民基本台帳カードと個人番号カードの違いは?

A.

大まかに言えば、個人番号カードは、顔写真入りの住民基本台帳カード「Bタイプ」に対して、個人番号の表示・記録を加えたものになる予定である。

住民基本台帳カードの場合、住所、生年月日、性別、顔写真を券面に表示しない「Aタイプ」が選べたが、個人番号カードには、そのようなタイプは存在しない。

住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるものです。

住民基本台帳の閲覧や住民票の写しの交付などにより、住民の方々の居住関係を公証するとともに、以下に掲げる事務処理のために利用されています。

•選挙人名簿への登録
•国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、国民年金の被保険者の資格の確認
•児童手当の受給資格の確認
•学齢簿の作成
•生活保護及び予防接種に関する事務
•印鑑登録に関する事務                  など

2007年 約5000万件の年金情報が消失

住民票コードは年度でも変更できたり、民間利用の禁止などの制約が強かったため、実用的ではありませんでした。

しかし2007年に、約5000万件の年金の納付記録が消失した「消えた年金」事件をきっかけに、個人番号制度の必要性が再度検討されるようになりました。

さらに2008年、リーマン・ショックが発生し、家計への支援対策として給付金の支給が決定しましたが、国民の所得が性格に把握できていないために所得制度がかけられないなどの問題が発生しました。

このような経緯から「公平・公正な社会の実現」のために、マイナンバー制度の導入が検討されることになったのです。

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消えた年金

2007年5月に国民年金など公的年金保険料の納付記録漏れ問題が発覚し、5000万件という数字とともに国民の大きな怒りを買った。

そもそもは、1997年に公的年金加入者に「基礎年金番号」を割り当てて加入記録を一元管理しようと試みた際に、結婚して名前が変わったケースや単純な入力ミスなどで、記録から消えた年金が生まれたのである。
政府も年金事務の当事者である社会保険庁の怠慢を批判したが、監督責任もあって7月の参院選における与党大敗の最大の原因となった。

さらには、現行の年金制度への不信をさらに増大させた。
国会での追及の急先鋒だった民主党の長妻衆議院議員は「ミスター年金」とも呼ばれたが、年末に発表された「流行語大賞2007」に「消えた年金」が選ばれた際、受賞者が舛添厚生労働相だったことで、「年金を消した」当事者が受賞するのはおかしいとの批判が続出した。

リーマンショックとは

リーマンショックとは、米国大手銀行の破綻とそれを原因とする世界同時不況のこと。

アメリカ第4位の投資銀行だったリーマンブラザーズが、サブプライムローンと呼ばれる高リスクの住宅ローンで大規模な損失を計上。

その処理に失敗し、2008年9月15日、連邦裁判所に連邦倒産法第11章を申請、事実上の破産となった。

別名、リーマンクライシスとも呼ばれる世界金融危機の一つ。